23 前世の私(2)
二人は聖陵学院小学校に入学すると、
一緒にいる時間が少なくなった。
男女それぞれの友達と過ごすことが多くなり、
亮介は憧れている父親の様な医師になるため、勉強の時間が増えていった。
静子も習い事や勉強の時間が増え、
お互いになかなか会えずとても寂しく思っていた。
それでも、同じクラスになり席が隣になった時には教科書を業と忘れて見せ合いをしたり、学校ですれ違う時にお互いに目配せをしてほんの一瞬目を合わすだけでとても嬉しかった。
ゆっくり会えなくても沢山話せなくても、
二人の気持ちはいつも同じだった。
学院の中学生になった二人は、少年少女から少し大人になり、
更にそれぞれの容貌が優れ、二人ともとても目立つ存在になっていた。
中学生になると少しだけ会える時間が増えた。
朝と放課後、亮介の部活動が無い日は亮介が静子を送り迎えした。
その時間は本当に幸せだった。
お互いのクラスのこと、友達のこと、部活のこと。
他愛のない話は尽きることが無かった。
幼稚園の頃のように手は繋がないが、
放課後、西日に当たる二人の影が繋がっていて静子はうれしくなった。
数日後、その様子を見ていた亮介のことを好きな女子生徒数人に呼び出され、いきなり怒鳴られた。
静子は驚きと恐怖で声も出せず動けなくなった。
「少し綺麗だからって調子に乗らないで!」
「何故あなたばかり構われるのよ!」
「亮介くんから離れて!目障りよ!」
「あなたがいるから…亮介くんを独り占めしないで!!」
幼稚園の時にも亮介を好きな女の子たちからよく言われた言葉だった。
小学校の時は一緒にいる時間が少なくてさほど虐められたことが無かった。
中学生になり、もう何度も同じようなことを言われたが、
ここまで憎しみの籠もった声音で咎められたことは初めてだった。
恐ろしくて黙って俯いていると、
一人の生徒に「聞いてるの!?」と肩を思い切り強く押され、
ふらついて地面に倒れた。
「何をしてるんだ!!」
走ってきた亮介に抱きしめられる。
亮介は憤怒の形相で女生徒達を睨み付けた。
「…これ以上、静子に危害を加える奴は俺が絶対に許さない。
女でも絶対に許さない。殴られたくない奴は今すぐここから離れろ!!」
女生徒達は全員泣き出し、逃げるように走って行った。
ごめん、と言いながら私の目を見つめて悔しそうに唇を噛む亮介に、大丈夫だからと伝える。
久しぶりに間近で見た黒い黒い宝石みたいな目は、
あの幼稚園の頃と同じだった。
その後、亮介は時間さえあれば静子の傍にいた。
周りから見ると姫を守る騎士の様だった。
その姿に女子生徒達は更に憧れ、嫉妬し、
静子は女子生徒の中で徐々に孤立していった。
段々と暗い内容になっていきます。
書きながら苦しくなってきました。。