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42  湊人の謀(はかりごと)

「湊人くん!おまたせ!!」

「私たちにお話しって、なあに?」

「わざわざこんなステキな場所に呼んでもらえるなんて…なんだか緊張しちゃうわ!」


美久子に暴言を吐いた女子三人が、湊人に誘われていそいそとやって来た。


今は土曜日の18時。そろそろディナーの時間だ。

湊人が指定した場所は、西新宿にあるラグジュアリーホテルの最上階にあるバーの個室。

このホテルは湊人の実家のYAGIホールディングスの傘下で、彼女達はもちろんその事を知っていた。

精一杯のお洒落をした三人は、湊人に秋波を送る。

小さい頃からあれだけ流青に固執していたはずの大島も、だ。

女達の媚びた目線に、湊人は虫唾が走った。



「…今日は土曜日なのにわざわざ呼び出してごめんねー。

あんまり他人には聞かせない方が、君たちには良いかなーと思って、ウチのホテルまで来てもらったんだ。

あ、そのカクテル、美味しいよ!ノンアルだから安心して飲んでね。」


三人は湊人の話に少し不安を感じたが、とりあえず笑顔で勧められるまま乾杯をしてノンアルコールのカクテルを飲んだ。



「…じゃ、早速だけど。これ、見てくれる?」


何処に居たのか、黒のスーツを着た屈強な男性が近付き、ガラステーブルの上に大きなタブレットを置いて何か操作した。



映像が流れると、三人とも驚愕した。


「「「!?」」」


映像はついこの間、学院内で自分達が宇佐美 美久子に詰め寄った時のものだった。


「こっ、これはっ!」

「そう。これは紛れもなく、君たちがいじめをしていた映像です。」

「いっ、いじめじゃないわ!」

「私たち、いじめてなんかないわっ!」

「そっ、そうよっ!ただ…は、話してただけよ!」


「話?」


今まで聴いたことがない湊人の低い声と鋭い目付きに、三人共固まり、震えあがる。



「もう一度初めから再生して、音量も上げてくれる?」

「はい。」


黒スーツの男性が再生し直し音量を上げると、かなりクリアな音質で聞こえてきた。

後ろから美久子を呼び止め、一方的に三人が罵声を浴びせて美久子は黙っている。

途中からは悲しそうな表情で俯いてしまった。

木下恵が割って入ってきた後も暴言を吐き、三人は去って行った。


全て完璧に撮られている。

暴言もはっきりと聞こえた。

これは誤魔化せない。


「え…っと…」

「ご、ごめんなさい!そんなつもりは無かったの!」

「私もっ!ほっ、本当にごめんなさいっ。私っ、大島さんに誘われて」

「何よっ!私のせいだって言うの!?あなたも宇佐美さんがムカつくって言ってたじゃない!」

「はーい。はーい。もう、そんなのどーでもいいんでー、ちょっと黙ってくれる?」


三人は、青くなった顔で湊人を見る。


「明らかに、いじめは立派な犯罪でーす。

公然と事実を示して悪口を言ったりする行為は、場合によっては名誉棄損罪 刑法230条に該当することも多々ありまーす。

またー、事実を示さ無かったとしても、公然と悪口をほざく行為について侮辱罪 刑法231条に当たる可能性がありまーす。」


犯罪と刑法という言葉に、三人は体が竦む。


「わかった?簡単なんだよ?いじめで相手訴えるのって。

そうなったら今のご時世、知らない内にソッコーSNSで拡散されちゃうかもしれないねー。

Cクラスの大島さんと矢澤さんと赤川さんはー、人をいじめて罵声を浴びせて訴えられましたー。マジでウケるーって顔写真付きでね。

もう、良いところにお嫁に行けなくなっちゃうかもねー。」


恐怖で我慢出来ずに、三人は泣き出してしまった。


「俺、ジワジワと追い詰めるのがめっちゃ好きなんだよねー。

…で。理不尽な事するヤツが、大ーーーーーーーっ嫌い。


あ!後ね、昨日、学院のカフェでうさみみちゃんのこと、また話してたでしょ。

今度は何だっけ?分からないように何か隠す…だっけ?

それも今、再生しよっか?証拠、あるよ。何なら学院と君達の親にもぜーんぶ渡そっか?」


三人とも、首を横にぶんぶん振る。




最後に湊人は三人に最後通告をした。



流青のこと、あきらめて?

で、うさみみちゃんには関わるな。   

次やるなら…覚悟して?


ま、次なんて、無いけど。




三人は号泣しながら逃げ出した。






「健二ー。アノ映像ありがと。

もう、あの3人の子たちのこと、大丈夫だよー。

今後はうさみみちゃんには関わらないと思うよ。」


「…。お前、何したんだ?」


「んー。特に何もー。

ちょっとお話ししたら分かってくれたみたい。

泣きながら走って逃げてっちゃった。

もうちょっとジワジワゆっくり締め上げたかったのになー。ざーんねん!」


「湊人…。お前は…相変わらずだな。

お前がやると相手に与える精神的ダメージがえげつない…。

ま、お疲れ。ありがとう。俺の出る幕は無かったな。

…次からの対策をどーするか…。」


「しっかし!イケメンクール男子の流ちゃんが、恋したらあーんなに使い物にならなくなるとはねー。…流ちゃんも人間だったんだね。」



健二と湊人は、未だ自分の恋心に気付いていない初恋バカを案じていた。




※作者は湊人が『怒らせると一番ヤバい奴』だと思っています。

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