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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 2章《忍者VS女子高生》
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59話【離別】



離別(りべつ)


 リューネが馬車を飛び出して行った。エリウスはその後ろ姿を(なが)める。

 エリウスが渡した【裂傷の魔剣(アヴラベイル)】を手にし、走るリューネ。


『ただし……これを最後に、聖王国との関係を全て()ってもらう事になるわ……それでもいいのなら……行きなさい。これが、最後の選択よ?』


 そんなエリウスの恩情(おんじょう)にも、リューネは迷うことなく(うなず)き、エリウスに感謝を言って飛び出していったのだが。


「まさか一瞬(いっしゅん)(まよ)いも見せないとはね……」


 馬車の窓際(まどぎわ)頬杖(ほおづえ)をつき、喜ばしそうにするエリウス。

 向かいに座るレイブンは、そんなエリウスに。


皇女殿下(こうじょでんか)……よいのですかな?……ああ言う事を(ゆる)しては、いずれ計画(けいかく)支障(ししょう)が生じるのでは……?」


 エリウスはレイブンに向き合い。


「大丈夫ですわ、ヴァンガード(きょう)……あの方も、多少のズレは承知(しょうち)でしょう……それに……」


「……それに……?」


 エリウスは目を閉じて、何かを思い出しているように笑い。


「――いえ、憶測(おくそく)でものを言うのはよくありませんので、やめておくことにしますわ……」


「ふぅん……そうかい。皇女殿下(こうじょでんか)が言うなら、何も聞かない事にしましょう……」


 レイブンはこれ以上聞くことはなく会話は途切(とぎ)れた。


(あの方は、些細(ささい)な事は気にしないでしょう……それに。どうせ(わたくし)達の事も……(こま)(あつか)っているのでしょうし)


 祖国(そこく)で待つ依頼主は、自分達を利用している。

 それを前面に置きながらも、思うままに行動できない自分に不甲斐(ふがい)なさを覚えつつも。


(……さあリューネ……貴女(あなた)の最後の騎士道――(わたくし)に見せてみなさい)


 そう心の中で(つぶや)いて、エリウスは窓の外。

 エミリアとリューネを見たのだった。





 赤黒く(かがや)く刀身を()りかざし、リューネは【石魔獣(ガリュグス)】を駆逐(くちく)していく。


「はっ!せいっ!……はぁぁっ!!」


 既に十数体を倒して、あれだけ密集していた魔物(モンスター)の数が少なくなってきている事に安堵(あんど)する。


「うりゃぁぁぁぁぁっ!!」


 豪快(ごうかい)()け声で暴れ回るエミリアを見て、リューネはうっすらと笑う。


「フフっ……凄いわねっ、エミリア!」


 エミリアも、もう何体もの【石魔獣(ガリュグス)】を倒している。

 ぶん回す。と言う言い方がふさわしいようなエミリアの槍捌(やりさば)きに、【石魔獣(ガリュグス)】は次々と砂に帰り、その亡骸(なきがら)である砂からは、うっすらと炎が()らめきは消えていった。


「リューネだって!……どこで手に入れたとかは、(くわ)しくは聞かないよ。でも、助かってる!」


 視線で会話をし、お(たが)いの得物(えもの)を認める。

 そしてリューネの方を一瞬(いっしゅん)だけ振り向き、笑って答えたエミリア。


「ごめん……ありがとうエミリア」


 二人が並んで戦う事は無かった。

 きっと、今後もないはずだった。


 平和な聖王国で()らし、いつか来るべき時の為と言われて騎士学校に入り、何の為に訓練(くんれん)するのかと言うことを疑問視(ぎもんし)せず、ただ言われるままに生きてきたエミリア。

