表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 3章《近未来の翼》
74/383

64話【エドガー危機一髪!】



◇エドガー危機一髪!◇


『さぁ始めるよっ!名付けて、【エドガー危機一髪(ききいっぱつ)】!』


 (かばん)から取り出した小さなラッパをパフパフっ!と鳴らし、サクラが宣言(せんげん)する。


『――き、危機一髪(ききいっぱつ)って?』


 エミリアが、エドガーの姿を()した人形を手に持ちながら、サクラに疑問(ぎもん)を投げかける。


『ふっふ~ん。このゲームはね。あたし達四人がこのエド君人形をぶっ飛ばさないように守るの。だ・か・ら、エド君を思う力が、エド君人形を守ってくれる。思いの力が強い(ほど)勝率(しょうりつ)が上がるんだよ!』

⦅ま、嘘だけど♪⦆


『思いか……』

『……』

『勝った!』


 考えるサクヤ、何かを(あや)しむローザ。

 そして何故(なぜ)か自信満々のエミリア。


『はい、はいっ、ローザさんは赤い剣ね。エミリアちゃんは黄色、【忍者】は黒、んであたしが白』


 サクラは、(あや)しむローザに何かを言われる前に、素早く(たる)に刺すおもちゃの剣を(くば)る。

 赤い剣を渡されたローザは、まんざらでもない顔で『分かってるじゃない』と言い、サクラの思考誘導(しこうゆうどう)は成功した。


『サクラ。エド人形はここでいいんだよね?』


『うん。その穴にカチッてはめ込めばいいよ』


 エミリアは、ぎゅうっ!と一度人形を(にぎ)りしめて念を送る。

 そして丁寧(ていねい)にエドガー人形を(たる)にはめた。


『待っててねエド、私が助けてあげるからっ!』


 闘争心(とうそうしん)(みなぎ)らせて、エミリアは気合十分と言ったところだ。


『まるで本物のエド君が捕まってるみたいな言い草だね……』


 エミリアの本気度にサクラは(おどろ)くが。

 自分以外は危機一髪(ききいっぱつ)をしたことがないので当たり前でもあり。

 サクラが(あお)ったエドガーを思う心の強さがどうとかが、余計(よけい)競争心(きょうそうしん)()んでいた。


『この穴にハズレは一つなのよね……?』


『え、うん。そうですよ。ハズレっていうか、アタリっていうかは人それぞれですけど……』


『最後まで残ったらどうするのかしら……』


 ローザは(たる)の穴を見ながら、サクラに疑問(ぎもん)を投げかける。


『あ~それはもう、最後の二択を当てた人の勝ちでいいんじゃないですか?総取(そうど)り的な』


『そうね、それでいいわ』

心得(こころえ)たぞ』

了解(りょうかい)!』


『それじゃ、基本ルールね。あたし達が順に剣を一本ずつ(たる)に差し込んで、エド君人形を飛ばしたら脱落(だつらく)。これを三回()り返して、最後まで残った人がエド君のお世話係を担当(たんとう)。あ、そーだ、外れた人は掃除(そうじ)とか料理を担当(たんとう)ね』


『いいわよ』

『うむ』

『よ~し、誰から行く?』


 四人それぞれが了承(りょうしょう)し、不毛(ふもう)な戦いが始まる。

 ――始まってしまう。




『年長者からどうぞ?』


 サクラがローザに手を差し向け、(たる)を回す。

 一瞬(いっしゅん)だけ酸素(さんそ)(うす)くなった気がするが、サクラは気にしない。


貴女(あなた)達17でしょう?それじゃあ、時計回りでもいいわね……?』


 ローザ以外が同い年なので必然的(ひつぜんてき)にローザが先手になった。


『いいよ』

『うむ、年功序列(ねんこうじょれつ)と言うしな』


 エミリアとサクヤも納得(なっとく)し。

 順番は、ローザ、サクヤ、エミリア、サクラの順に決まった。


『――さあ、始めるわね……刺すわよ?』


 ローザの初手。

 どこにも剣が刺さっていない綺麗(きれい)な状態の(たる)を、ローザはクルクル回して吟味(ぎんみ)する。


『ここにするわ』


 カチッ。と赤い剣を刺す。

 エドガー人形は微動(びどう)だにせず(たたず)んでいる。


『セーフですね。次はエミリアちゃん』


『な、なんだか緊張するね』


 黄色い剣のおもちゃを持ち、ローザから渡された(たる)を回し見る。


『よし……ここにしよ』


 エミリアが選んだのは、ローザが剣を刺した反対側。

 ――カチッ!ビョーーーーーーーン!!


