13 ミニ球技大会の日(1)
高校2年生の4月、新学期のクラス替えで、
私は初めて乾くんと同じクラスになった。
めちゃくちゃうれしかった!
嬉しすぎて涙が出た。
自分の名前よりも先に乾くんの名前を探した。
七海ときのぴいも同じクラスで、更に更にテンションが上がった。
なんて幸せ!嬉しすぎる!!涙が止まらない。
その日はクラス委員決めがあり、私は大好きな保健委員に今年もなりたくて自ら立候補した。
これだけは譲れない。
いつも目立つことは嫌だけど、がんばった。
乾くんはクラス委員長に推薦されていたけど、バスケを真剣にしたいからと辞退して体育委員に立候補していた。
辞退の理由も貴い!
体育委員!ぴったりだ。
七海ときのぴいも、それぞれ図書委員と体育委員に推薦されてなっていた。うん。適材適所だね。
翌日はオリエンテーションの一環で、クラス対抗ミニ球技大会が行われた。
私と七海はくじ引きでバレーボールが当たり、一回戦で隣のクラスにあっという間に撃沈された。
アタックされたボールって全く見えないんだねー!
きのぴいはバスケで大活躍!
順当に勝ち進んで、あと一つ勝てば決勝!
シュート決めまくるきのぴい、めちゃくちゃかっこいい!
周りの男子はきのぴいにクギ付け、女子もきゃあきゃあ言ってる。
すごいよ、きのぴい。性別を超えて人気があるなんて本当にすごい。
保健委員の私は、保健室での簡単な手当て当番があった。
きのぴいの試合もめちゃくちゃ気になるけど、前の子との交代の時間だからそろそろ行かなくっちゃ。残念。
一緒に試合を応援していた七海に声を掛ける。
「七海、ごめん!手当当番の時間だから、ちょっと保健室行くね。」
「わ!おっけー!きのぴいの試合結果、RINEするね~。多分このまま優勝いけるかも!」
「ほんと!最後まで見たかったー!私の分まで応援よろしくね!
手当て当番、私が最終までだから終わったらそのまま教室戻るね。」
「わかった!いってらっしゃい!」
交代時間ギリギリに間に合って、私は慣れ親しんだ保健室で椅子に座って一息ついた。
今はベッドに寝ている人も誰もいない。
さっきいた騒がしい体育館と全く違う、シーンとした真っ白な世界。
ここにいると、いつもなんだか心が落ち着いていく。
なんだろう。止めていた息が、すーっと吐き出されていく様な心地良さ。
不思議な感覚。
ベッドとカーテンを簡単に整えて、消毒用の綿花を補充しようとしたら、保健室のドアが開いた。
左手首を痛そうに、右手で支える乾くんがいた。