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41 自分の不甲斐なさ ◇
流青は健二と共にSSRを出て、教室に入った。
心配していた美久子は、木下や友達といつもと変わらない様子で楽しそうに話していた。
流青は深く安堵した。
兎に角、怒りが収まらない。
自分の愚かさに心底腹が立つ。
俺がもっと注意していれば、彼女はあんな奴等に絡まれず怖がることなんて無かったんだ。
彼女は怯えていた。
俺のせいで。
女子達に絡まれて…。
何か…見覚えが…あるような…
流青は一瞬、何か薄らと記憶の欠片を思い出したような感覚がした。
しかし直ぐに靄の中に消えてしまった。
自分自身への怒りを宿したまま、美久子を見つめた。
暫くして、彼女と目が合った。
瞬間、流青の心臓が波打つ。
彼女は驚いた様子で直ぐに目を逸らしたが、再度伺うようにこちらを見た。
彼女の澄んだ焦げ茶色の目に見つめられると、
不甲斐ない自分が情けなくなり、咄嗟に目を逸らした。
本当はもっと見ていたいのに。
それからは彼女を見ることが出来なかった。
自分がこんな腰抜けだとは思わなかった。
まさかこの態度で、自分が美久子を泣かせていたとは。
その時の流青は知る由もなかった。