110 創立100周年記念パーティー その後(2)
「この度は当院と孫の流青の不手際により、
美久子さんを大変な目に合わせてしまい……
本当に申し訳ありませんでした」
一彦は三人に向かって深くお辞儀をし、謝罪した。
乾家全員、頭を下げていた。
「本当に、大変申し訳ありませんでした。
今回の件は私が友人だからと気を許してしまったため発生した事件です。
私の責任です」
正彦も謝罪し、深くお辞儀した。
「ち、ちょっとお待ちください!
どうか皆さん、お顔をお上げください。お願いします!」
孝は頭を下げ続けて謝罪をする乾家の人々を慌てて止めて、
座ってもらうようにお願いした。
なかなか座ろうとしない皆の雰囲気に、
困った美久子がおずおずとお願いをした。
「……あ、あの…みなさま、本当にありがとうございます。
私はお蔭さまで無傷で、元気ですので大丈夫です。
なんですが……あの、申し訳ないのですが、
実は、あ、足が痛くて、みなさまに座って頂けたらありがたいんですが……」
立食のパーティーで、低めだが初めてヒールを履いた美久子は、とうとう足が痛くなり限界に近かった。
「「「「「「はっ!」」」」」」
全員がハの字に眉を下げた困り顔の美久子を見つめ、慌てた。
「早く座りなさい!」
「すぐに医務室に連絡を!」
「私が処置を!」
「喉は渇いてないかっ?」
「お菓子とフルーツもお願いして!」
「俺がいつものように横抱き抱っこしよう」
色々な声が飛び交ったが、美久子が全て丁重にお断りをし、
全員座ってお茶を飲み出した。
流青はいつの間にか美久子の真横に椅子に座り、
ちゃっかりと美久子の腰に手を回していた。
孝は『コラーッ!その手を離せっ!』と、怒りたかったが、
乾家の面々の前のため言えずプルプル震えていた。
ゆり子が孝の片手を握り、プルプルはスッと収まった。
孝が少し間を置いた後、話し出した。
「皆さま、美久子が無事にここにいますのも、
皆さまが助けてくださったお蔭です。
美久子の親として心より御礼申し上げます。
本当にありがとうございました。
……ですが、もう本日はこの話はこの辺りで終わらせて頂きたいと……
美久子もこう見えて疲れていると思いますので……」
孝が乾家の皆に頭を下げ、やんわりとそろそろお開きにして欲しいと促した。
「……宇佐美さん、実はひとつお願いと言いますか…ご提案がございまして…」
信彦が真剣な表情で孝を見た。