プロローグ【地下室に光る緑】
◇地下室に光る緑◇
突き付けられた銃口に、エドガーとサクラは両手を上げて降参する。
事の発端は、サクラが言い出した。
『エド君……“召喚”見せてよ』
と言う実に軽い発言がきっかけだ。
そして何故か、偶然発動してしまった【異世界召喚】によって“召喚”された人物に、銃口を向けられているのだ。
もう直ぐ夏に入ろうとしている【リフベイン聖王国】で。
エドガーが“召喚”した、四人目の異世界人。
<サクラがあんなこと言うからっ……>
<こんなことになるなんて誰も思わないじゃん普通っ!>
【心通話】でひそひそ話をするも、新たに“召喚”された異世界人にも聞こえているようで。
「当機に無断で、会話を許した覚えはありませんが……」
チャキっ!と、銃口をエドガーの後頭部に当て、威圧する異世界人の女性。
緑に輝く髪、光沢のあるレザーと思われる服装と、腕や脚に付けられた武装。
そして。その銀色の瞳は冷たく、まるで熱の通らない金属塊の様な重厚感を帯びている。
「――あ、あなたも異世界人なんでしょっ!?同意したのはあなたのはずよっ!どうし――ひぃっっ!!」
サクラが説得しようと、“召喚”される際の《謎の声》とのやり取りがあっただろうと言おうとしたのだが、新たな異世界人聞く耳持たずで銃をサクラに突き付ける。
「フリーズ。喋らないで……」
青ざめた顔で、コクコクと頷くサクラ。
「検索開始します……――……。完了。該当無し……この世界は、どの惑星にも当てはまりません。どうすればいいのでしょうか、マスター・ティーナ……指示を求めます」
一人ブツブツと話だし、機械音声のように棒読みで語る新たな異世界人は、周りを見渡し。
「――反応有りっ。上部!!」
右手に持った銃はエドガーとサクラに突き付けたまま、反対の左手に持った銃を天井に構える。
すると同時に、天井から落下してくる人影。
「ちっ!――隙は無いがいただくぞっ!!」
エドガー達と新たな異世界人の丁度間に、勢い良く落下しながら短刀を振るう【忍者】サクヤ。
「!――理解不能。センサーに反応していませんっ!!」
サクヤは落下と同時に、短刀で相手の銃を叩き落とし、新たな異世界人はものすごい勢いで後方に距離を取る。
脚に火の“魔道具”でもついているかのような勢いだ。
「【忍者】っ!!助かったよ~――ふぎゅっ!!」
「まだ安心できぬぞっ……!」
助かった喜びで飛びつこうとするサクラに、サクヤは手で制してサクラの顔を潰す。
「サクヤっ!」
「主殿っ……!あの不届き者はどういたしますか!?懲らしめてやりますかっ!?」
最近サクラの【スマホ】で見ている《時代劇》の台詞を言い、サクヤはご満悦だ。
「くぅぅ……あんたそれ言いたいだけでしょ!」
鼻頭を抑えて、サクラはツッコむ。
「――理解、不能……」
ドサリと、新たな異世界人は倒れた。
「え?あれっ……??」
「……【忍者】、あんた……」
「ち、違うぞ……わたしはまだ何もしていない」
突然倒れた新たな異世界人は。
可愛らしくクゥゥゥと、お腹を鳴らし。
――気を失った。
「「「は?」」」
緊張感が一気にとける中。
気を失う寸前に、新たな異世界人は言葉を発する。
「――当機は、認めない……お前が、当機のマスター……などとはっ……」
「――えっ?」
その言葉は、エドガーを完全否定する言葉だった。
地下室で、エドガーと四人目の異世界人が邂逅する。
そんな出来事まで。
――また、話は遡る。




