表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 3章《近未来の翼》
82/383

72話【昨夜の出来事~王女との謁見~】



◇昨夜の出来事~王女との謁見(えっけん)~◇


 ゴゴゴゴゴ―――と、重い扉が開き。

 エミリアとアルベールの二人は、軽謁見(けいえっけん)の間に入った。

 おずおずと前進して中央まで来ると(ひざまず)いて待機する。


 視線(しせん)の先には豪勢(ごうせい)椅子(いす)が一つだけあり、部屋中に()かれた赤い絨毯(じゅうたん)の上には数人の騎士いるが。どうやら【聖騎士】はオーデインとノエルディアだけのようだった。

 それでも、エミリアは緊張を隠せず足を笑わせる。


(あぁ……!足がっ!……(ふる)えるっ!!)


 自分の太股(ふともも)をギュウッと(つね)り、緊張を痛みで誤魔化(ごまか)す。

 そんなエミリアの様子を見てか、ノエルディアがクスクスと笑っているが、隣りのオーデインに小突かれて静まった。


(あの人……私と同じくらいの年齢のはずだけど、騎士学校の先輩じゃないし……どこから来た人なんだろう……)


 【聖騎士】に所属しているという事は、騎士学校の卒業生。もしくは何か快挙(かいきょ)を成し()げたかだ。

 【聖騎士】の新任は、アルベールのように下町にも発表される。

 エミリアもアルベールもが、ノエルディアについて一切知らなかったことを考えると、【聖騎士】の仕組みはまだまだ知らないことだらけなのかもしれない。

 ちなみにアルベールの前である前々年度の卒業生からは、一名が【聖騎士】に昇格している。


 つまる所、ノエルディア・ハルオエンデは、英雄的快挙(かいきょ)を成し()げた実力者だと言う事になる。

 先ほどの失言からは感じられないが、相当(そうとう)実力はあるのだろう。


「おいエミリア、顔伏せろ……王女殿下(でんか)が来るぞ」


「――うぁ。も、もう!?」


 と、エミリアは急いで顔を()せ待機する。


「ローマリア・ファズ・リフベイン第三王女殿下(でんか)の、ご入場~」


(……やばい……頭真っ白だ。さっきの話もそうだけど、なんで王女殿下(でんか)が私を……?)


 カツカツと鳴るヒールの音に合わせて、エミリアの心臓も鼓動(こどう)する。

 やがて音が鳴りやむと、静かになった謁見(えっけん)場に、気高くも可愛らしい声が響く。


(おもて)を上げてください、エミリア・ロヴァルト、アルベール・ロヴァルト両名」


「は、はいっ――っ!!」

「はっ!」


 エミリアとアルベールは同時に顔を上げて、王女が座る豪勢(ごうせい)椅子(いす)に目をやる。

 そこに座っていたのは、椅子(いす)から足を浮かせた背の小さな少女。

 完全にエミリアよりも低く、まるで子供。

 王女だから子供だろうと言われればその通りなのだが、第三王女ローマリアは、今年で十六のはずだ。

 エミリアの一つ下とはいえ、それでも可哀(かわい)そうなくらい低かった。


 王家の(あかし)である桃色の髪を肩口でふんわりとさせ、内に巻かれた髪はシュートボブに近い。

 だが流石(さすが)は王女、(たたず)まいは気高く、(りん)とした表情は十分に大人っぽい。

 きっとサクラが言えば「大人ぶった小学生」と言うはずだ。


「この間は助かりました。エミリア・ロヴァルト、礼を言います。ほら、あなたたちも礼を言いなさい。「ローマリア殿下(でんか)をお助けいただき、ありがとうございます」って」


「「「「ローマリア殿下(でんか)をお助けいただき、ありがとうございます!!」」」」


 ローマリアの合図(あいず)で、その場にいた兵士達は口を(そろ)えて感謝を()げた。

 オーデインとノエルディアの【聖騎士】二人は黙って見ていたが。


「で、殿下(でんか)……もったいないお言葉です。おいエミリア、お前もなんか言えっ」


「……あ、あの時の――女の子っ!?」


 何を言うかとエミリアは、王女を女の子と呼び、(おどろ)いて目をパチクリさせていた。


「――な!馬鹿っ!エミリアっ!!」


「構いませんよ……あの時(れい)を欠いたのは私です。そのくらいの失言は許しましょう」


 エミリアの頭を押さえつけようとしたアルベールだったが、王女の(ゆる)しが出たことで王女に向かって頭を下げる。


「妹の失言、許していただき感謝いたします。殿下(でんか)……ほらエミリアっ!」


「あ……も、申し訳ありませんでした!!」


「ええ、許しましょう――では、本題に入りますが……そうね、あなた達は帰っていいわよ。オーデインとノエルディアは残って」


 高圧的(こうあつてき)な態度で兵を退室(たいしつ)させるローマリア。

 兵達はそれに律儀(りちぎ)(したが)い、一人一人(れい)をしながら部屋を出ていく。

 その光景は少し気味の悪いものだと、エミリアは思ってしまった。


「ふぅ。疲れた……でも、オーデインが探してくれたおかげで、貴女(あなた)に会えたわ……本当に良かった。(おどろ)いたでしょう?」


 ローマリアは、兵がいなくなったことを確認すると、椅子(いす)から降りてエミリアとアルベールの場所まで歩み出る。

 王族としてはやってはいけない行為(こうい)のはずだが、オーデインもノエルディアも、止める気配(けはい)すらない。


「で、殿下(でんか)っ!?何を!」


 当然ロヴァルト兄妹は(おどろ)く。

 何とも自由な王女の行動に、先ほどから冷や冷やさせられてばかりだ。


「いいからいいからっ……楽にして。堅苦(かたくる)しいのは好きじゃないのよね、私。オーデインが形式だけでもって言うから、仕方なく謁見(えっけん)という形にしたけど、本当は極秘(ごくひ)に会いたかったのよね。大臣もうるさいし」


