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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 3章《近未来の翼》
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67話【前触れ】



前触(まえぶ)れ◇


「……はっっくしゅっ!――ああっ……しんどいぃ……」


 【下町第一区画(アビン)】にて、エドガーの知人であるマークス・オルゴに会っていたローザとサクヤは、帰り道で露店(ろてん)のアイスを食べていた。

 何度もくしゃみに邪魔(じゃま)されて、まともにアイスを堪能(たんのう)できていないローザは、隣でアイスキャンディーをペロペロと舐めるサクヤを(うらや)む。


「――いいわね貴女(あなた)は、おいしく食べられて」


「な、なんなのだ急に、この氷菓子(こおりがし)を食べようといったのはローザ殿ではないか!そのような目で見られる言われは無いぞ……」


 理不尽(りふじん)視線(しせん)に、サクヤはむっとしながらもローザに言葉を返した。


「まぁ……いいのだけれ――くっしゅっ!……はぁ~……」


 明らかにイライラしているローザに、サクヤは急いでアイスキャンディーを頬張(ほおば)って、自分に火の()が降りかからないことを(ねが)った。




「……だいぶ(おさ)まったわ……」


「そ、それは良かった……」


 心の底から思うサクヤ。


「さてと。宿に戻るにしても、まだ時間がね……サクヤはどこか行きたいところはないのかしら……?」


 和服(わふく)姿のサクヤは、普段のポニーテールではない黒髪を風に吹かせながら、休憩(きゅうけい)していた長椅子から立ち上がり言う。


「わたしはローザ殿につれ回……ではなく、ついて回っていただけだ。あとは帰るだけと思っていたのだが……それにわたしは、まだこの町をよく知らぬしな」


 今日のローザの目的は、マークスの敵意(てきい)を聞き出す事だった。

 見立てでは、少なくとも現状(げんじょう)はマークスがエドガーに何かをすることは無いと取れる。

 確定ではないが、マークスがエドガーに危害(きがい)を加えるようなことは無さそうだと、ローザは判断した。


「そう……私も、まだ宿の近辺と【下町第三区画(コラル)】くらいしか案内出来ないし……思ったよりも早く事が()んだから、サクヤの行きたいところにでも行ってみようと思ったのだけれど……」


 腕組して考えるローザに、サクヤは笑いながら答える。


「いや、気にしないでくれローザ殿……わたしは忍び、主殿(あるじどの)(かげ)になり、(ささ)えるのがわたしの仕事だ」


「そういうもの?」


「ああ。そういうものだ」


 (みずか)()の目を()けて、エドガーを(ささ)える覚悟を見せるサクヤに、(なか)ば無理矢理にでもサクヤを楽しませようとしていたローザは(あきら)める。


「……じゃあ帰りましょうか。【鑑定師(あの男)】から聞きたいことも聞けたし、後はエドガーが回復してくれれば文句はないわね」


「うむ……【鑑定(かんてい)師】殿は、主殿(あるじどの)から信頼されている様子だったし、【鑑定(かんてい)師】殿も主殿(あるじどの)をよく思ってくれているようだし、問題はないと思える」


 何より、エドガー自身がマークスを信用しているので、心配の芽を一つでも無くそうというローザは、万が一の保険(ほけん)という形で聞きに行ったのだ。

 それがまさか、自分が(ほこり)のアレルギー持ちだった事を知り、ローザ本人も驚いていたところだ。


 前兆(ぜんちょう)は、元いた世界でもあった。

 洞窟(どうくつ)(ほこら)などの砂埃(すなぼこり)が飛んできそうな場所は、野生の感か女の感か、自然と()けるようにしていたし。

 掃除(そうじ)などは王女という立場上したことがなかった。

 自分から進んでエドガーの為になると思い立ち、取った行動ではあったが。

 弱点を増やす形となったのは不覚(ふかく)だ。


 ローザはくしゃみで中々食べ進められなかったアイスキャンディーを一気に食べてしまうと、誰も見ていないことを確認して、キャンディーが付いていた棒をボッ!と一瞬で燃やしつくす。


「帰る前に、【心通話】でサクラに連絡を入れておいたほうがいいわね」


「あ、それならわたしがしておこう……」


 サクヤはローザを手で制し、ゆっくりと目を(つぶ)って、宿にいるサクラに(ねん)じる。

 

 【心通話】。

 それは、異世界人サクラが持つ《石》【朝日の(しずく)】の能力であり。

 “契約者”と所有者、つまりエドガーとサクラの心を(つな)ぐものだ。

 更にはローザやサクヤとも、《石》と《紋章》の(つな)がりで会話ができるようになっている。

 残念ながらエドガーと異世界人にしか使えないので、エミリアやアルベールは使えない。


<おーい……サクラよ、聞こえるか?今から帰るから、昼食(ちゅうしょく)の準備を――>


 「(たの)めるか」と言おうとして、サクヤは(おどろ)く。

 最後まで言い切る前に、サクラから返答があったのだ。

 しかも、とても(あわ)てふためいた泣きそうな声で。


<【忍者】っ!?良かった!早く帰ってきて……お願いっエドく――>


 サクラの【心通話】は途中(とちゅう)途切(とぎ)れてしまい、不穏な雰囲気(ふんいき)が流れる。

 どうも【心通話】は、サクラの精神(メンタル)に応じているところがあるらしく、(つな)がりが不安定(ふあんてい)になる事が多々あった。


「……お、おいっサクラ!?どうした!?主殿(あるじどの)がどうしたのだっ!……駄目(だめ)だ、通じない……」


 咄嗟(とっさ)の事で、つい実際に口にしてしまったサクヤ。

 その様子を見て、ローザも何かがあったと気付き。


「……【心通話】が途切(とぎ)れてる……急がないといけないかもしれないわね……」


 ローザも、宿にいる二人に【心通話】を(こころ)みるが、まったく反応しなかった。

 異世界人達は、“契約者”のエドガーに何かがあった時、《石》を通じて()ぐにでも判るようになっているが、今はその反応はない。

 エドガー魔力が尽きているのも原因(げんいん)だが、心身に異常がきたしている訳ではないが。

 サクラの反応から考えて、ただ事ではないのが分かる。


「――あ、ああっ!急ごう」


 サクヤは(あせ)りながらも、ローザの言葉に(うなず)いて素早(すばや)く動き出した。

 ローザも、(すで)に走り出しているサクヤに続いて急いだ。


(――なにがあったの……?)


 自分のいない間にエドガーの身に何かあったとしたら、ローザはきっと平常(へいじょう)ではいられないだろう。

 サクラを信頼(しんらい)していない訳ではないが、心をざわつかせるローザであった。


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