『――へ?』


 エミリアが刺した箇所(かしょ)は見事に的中(てきちゅう)し、エドガー人形は(ちゅう)綺麗(きれい)に舞う。


『おっと……』


 サクヤが、クルクルと落ちてきたエドガー人形を(つか)む。


『――エミリアちゃん、アウトーーー!!』

⦅……一発とか!!⦆


 ポカーンと固まるエミリアに、サクラが宣告(せんこく)する。

 その宣告(せんこく)に、エミリアの(ほほ)からそっと(つた)う涙。


『な、泣いてるっ!?』

『――プフッ』


 まさかの、一巡目で言い出しっぺのエミリアが脱落(だつらく)した。

 涙に(おどろ)くサクラと、その様子に()き出すローザ。


『な、な……なんでよぉぉぉぉ!!うわぁぁぁぁぁん!!』


 テーブルに突っ()して泣き(くず)れるエミリアに、笑い続けるローザが言う。


『残念だったわねエミリア……貴女(あなた)の思い。愛はその程度だったのね!!』


 笑いながら悪役(あくやく)の様な事を言うローザに、エミリアは絶望(ぜつぼう)の表情を浮かべて更に泣き出す。


『ぐ……うう、うぅぅぅぅぅぅぅ』


 エミリアは、(くや)しさと悲しみが入り混じった涙を流し。

 テーブルで拳をぎゅうぅぅっと(にぎ)る。

 その有り様にサクラはドン引きしながら、エドガー危機一髪(ききいっぱつ)を進行させる。


『さ、さぁ。次は【忍者】の番ね……』


『……う、うむ。いいのか?やっても……何と言うか、エミリア殿がかわいそ――んぐっ』


『言わないでっ!それだけは言わないでぇっ!かわいそうとか!それだけは言わないで!』


 サクヤがかわいそうと言おうとしたのに反応して、エミリアは()ぐにサクヤの口を(ふさ)ぐ。


『エミリアちゃん……自分で言っちゃってるから』


『――!!……うぅううう』


 最後は自滅(じめつ)(くず)れ落ちたエミリア。

 三人は気を取り直して、エドガー危機一髪(ききいっぱつ)を続ける。





 刺さっていた剣を抜き、エドガー人形を再配置(さいはいち)するサクヤ。


『あんた意外と出来るのね……』


流石(さすが)失敬(しっけい)ではないか?これくらい理解(りかい)しているぞ……わたしだって』


 頬杖(ほおづえ)をついて、エドガー人形を再配置(さいはいち)するサクヤを見ていたサクラが、何気無(なにげな)しに口にするが、どうやらサクヤは異論(いろん)があるようだ。