 うるさい大臣とは、かつて【鑑定師】マークス・オルゴが愚痴(ぐち)っていた、ジュアン・ジョン・デフィエル大臣の事だ。


「……え、ええっ!?」


 ローマリアは二人の場所まで来ると、(ひざ)をついて座り込もうとする。

 だがこれにはオーデインも。


殿下(でんか)……それは流石(さすが)許容(きょよう)できません。ノエル、椅子(いす)をここに」


「はい。副団長」


 先読みしたかの(ごと)く、ノエルディアは()ぐに椅子(いす)をローマリアの元に持ってくる。


「ありがとう、ノエルディア」


「いえ……」


 呆気(あっけ)にとられるエミリア。

 何とか冷静(れいせい)でいようと心がけていたアルベールも、どうやら限界なようだ。

 頭痛(ずつう)がするのか指でこめかみを(おさ)えていた。


「どうかした?」


殿下(でんか)が変なことばかり言うからですよ」


「あら失敬(しっけい)ね。私は縛られるのが嫌いなの、だからあの日だって、収監所(しゅうかんじょ)で何があったか知りたくて、外に出たのだもの」


「……王女殿下(でんか)に脱走(ぐせ)が……あっ!も、申し訳ありません!」


「あははっ!気にしなくてもいいよエミリア(じょう)。本当のことだから、だから私達も大変なのさ」


 本人が言うのなら気にしないが、部下であるはずのオーデインに言われても。

 エミリアは愛想笑(あいそわら)いで誤魔化(ごまか)して場を(しの)ぐ。


「それよりも、ローマリア王女殿下(でんか)……どういう経緯(けいい)で妹のエミリアが、殿下(でんか)をお助けしたのでしょうか……?」


「……ふぅん。まぁそうよね、気になるわよね。どうやら妹さんも、さっきまで私に気が付いていなかったようだし、簡単(かんたん)に説明するわね」


 そうしてあの日、エミリアがローマリアを助けた時の経緯(けいい)が説明された。




「……どう?理解した?」


「つ、つまり……城を抜け出して、他国の間者(かんじゃ)に命を狙われたところを妹、エミリアが助けて、恩義(おんぎ)を感じたというか、実力を評価して【聖騎士】に任命する……と?」


 物凄く重大(じゅうだい)な事をペラペラと話したローマリア。

 他国の間者(かんじゃ)についても、王女の脱走(ぐせ)についても、私的な【聖騎士】昇格についても。

 どれも口外できないような内容だった。

 それはつまり。


「そういう事……よ?」


((おど)しも(ふく)まれてるのか……でも、エミリアが【聖騎士】……?これは快挙(かいきょ)になるはずだ。口外できないにしても……俺と二人、兄妹で【聖騎士団】に所属すれば、かなりエドの為に動けるっ!!)


 内心、まだ信じられない思いもある。だがエミリアが起こしたこの快挙(かいきょ)は、エドガーの為になるはずだ。

 これを断る理由は無い。それ以前に、(おど)しのようなものをかけられている状況でもあるが、もうそれはアルベールにもエミリアにも関係ない。

 これは、絶好(ぜっこう)のチャンスなのだから。


「……エミリア、やるよな」


「え……でも、騎学もあるし……いいのかな?」


「あら。騎士学校なら通えばいいわ。【聖騎士】が学校に通えば話題(わだい)にもなるし」


「確かに話題(わだい)にはなりますね。ローマリア殿下(でんか)護衛(ごえい)騎士が、騎士学校の現役生徒だったら」


「……は!?ご、護衛(ごえい)騎士!?」


 まだ聞いていない情報を、ノエルディアの口から聞いてしまい、エミリアはつい大きな反応をしてしまう。


「――あっ!私、また……」


「オーデイン……。この子(ノエルディア)はおバカなの?」


 ノエルディアの二度目の失言(一回目はローマリアは知らない)に、ローマリアは(あき)れてため息を()く。


「申し訳ありません殿下(でんか)……バカなんです。【聖騎士】でも」


 オーデインも(あき)れながら部下の失言を謝罪(しゃざい)する。


「ももも、申し訳ありません殿下(でんか)何卒(なにとぞ)首だけはっ!!」


(なんか……誰かに似てる気が……)


 エミリアは、忠誠心(ちゅうせいしん)(かたまり)である異世界人を思い出す。


「ま、いいわよ。馬鹿はまだ(・・)沢山いるし。どうせ話すんだしね、不問(ふもん)にしてあげるわ」


「あ、ありがとうございまぁす!!」


 ぱぁぁっと笑顔になるノエルディア、しかし。


「ただし、バツとして貴女(あなた)正装(せいそう)は、そのメイド服だから!」


 ドーン!と、ノエルディアを指差してドヤ顔を見舞(みま)うローマリア。

 それを聞いたノエルディアは、顔面を蒼白(そうはく)させて。


「そ、そんなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


「ぷ。っはははははは!!」


 百面相(ひゃくめんそう)のようにコロコロ変わるノエルディアの表情に、オーデインも爆笑する。


「……ね、ねぇ兄さん」


「……なんだよ。何も言うなよ……」


 【聖騎士】に成れる事は、正直言って嬉しい。

 だが、個性的すぎる王女の派閥(はばつ)に、果たして自分はついていけるのかと、活躍(かつやく)する姿が想像できないエミリア。

 アルベールも、自分と妹が【聖騎士】として大成(たいせい)できるのか、兄妹(そろ)って将来(しょうらい)が不安になるロヴァルト兄妹だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