104 創立100周年記念パーティー(32)
わ、わたし、今なんでこんな注目を浴びながら、
パーティー会場のど真ん中を歩いてるんだろ?
ひえーっ!モーゼの十戒みたいに奥のステージに向かって
道が出来てるー!
拍手が起こってて、笑顔の人が多いけど、
ご令嬢達はほぼこっち見て睨んでる……。怖っ!
きのぴいー!戦う皇帝ー!流青くん、どこー!?たすけてー!
なのに、右側で歩いてる流青くんのおじい様は
ニコニコご機嫌だ。
こんな注目を浴びながらも笑顔って大物感がスゴいなー。
んっ!ちょっと待て!
亮介そっくり(かなり渋いロマンスグレー!)なおじい様と
二人で腕を組んで歩くって……バージンロードっぽくない!?
きゃー!亮介と時空を超えてできた、結婚式っぽい!?
めっちゃ幸せだ!!
キンチョーし過ぎた美久子はおかしな妄想に逃げることで現実逃避した。
思いっ切り笑顔を引き攣らせながら、震える足で必死に歩いた。
バージンロード的には周りから見ると完全に歳の離れた親子での入場シーンだか、美久子は新郎新婦で妄想していた。
そもそも、一彦は亮介にそっくりだが、亮介本人ではないのでその妄想はおかしな話だ。
挙動不審な美久子の横で、現在77歳の名誉院長の一彦は、
第一線を退いた今でも威厳と品格のあるカリスマ性で圧倒的な存在感を醸し出していた。
180センチ近くある背丈でグレイヘアを後ろに流し、
若い頃はさぞ女性にモテたであろう怜悧な美貌は今も健在で、渋味が増している。
診察時に患者に向けて以外は殆ど笑う事が無い一彦の笑顔に、一彦を知る招待客は驚きを隠せないでいた。
『おい!名誉院長が笑ってるぞ!』
『笑顔なんて、初めて見た!』
『隣の女の子に笑いかけてる……』
『あの隣の若いお嬢さんは誰?』
『悔しい!名誉院長に気に入られているなんてっ!』
『今なら家の娘を紹介出来るかも!』
周りの声は、会場の熱気の中に消えていった。