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47  ありったけの勇気

来たーっ!

きのぴいの言う通り、今は乾くん一人だ!

やばいっ。どうしよう。

緊張し過ぎで吐きそうだ。

駄目だ。ここで吐いたらほんとの地獄。

根性で我慢だ!



本日、美久子は一世一代の勝負に出ていた。

学院のトップオブ美男子・乾 流青(前世:亮介)に『お礼を言う』という無謀な勝負に。


美久子は最近すこぶる調子が良い。

公立中学校の時の文化祭で牛の後ろ脚しか演じたことが無い美久子が、何かの手違いでブロードウェイの舞台(聖陵学院高校)に立ってしまい、ハリウッド女優(きのぴいと七海)的な友人たちに囲んで頂いたお陰で最高に楽しいスクールライフを送らせてもらっている。

美久子にとってこんな平成のバブル期みたいな状況は、どんなパワースポットよりもエネルギー出まくり、マイナスイオンも浴び放題だ。

そりゃ、お陰様で絶好調になるはずだ。


ちょっと前まで流青に睨まれ嫌われ凹んでメソメソしていた美久子だが、前世の辛く苦しい静子の記憶を思い出した。


凹んでなんかいたら駄目だ!

ハリウッド女優たちのパワースポットパワーの勢いを借りて、家でめっちゃ練習してきた『先日は御多忙中にも係わらず、私めがぶっ倒れて寝ていた保健室をお訪ねくださいまして誠に有難う御座いました。お礼を申し上げるのが遅くなりまして大変申し訳御座いませんでした。』を言うぞ!



いざっ!出陣!!


……。

……。


…やっ、やっぱり無理ー!!!


帰ろう。

明日、出直そう。



廊下の角を曲がってそそくさと逃げ出そうと回れ右をした美久子に、後ろから無情の美声が掛かる。


「宇佐美!」


ビクッ!


「えっ!あっ!いっ、乾くん…。こ、こんにちはー…」


しまったー。逃げ遅れたー。


「宇佐美。どうした?宇佐美も職員室に行くのか?」


「ええっと…あー、ちょっと…」


「?」


ええい!頑張れ!牛の後ろ脚!!


「あのっ!」


「?」


「い、乾くん。こっこの前は保健室を…訪ねてくれて、ありが…」




この時、美久子は顔を上げてしっかりと流青の目を見た。



真っ黒でキラキラ光る宝石みたいな目 



亮介だ。

やっぱり、亮介なんだ。




流青のその目は、確かに亮介の目だった。

美久子の目からボロボロと涙が流れる。

体が震える。

喉と胸…身体全体が熱くて堪らなくなる。


「…っ!宇佐美!どうした!?何故、泣いてる!?」


驚いた流青が美久子に近付く。


「…りょう…すけ…」


美久子は号泣しながら小さな声で呟いた。


「えっ?何?」


美久子の呟きは小さすぎて流青にははっきりとは聞こえなかった。



その背の高い大きな身体で、流青は泣いている美久子をそっと抱き締めた。


「!?」


美久子は驚きで全身が固まった。





※流青、捕獲完了。

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