123 みんなでアニマルプリン(2)
恵と七海の声が店内に響いた。
「ちょっ、ちょっと声が大きすぎるよ-!」
「ごめんごめん!だって、コレは可愛い過ぎるわよ」
「乾くんのこの顔見てっ!何これ!ツンがデレてるお手本だよー!」
「ほんっとー!目尻も眉毛も下がってるじゃない!」
二人が爆笑している写真は、先週の日曜日に乾家、宇佐美家で婚約式を行った時の美久子と流青のツーショットだった。
快晴の空の下、振袖を着た美久子とスーツ姿の流青が幸せそうな笑顔で並んで写っている。
美久子は紺地で七色の花模様をあしらった総絞りの大振袖。
流青は紺色のスリーピーススーツに紺色と水色のストライプ柄のネクタイに、胸に水色のチーフを入れていた。
美久子の水色の髪飾りと同じ色だ。
「美久のはにかんだ笑顔、可愛いー!」
「どの写真も乾くんの顔が笑顔だわ!」
「嬉しさ全開だねー」
「ふふっ。そうみたい。乾家の皆さんすごく驚いて全員泣いてた」
「あの、お祖父さん&親不幸モノめが!」
「ウチのお父さんもお母さんも泣いてたから、結局親は全員泣いちゃった」
「泣ける話だわ…」
「ねえねえ!この総絞りの振袖、美久の振袖なの?すごく素敵!この振袖、めっちゃ凄いよ!」
和装好きな七海が前のめりで聞いてきた。
「そうなの?ウチのお母さんのお古だよ。
まだ全然綺麗だし勿体ないから、成人式もこれ着させてもらおうと思ってて」
「偉いっ!」
「さすがウチの美久だわー!」
「ええっ!?」
「いや、ほんと。私もそういうのが大切だと思うのよ」
「うん!私もそう思う!着物は作るのに本当に手間が掛かってて、沢山の人の手で作られてるから、一回だけ着ておしまい!なんて本当に悲しいよね。
大切にいっぱい着て代々受け継がれて行くのってめっちゃ良いと思う!」
「そうだよね!」
「ウチの学院のお嬢さま達の中には、お古なんて嫌~とか言うおバカがいるわけよ」
「うんうん」
「自分でお金稼いだ事も無いくせに腹が立ってさー!」
「うんうん!」
「だから!勿体ないからとか、美久の言葉が染みるのよ~」
「いや、そんな…」
「ほんと、そうだよね。乾くんもそういう普通感覚のある美久に惚れちゃったんだろうなあ」
「ふ、二人はっ!?振袖は!?」
「私は母親のお古着るよー。桜色の薄いピンク!」
「「おおー!!きのぴい似合うよ!」」
「薄いピンク色なんて、私、着物だから着れるのかも」
「色白きのぴいなら、めっちゃ似合うよ!見たいなあ」
「七海は?」
「私はお母さんは苦労人だったから振袖無くて、日舞で使うから自分の持ってるよー。色は赤と、ピンクと、白と、あと何だっけ?」
「「おおーー!さすが名取!」」
「仕事道具だからねー」
「かっこいい……」
「ねー、美久!17歳で婚約って、めっちゃきゅんきゅんしない?
ほんとに乾くんの嫁になるんだね……。
感慨深いなあ。美久が幼妻かあ。ネタになるなあ……」
「お、幼妻って!今すぐ結婚じゃ無いから!ちゃんと大学卒業してからだから!」
「乾くん、それまで待てるのかなあ?」
「きっとなんか企んでて、学生結婚に持ち込みそー!」
「「ありえる~!!」」
「ないよっ!ないない!!」
「それも視野に入れている」
「流青くんっ!?」
「「「「「「きゃ!」」」」」」
また見つかってしまった。
お決まりの捕獲だ。
最近は最後までまともに女子会を終了出来たことが無い。
お決まりの男子三人は、周りの女性の視線を浴びながら空いている椅子を持ってきて、それぞれお決まりの定位置に座った。