 王都出身では無く、親もいないながら、弟と二人で生活し、【聖騎士】に成るために奔走(ほんそう)してきたリューネ。


 エドガーと言う幼馴染の為に、国の価値観(かちかん)を変えようとするエミリア。

 エリウスと言う敵国の皇女(こうじょ)見出(みいだ)され、恩人である彼女のために全てを投げだそうとするリューネ。


 二人が、最初で最後。肩を並べて戦う。


「エミリア!もう少しよっ!」


「うんっ!一気に行くよ!!」


 左右に分かれ、剣で、槍で【石魔獣(ガリュグス)】を倒す二人。


「……お、終わった……?ふぅ~……」


 槍を()(はら)い、ヒュンッ!と風切(かざき)り音を鳴らして、エミリアは息を()く。

 まばらに、けれども数人の貴族らしき人物が二人に賛辞(さんじ)拍手(はくしゅ)(おく)っている。

 その中には、先程の庭師(にわし)もいた。


「お疲れ様……エミリア、貴女(あなた)がこんなところにいるなんて驚いたわ……てっきり、エドガー君達と一緒にいると思ってたから……」


 リューネも剣を(はら)い、戦闘が終結(しゅうけつ)したことを周りの人達に知らせる。


「……リューネこそ!無事でよかったよ、あの後からずっと探してたのに、騎学にも来ないから!」


「私は大丈夫、助けて頂いたの。それにさ、学校にはもう行けないよ……学校側も、きっと不審(ふしん)がってる……でしょ?」


「う、うん。それは……そうだけど。私も、何も聞かれてないし……」


「ならそういう事よ。私はもう戻れない、戻るつもりも無いの……」


「「……」」


 騎士学校にも寄宿舎(きしゅくしゃ)にも帰っていないリューネは、もう調べ上げられている筈だ。


「それに何日も無断欠席してるしね……当然よ。酷い事も……してるし」


 そう言い笑うリューネ。

 エミリアは何も言えなかった。それでもリューネは。


「エミリア。最後に貴女(あなた)と一緒に戦えてよかった……私は、私の出来る事をするから」


「――わ、私も……!私も頑張るっ!……エドの為に……私も出来る事をするよ、だからさ――」


 「たはは」と笑いながら、エミリアはリューネに手を差し出した。


「改めて……助けてくれてありがとう、リューネ」


「……」


 リューネはエミリアの手を(にぎ)り返さず、何かを悲しむように。絞り出すように言葉を発した。


「ごめんエミリア……その手は(にぎ)れない。私はもう、帰らないって決めたから」


 エミリアも何かを(さっ)していたのか、()ぐに手を引っ込め、リューネに背を向ける。


「うんっ……何となくそうなんだろうなって、感じてた……でも、大丈夫なんだよね?」


 リューネの弟やリューネ自身の今後の事。

 エミリアは心配して、肩越(かたご)しに問いかける。


「――ええ。弟、デュードも助かったわ。私は……それを助けてくれた方についていく」


 【リフベイン聖王国】の隣国、【魔導帝国レダニエス】。

 その皇女(こうじょ)、エリウス・シャルミリア・レダニエス殿下(でんか)

 リューネの恩人であり。だが、【召喚師】を狙う謎の人物の一人。


「その方は……エミリアの――エドガー君の敵かもしれない……でも、私は――」


「……分かった――行って、リューネ。私は何も知らない……でももし、もし――戦う時が来たら」


「「――負けないっ!」」


 二人は振り向き合い、拳を合わせて(わか)れを()げる。

 リューネを(のが)したら、ローザは何か言うだろうか。

 そんな考えも一瞬(いっしゅん)よぎったが、命の危機(きき)を救ってくれたリューネにそんなことが言えるほど、エミリアもオトナじゃなかった。


「……じゃあ……いくね」


「……うん」


 小さく手を()り、エミリアに(わか)れを()げるリューネ。

 そんな様子を見ていた貴族の女の子が。


「騎士さまっ!助けてくれて、ありがとうっ!!」


 と。それはエミリアに掛けた言葉かもしれないし、リューネに掛けた言葉かもしれない。

 (ねが)わくば、二人の少女に掛けられた言葉であればいいと。

 エミリアも、リューネも思った。




「さあ、まだ怪物(かいぶつ)全滅(ぜんめつ)したわけではありません!!バリケードを設置(せっち)し直して、隠れていましょう!」


 エミリアは集まる貴族に声を掛け、バリケードを直し始めた。


「……」


「――ん?」


「どうしたんだい?……嬢ちゃん」


「あ、いえ!……っ!――すみませんっ!!ここお願いしますっ!」


 エミリアは、逡巡(しゅんじゅん)しかけたが、何かに(みちび)かれるように。

 バリケードを超えて走り出した。





「はっ、はっ、はっ……」


 エミリアは走りながら、()()()()()()()()残声(ざんせい)(たよ)りに、耳を()ませながら探していた。


「――こっちだと思ったんだけどな」


 気のせいならばそれで構わないが、もし聞き間違(まちが)いで無ければ、エミリアは一生後悔(こうかい)するだろう。

 たとえエドガーが気にするなと言ったとしても、きっとエミリアの心に残り続ける。


「ここは……路地(ろじ)、裏?」


 【王城区(ブリリアント)】へ近い城壁(じょうへき)に、細い路地(ろじ)に当たる場所を見つける。


「まさか、こっちじゃないよね……」


 薄暗い路地(ろじ)裏に、どことなく不穏(ふおん)な感覚を持つも、槍を(にぎ)りしめる手をさらに強めて、エミリアは意を決して進んだ。


「よしっ!――行くぞぉ」


 (しり)すぼみながらも、一歩足を踏み入れた瞬間。

 ――明らかに変わる空気。


「――アレ?なんかさっきと全然……違う」


 ローザが()めた魔力が、この場に掛けられていた“()()()”による結界(・・)を解除したことを、魔力を持たないエミリアが知る(よし)もなく。


「――きゃぁぁっ!誰かっ!誰かぁぁ!!」


 耳を(つんざ)く悲鳴がエミリアの鼓膜(こまく)を刺激した。

 何かに疑問(ぎもん)(いだ)く暇もなく、エミリアは()けだしていた。


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