45 覚醒 ◇
普通に見つめろ。
睨むなら見るな。
見るなら今までの10分の1にしろ。
健二に言われた。
普通ってなんだ。
睨んでなんかいない。
つい、見てしまってるだけだ。
10分の1ってなんだ。
なんで減らさなきゃいけない。
もっと見たいんだ。
話し掛けてもいないし、ましてや触れてもいない。
もっと近くで見たい
あの焦げ茶色の目を見たい
こっちを見て欲しい
またあの穏やかな空気の中で話したい
あの自然な可愛い笑顔を見せて欲しい
他の野郎にはその笑顔を見せないで欲しい
あの子は…俺のだ。
「流青。お前…やっと自分の気持ちに気付いたか。」
「流ちゃん、おっそいよー」
「まあ、初めてお前が好きになった子が、まともな普通の子で本当に良かった。」
「だねー!好きになっちゃうのわかる。うさみみちゃんは見た目はかなり普通っぽいけど、実は笑顔がめっちゃ可愛」
バシッ!!
「痛って!!!流ちゃん叩くなよ!!最近手が早えーよ!!」
「ふふっ…」
「「えっ!?」」
流青が急に笑い出した。
「こっ、怖っ。流ちゃん、どうしたの!?怖いよ!?なんかオーラが黒い…?」
「…そうか。俺は宇佐美が…好き…なんだな。これが好きって気持ちか…。そうか…。なるほど…」
「え?えーーーっ!?流ちゃん今まで自覚してなかったの…?マジで初恋バカだったん」
ガンッ!!!
「うわっ!あっぶね!椅子蹴るなよっ!」
「健二、湊人。俺は宇佐美を捕獲する。」
「好きな子を捕獲するって。スゲー言い方…。こっわ!うさみみちゃんビビって、ぴょんぴょん逃げるんじゃないの?」
「逃げても捕まえるに決まってんだろ。俺は一度本気で気に入ったものは絶対に離さない。」
「「…。」」
「…だねー。怖えー…うさみみちゃん、もう逃げられないカナー…」
「…。流青。時期を待てとは言ったが、こうなったらもう無理だな。
…あまり無理強いはするなよ。」
目の前の眉目秀麗の美男子が、健二と湊人には獲物を見つけた野獣に見えた。
そして、美久子の姿を野獣への生け贄に重ねた。
湊人はこの時、
親友の初恋を護るため、自分の気持ちに分厚い蓋をした。
※湊人、あっという間に試合終了でした。とほほ。
流青は湊人がキラキラ3人女子の件でガッツリ動いてくれたので、うさみみちゃん呼びを渋々受け容れました。渋々です。