『お(ぬし)が準備しているのを一度見たからな、これでいいのだろう?』


 エドガー人形の置き直しが終わり。

 刺さっていた赤い剣をローザに返す。

 二回目の準備は完了だ。


『そうね、後は再スタートよ。エミリアちゃん脱落、【忍者】から始め』


『……心得(こころえ)た!』


 サクヤは黒い剣のおもちゃを指の隙間(すきま)に四本(はさ)むと、一気に刺そうとする。


『――なにも分かってないじゃないっ!!』


 スパーーン!とハリセンでサクヤを(はた)く。


『いだっ!――にゃにをするか!舌を(かn)んだぞ!』


 涙目で抗議(こうぎ)するサクヤに、サクラが何度もハリセンをお見舞(みま)いする。


『だから!一本!ずつって!言ったでしょ!』


 スパン!スパン!スパン!スパーン!と連続でサクヤを(はた)き、はぁあぁと肩で息をする。


『さあ、やりなさい……一本よ、一本』


『ぐぬぬぅ……分かった』


 髪をぼさぼさにし、叩かれた箇所(かしょ)(おさ)えながら、反対の手でカチッと剣を刺す。


『せぃふだな!』


『そうね……次はサクラ。そして私に戻る、と』


 ローザの言葉にサクヤは『うむ』と(うなず)き、サクラに(たる)を渡す。


『こんなのは考えちゃダメなのよねっ!っと』


 サクラは考える(ひま)もなく、サクヤから(たる)を受け取ると。

 カチッと、()ぐに白い剣を刺す。エドガー人形は動かない。


『はいセーフ。どうぞ、ローザさん』


 サクラは(たる)をテーブルの真ん中に置き、ローザが取る。


『なら、私もサクラに(なら)わせてもらうわね……はい、サクヤ』


 ローザは赤い剣をサクラが刺した右隣に刺し、カチッと音が鳴ると()ぐにサクヤに渡した。


『……な、ならばわたしもっ』


 二人に急かされる形となったサクヤも、()ぐに黒い剣を刺す。

 上段の列にサクッと刺して、カチッと音が鳴る。


『せ、せぃふだ……ほれ、サク――』


 ホッと胸をなでおろし、サクラに渡そうとするが。

 ――カチッと、サクラがサクヤが持つ(たる)に直接白い剣を刺し、ニヤリと笑う。


『はいセーフ。ローザさんに渡して、【忍者】』


『サクヤ……持っていなさい、そのまま行くわっ』


『ちょっと待つのだ!?わたしを休ませてくれ、主殿(あるじどの)人形の命を(にぎ)っていると考えたら、なんだか不安になってきてだなぁ。あっ、ちょっと……』


 サクラの素早い対応に、ローザも負けじと剣を刺し込む。

 サクヤの抗議(こうぎ)もスルーして、カチッと剣が刺し込まれた。エドガー人形は動かない。


『さあ、サクヤの番ね』


『……ううぅ、自分の(しゃく)でやりたいのにぃ……』


 サクヤはテーブルに(たる)を置き。

 黒い剣を指でつまむと、今度は下の段に刺す。


『――あっ!――あ痛っ……』


 カチッ、ビヨーーーーーーーン。――ビシッ!っと。

 飛ばされたエドガー人形がサクヤのオデコに的中し、ローザが言う。


『サクヤ……アウトね』


 サクラの真似(まね)をして、親指を立ててサクヤに向ける。

 なんだか楽しそうだ。


『あ、ああ、主殿(あるじどの)ぉぉぉぉ!わたしが弱気になったから……弱気になったからぁぁぁぁぁぁ!!』


 サクヤも泣き(くず)れた。あ。エミリアが笑っている。

 エミリアはそっとサクヤの肩に手を置き、優しく微笑(ほほえ)んで(うなず)く。


『――どうせ一緒に再挑戦(さいちょうせん)しよう!とか言い出すんでしょ……?駄目だから』


『『――!!』』


 エミリアは、二番目に脱落(だつらく)したサクヤを引き入れてリベンジしようとしたのだろうが。

 サクラに回り込まれて考えを(つぶ)された。


『――まだ言ってないのにぃ』


『……と、言う事は。言う気満々だったのね……』


 サクヤと一緒にテーブルに突っ()していじけるエミリアは放っておくとして。

 残った二人は見合う。


『さぁ、決着付けますか……』


 サクラはサクヤからエドガー人形を取り。

 設置し直すと、考える(ひま)もなく剣をカチッと刺す。


『セーフ。どうぞ?』


 サクラは(たる)を持ったまま、エドガー人形をローザの正面に向ける。

 随分(ずいぶん)余裕(よゆう)を見せるサクラに、ローザは感心する。


『……サクラ、やるわね』


 何がどうかと言うと。


『ローザさんが剣を刺した数回、全部エド君人形が背面(はいめん)でしたから……もしかしたら正面向かせたくないのかなって』


『……くっ。やはり(あなど)れないわね、貴女(あなた)……』


⦅あ、正解だった……⦆


 ローザは、エドガーに見られている気がして、正面を向かせられなかっただけだ。

 物っっ(すご)くどうでもいいが、真剣に戦っているのは(つた)わった。


『いいわ。その挑戦受けて立つ……行くわよエドガー』


 サクラが持ったままの(たる)に、ローザはエドガー人形の正面から剣を刺そうと、指でつまんだ赤い剣を構える。

 不思議と剣が本物に見える迫力(はくりょく)で、エドガーを刺し(つらぬ)こうとしているかのようだ。


『――私が勝つわ!エドガーのお世話をするのは私よっ……そしてエドガーは……』


 何か盛大(せいだい)な話になりそうだが、これはゲーム。――だよね?と、思わずにはいられないサクラ。

 いつの間にかエミリアとサクヤも真剣にこちらを見ていた。


『……えええぇ?』


『行くわよっ!!――はぁっ!』


 ローザはエドガー(人形)の正面に赤い(おもちゃ)を刺す。


『――ぐわぁぁ!!』


 エミリアは、不吉(ふきつ)にもわざとらしい悲鳴をあげた。それが後押(あとお)ししたのかどうか(さだ)かではないが。

 ――ビョーーーーーーーーーーン!!


『……』


『え、えーっと……ローザさん、アウト』


 迫真(はくしん)のゲームをしていたわけでもないのに。

 何処(なぜ)か気まずい雰囲気(ふんいき)になってしまった中で、サクラが宣告(せんこく)する。


『――ふっ……負けたわ――タイミング(・・・・・)丁度(ちょうど)いいし……仕方がないわね』


 そう言いながらローザは、エドガー人形を拾い上げて、エミリアとサクヤに渡す。

 その様子に、サクラは(かん)付く。


『……ま、まさか』

⦅あれは……人形が消える瞬間を見せて楽しむつもりだ、絶対!⦆


 エドガー人形の残り魔力が()きようとしているタイミングで勝負がつき。

 ローザのせめてもの悪足掻(わるあが)きで、どうやらエミリアとサクヤの二人はとばっちりを受けそうだ。


⦅……な、なんか……勝っちゃったな⦆


 本当は、穴覗(あなのぞ)きや二度刺(にどざ)しなど。

 複数の必勝法(ひっしょうほう)があったのだが、一切使うことなく終戦した。


⦅……あれ?……あたし、もしかして……勝とうとした(・・・・・・)?⦆


 自分が無意識(むいしき)に勝利を(のぞ)んでいたことに気付き、サクラは戸惑(とまど)う。

 そんな中、エドガー人形が魔力を無くして消滅(しょうめつ)する。

 ――パシュュュュン!


『ああ!エドォォォォ!?』

『ああ!主殿(あるじどの)ォォォォ!?』


 ローザの予想通りに、エミリアとサクヤは(おどろ)いて声を上げる。

 そしてそのタイミングでメイリンが出勤(しゅっきん)してきたので、その場は解散(かいさん)となった。

 サクラが【大骨蜥蜴スカル・タイラント・リザード】との戦いから、エドガーを意識(いしき)していることに――少しずつ、少しずつ、気付き始めながら。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