21 親の愛情
前世を思い出した日。
学院から母親とタクシーで帰宅した。
案の定、心配で仕事が手につかなかった父親は、先に帰宅していて玄関で待ち構えていた。
いつもより熱めのハグで出迎えてくれた。い、息が、苦しい。
「美久ちゃーん!大丈夫!?今もしんどい?パパの大事な美久ちゃんが倒れたなんて、心配でパパが倒れそうになったよー!」
部長、しっかり仕事してください。
娘はもうすっかり元気です。
部下の方々に申し訳無さ過ぎです。
「もう、パパったら!美久ちゃんはもう大丈夫でーす♪ってRINEしたでしょー。仕方がないわねー。美久ちゃんラブだもんね!」
お母さんのRINEは説得力無さすぎー!
内容、端折りすぎだよ…。
「うん。パパは美久ちゃんラブなの。愛しているの。ママのことも愛しているの。だから美久ちゃんが辛いとパパも辛い…。よし!今日はパパが抱っこしてお部屋まで連れて…。」
「お父さん!私、もう大丈夫だから、自分で歩いてお部屋行けるから!」
高2女子に父親の抱っこはもうキツい。
抱き締めてられている、まあまあデカい父親の腕の中からモソモソと離れる。
残念そうに見つめられるけど、私は動じない。
「お父さんありがとう。心配かけてごめんね。会社まで早退させちゃって…ごめんなさい。
でも、今は本当に元気になったから大丈夫!
とりあえず、ちょっとお部屋で横になるね。」
「パパ。お夕飯まではとりあえず美久ちゃんを休ませてあげましょう。美久ちゃん、しんどくなったら声掛けてね。ゆっくり休んでね。」
「美久ちゃーん…。」
自分の部屋がある2階に上がった。
振り返ったら父親はまだ泣きそうな顔で心配そうに見ていた。
にこっと笑って小さく手を振った。
父親も小さく律儀に振り替えしてくれた。母親も苦笑いだ。
私はとても恵まれている。
学院の子たちみたいな、すんごいお金持ちじゃないけど、
一般庶民だけれど、親から溢れんばかりの愛情を貰っている。溢れすぎだけれど。
本当にありがたい。
ベッドに横になって目を瞑る。
今日、思い出した前世の記憶をもう一度思い返す。
かなり辛い内容だ。
思い出せる限り、思い出さなきゃ。
内容を整理しよう。
何故、今、思い出したか。
きっと意味があると思うから。