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120  初デートの終わり

美久子は初めての『普通の高校生デート』を終えた。


結局、『本気の普通デートプラン』の"お店を見ながらブラブラ歩く"以降は、実行できなかった。


神社を出る頃に流青に緊急の呼び出し電話が入り、デートが途中で終了になったからだ。

あんなに笑顔だった流青が、電話をしながら怒りの形相になり、美久子が本気で泣きそうになりながらビビると流青が慌てて泣きついた。


『美久子、すまないっ!どうしても事務所に行かないといけなくなった。この埋め合わせは必ず次にするっ!』


と、不倫相手に言い訳するおじさんみたいなセリフに、美久子は吹き出して笑ってしまった。


以前に流青から、既にお父さんの事務所で仕事の勉強をしていると教えてもらった。

日々の学校の勉強とバスケ部の活動と、更に仕事の勉強までしている流青を心から尊敬し、本当に凄いと思った。


笑顔で『少し残念だけどお仕事がんばって!今日は本当に楽しかった。ありがとう』と言うと、がしっと抱き締められた。

耳元でなんかブツブツ言っていたけど、よく聞こえなかった。



最寄りの駅でじゃあここで(念願のプラン実行!)と言うと、ムスッとした流青に腕を掴まれて、そのまま新宿の流青のお父さんの事務所に連れて行かれた。


新宿にあるこのガラスのビルが、全部お父さんのだと聞いて驚いた。


ビルに入り、ロビーで待っていてくださった平松さんに駆け寄った。

セーラー服の(一応)JKな私は会社のロビーで浮きまくっていたけれど、紺色ブレザーの制服の流青くんはエリート社員のような風格があった。17歳なのに。


受付の綺麗なお姉さんに睨まれたけれど、それよりも、流青くんを迎えに来た若くて綺麗なOLさんの視線の方が気になった。


『美久子、いいか?着いたら必ずRINEするんだぞ。

仕事が終わったら必ず電話するからな。眠たくなったら寝てていいからな』

とお父さんのようなセリフを言いながら私の手を離さない流青くんに、そのOLさんは『流青さん、代表がお待ちです。お急ぎください』と少し低めの大人の声で話し掛けた。


名残惜しく何度も振り返りながら去って行く流青くんに、笑顔で小さく手を振りながら見送った。

その時もOLさんは私をじっと見ていた。


嫌なくらい覚えのある目だ。

流青くんに恋する人が、私に向けるあの目。

百合奈や、罵声を浴びせてきたキラキラ三人組女子や、前世の白井夏美と同じだった。






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