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49  通じる想い

今のは空耳?

すっごい美声に、名前を呼ばれた気がする。


「…美久子?」


やっぱり呼ばれた!!

うそ!うれしい…。

乾くん、私の名前覚えてくれてたんだ…。

めちゃくちゃうれしい。

この低音イケボで呼ばれたら、何か全身がブワッとする!


って?

なぜ、呼び捨て?


「美久子、本当に大丈夫なのか?」


乾くんの腕の力が緩み、少し身体を離される。

厚かましくも、ちょっと淋しく思ってしまった。

ても、まだ私の背中には乾くんの両手のひらが重なってて、相変わらず腕の中に囲われたままだ。

緊張してめちゃくちゃ恥ずかしいけど、なんか…すごく安心する。


美久子は俯いたまま答えた。


「…だいじょうぶです。ごめんなさい…もうそろそろ離して…」


「いやだ。」


えっ?いや?NO??


「美久子、こっちを見てくれ。」


美久子は涙で散々な状態の顔を上げて、流青を見た。

大好きな流青の顔を見て、言葉が出ない。

段々と顔が赤くなってきた気がする。


流青は真剣な面持ちで、じっと美久子の目を見て話しだした。



「美久子。俺はお前が好きだ。」


 

!!!?



「…ここ最近ずっと、お前の事が気になって仕方が無い。美久子のことばかり見てしまう。

美久子が泣いていると俺も辛い。こんな気持ちは初めてだ。」

 

「!?」


「だから理解した。俺は美久子が好きだ。」


「!!」


「美久子は…俺のことは…嫌いか?」


形の良い眉毛の両端と黒い宝石の目の目尻を少し下げ、美しい顔で哀願するように聞かれる。


嫌いな訳が無い!!

前世も現世もずっとずーっと好きだ!大好きだ!!


美久子は目を見開いて顔をぶんぶん横に振る。


「そうか!」


瞬間、流青は破顔し喜び、美久子を強く抱き締めた。


「ぐふっ!」


色気も何も無い声しか出してない。

くっ、苦しい。

あれ?これやばいかも。堕ちる……


「流青!力を抜け!宇佐美さんが気絶するぞ。」


「!!すまない!大丈夫かっ!?」


健二に肩を叩かれ、慌てて力を抜いた流青が美久子を横抱きにする。

心配そうに顔をのぞき込んで泣きそうな顔をしている。


た、助かった…。ちょっとやばかった…。

はあーーーっ。くっ、苦しかった…

まだなんだか頭がふわふわする…


??

あれ?目の前に若きイケメン武将の常盤くんのお顔が…ある。

すごい…ほんとに武将系だ…強そう…すごい…格好いい…


じっと見つめてしまった。

美久子はまた顔が段々と赤くなってきた。

恥ずかしくなって目を瞑って顔を背ける。


背けたものの、

今の自分の状況に、はたと気が付く。



!!!!!?



美久子は流青にお姫さま抱っこをされていた。


「うぎゃー!!!」


ブサイクな叫び声を上げながら再びパニックになった美久子は必死にジタバタするが、流青のお姫さま抱っこはがっちりとロックされていてビクともしない。


ひとしきり暴れて、美久子はもう諦めた。

視線を感じて恐る恐るそちらを見る。

こんなに近くからする乾くんチラ見は初めてだ。


そこには超絶不機嫌な顔の流青が、美久子をガン見していた。


美久子は恐怖に震え上がった。ブルブルじゃなく、ガタガタだ。


「ぶふっ。流青、そんな恐ろしい顔で焼きもちを焼くな。ほら、宇佐美さんが怖がって震えてるぞ。」


若き武将が笑いながら流青の肩を叩く。

ひゃー!武将の笑顔!めっちゃレア!尊い…

乾くんとの両イケメンのお顔をこんな間近で見れてきゃー…


「ぐふっ!」


またぎゅっとされて、武将のご尊顔を拝めない方向に体を向けられる。否ー!もっと見たかったー!


「…美久子は、健二が好きなのか?」

「はっ?」

「…駄目だ。諦めろ。美久子は俺のものだ。」



胸がぎゅっとした。

喉の辺りがぐっと熱くなる。


乾くんが私を求めてくれている。

夢みたいだ。

なんて…嬉しいんだろう。

何故、お礼を言おうと思って待ち伏せしていたのに、嫌われていると思っていた乾くんにいきなり熱烈に告白されてこんなことになってるのかよくわからないけど、私には抗う術はない。

私は前世も現世もこの人だけのものなのだから。


今度こそ間違えない。

心から大切なひとの言葉を信じよう。


美久子はこれから起こるであろう困難も、前世の地獄に比べれば些末もないことと自身に思い込ませ、涙を浮かべながら自分の想いをはっきりと言葉にした。



「…はい。乾くん。わたしも、すきです。ありがとう。」



目をカッと見開いた流青は、隣にいた健二も驚愕するほどの今まで誰も見たことが無いような満面の笑みで美久子を見つめた。


大切な宝物を抱き込むようにして美久子を抱え直し、そのまま保健室に向かって歩いて行った。





えっ!?保健室!?私、元気。何故ー??








※やっと、両想いになりました!

 お待たせしてすみません。ここまで長かった…。

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