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127  猫可愛いがり

「美久子ちゃん、お料理どう?美久子ちゃん来てくれるからってシェフの皆さん、いつも以上に張り切って作ってくださってね!」

「美久子ちゃん!僕のこのお肉よかったらどうぞ!はい、あーん!」

「快成、ふざけるな。美久子には俺が食べさせる」

「ふざけてないよ!本気だよ!」

「あ?」

「さあ、志織。志織もしっかり食べないとね。はい、お口開けて」

「(パクッ…モグモグ…)あ!美味しい!美久子ちゃんも食べて!食べて!」

「……はい、いただきます…」



美久子は左右から差し出されたフォークに刺さっているお肉を、順番に両方とも食べた。

拗ねて後々ややこしいから、先に流青のお肉を食べた。

快成は不満げに口をとがらせている。


お肉、確かにすごく美味しい。

柔らかいし、めちゃくちゃジューシー!

ただ、何て言うか……。

非常に食べにくい。


超絶美形な乾家の人々、周りに立っているお給仕をしてくださる方々、高いコック帽を被ったシェフの方々。

たくさんの人にめっちゃじっと見られてて、緊張するし食べにくい!

背中に冷や汗をダラダラかきながら、必死にモグモグ食べた。

……やっぱり、このお肉めっちゃ美味しー!

やわらかーい!!



「美味しいです」



美久子はふにゃりとした笑顔で、素直に至ってフツーの感想を言った。



「「「「「「おー!!!」」」」」



周りの皆さん、手を取り合って喜んでいる。

ええっ!?そこまで!?

どうしよう、今日もめっちゃプレッシャー半端ないよ!無理だよ!!


困惑顔で美久子が固まっていると、美久子に見惚れていた流青が更に美久子にお肉を差し出し、負けずに快成も差し出した。


このままではステーキを3人前食べる事になる危機感を持った美久子は『二人も一緒に食べないならもう此処には来ない!』と、とうとうキレた。

慌てて食べ出した二人に満足した美久子は、ようやく自分のペースで食べることが出来て大満足だった。



「みんな、仲良しで楽しいね!やっぱり女の子も可愛いな…」

「そうだね。志織、女の子欲しいね」



目の前の子供達を嬉しそうにニコニコと見つめている志織を、信彦は優しい笑顔で目だけは獰猛な獣の目つきでロックオンしていた。


息子たちは『父さん、ほどほどに頼むよ…』と、諦めた目で両親を見た。



デザートと紅茶を頂き、快成の学校での話などで楽しくお喋りしていると志織が小さく欠伸をした。

左腕で志織をほぼ抱き締めている信彦は、志織の旋毛(つむじ)にキスをして、今度は蕩けるような目で話し掛けた。


「志織、もう寝室に行こうか」

「え……信くん、私、もう少し美久子ちゃんとお喋りしたいの。お土産にもらった可愛いアニマルプリンのお話しも…」

「美久子ちゃんはまた来てくれるから、またその時にゆっくりお話ししよう。さあ、おいで」

「ん……」


両手を広げた信彦は首に腕を回して抱きついてきた志織を軽々と抱き上げた。

縦抱き抱っこをされた志織は、確かにかなり眠そうだ。


……しかし、なんてお美しいお二人なんだろう!

超絶美形社長と妖精の妻。

見えるはずが無いお花が、二人の周りに咲き乱れているー!

写真!撮りたいっ!でもやっぱり今はムリかー!



「妖精、か、可愛いいっ!」

「ん?ようせい?」

「美久子ちゃん、すまないね。先に失礼するよ。またゆっくり遊びに来てね」

「……(自分がそろそろ連れて行きたかっただけじゃん)」

「はいっ!ありがとうございます。今日もご馳走様でした」

「美久子ちゃん、ごめんね。次は女性同士でお出かけしましょう!私ね、美久子ちゃんと行きたいお店があるの。アニマルプリンのお店も行きたい…」

「志織、また改めてお話ししようね。美久子ちゃん、ありがとう。おやすみ」

「……(父さん、もう我慢の限界か。今夜は早かったな…)」

「はいっ!おやすみなさい」



信彦に抱っこされた妖精は「流くん、快くんもおやすみ」と小さく手を振りながらドアの向こうに消えていった。



「はあー。綺麗だったー……」

「美久子ちゃん、ようせいって何?」

「妖精だよ、フェアリー!」

「ああー。母さん、フワフワしてるからねー」

「ああ。もう35歳なのにな」

「…え?ええっー!?あの若さで35歳!?20歳とかじゃないの!?」

「はははっ!それだと、俺が3歳の時の子供になるな」

「確かにムリだ……でも、妖精、若いにも程がある…」

「父さんと10歳差だよ!だから僕と美久子ちゃんもアリだよ!」

「おい。快成」

「10歳差!ほおおー!出会いはどんなんだったんだろー!?」

「「……」」

「……ん?」

「ま、出会いも色々あるな」

「あるね」

「……ん??」

「さあ、美久子もそろそろ俺の部屋に…」

「美久子ちゃん!今日は神経衰弱する約束だよ!はいトランプ!」

「よおーし!ババ抜きじゃ負けたから、今日は負けないぞー!」

「僕だってー!」

「……」



結局、三人でみっちりニ時間、神経衰弱とババ抜きもして、平松は先に帰宅していたため美久子は流青にタクシーで自宅まで送ってもらった。


今夜も流青は、自分の部屋に美久子を招くことは出来なかった。



※流青、無念!

 自分の両親の信彦と志織のイチャイチャを生まれた時から見ている流青と快成は、溺愛&膝抱っこ&餌付けは夫婦の通常だと思っています。


※信彦と志織のお話は、また番外編として書きたいと思っています。

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