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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 2章《忍者VS女子高生》
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間話【暗闇に咲く花/暗闇を持つ花/巡り会う黒白】

誤字脱字、間違いを修正いたしました。

報告ありがとうございます。



暗闇(くらやみ)に咲く花◇


 小さな島国。――【ヒノモト】。

 その【ミカワノクニ】と言う場所で、わたし服部(はっとり) 咲夜(さくや)は生を受けた。


 庭の池で、(こい)(なが)める。

 長い黒髪を後ろ手で(むす)び、馬の尻尾のようにしている。

 その目は黒く、漆黒(しっこく)と言ってもいい。

 しかし左眼だけが、黒の中に光を持ち、まるで《宝石》のような存在感を持ち、異質(いしつ)際立(きわだ)たせている。


 わたしはこれから、(よめ)に出る。

 最後に、屋敷の中を見て回っていたのだが。


咲夜(さくや)よ、もういいな……」


「――はい、兄上」


 当主(とうしゅ)である兄に声を掛けられ、一人で屋敷(やしき)の外に出される。

 (よめ)に行く妹にこんな(あつか)いなのかと、他家から思われるかもしれないが、咲夜(さくや)の場合はこれが普通だった。


 幼き頃から、シノビとしての宿命(しゅくめい)(さだ)められた少女。

 (つか)える君主(くんしゅ)忠誠(ちゅうせい)(ちか)い、(あるじ)のために(やいば)となる。

 そんなシノビの人生を、本当は送りたかった。

 当主(とうしゅ)であった父上、服部(はっとり) 半蔵(はんぞう)は、娘のわたしを恐れていた。


 わたしには、この国でも稀有(けう)な“異能力”、【停動眼(ていどうがん)】なる力がある。

 対象(たいしょう)者の動きを一時的に遅くさせたり、究極(きゅうきょく)的には、心の臓を停止させる。


 ――通称【魔眼】。

 いつ自分が殺されるのかと、父上はこの力に(おび)え、自分の部屋に(こも)り出てこなくなった。

 そうして(すで)に早数年が()っていた。

 父上や兄弟姉妹に《()み子》として(あつか)われ。

 肩身の(せま)服部(はっとり)家の生活。それでも、(つか)える君主(くんしゅ)を得るために|努力してきたが、それも無く終わりを告げる。

 そして今日、半蔵(はんぞう)の名を()いだ長兄が、わたしを徳川(とくがわ)側室(そくしつ)に出すと言い放ち、わたしは即刻(そっこく)屋敷(やしき)から出されたのだ。


 何の歴史もなく、わたしのシノビとしての人生は終わったかと思われた。

 わたしは、徳川(とくがわ)家に向かう道中で、奇妙(きみょう)現象(げんしょう)()う。


 左眼が不意に(うず)きだし、【停動眼(ていどうがん)】にとある光景が映し出された。

 わたしはその人物に、目を奪われたのだ。

 赤毛の女性と戦う、少年。


 炎に焼かれそうになるのを、何度も剣で辛うじて防ぎ、命を(つな)ぐ。

 正直言って、全然格好(かっこう)よくはない。


 ――ただ。

 幼い頃から、自分を(あきら)めていた咲夜(さくや)には。

 無様(ぶざま)に、必死に(あらが)うこの少年が、とても魅力(みりょく)的に見えていた。

 そして、少年が反撃の火遁(かとん)を放ち、戦いが終わる。

 その後、少年は黒く光る陣の前に立ち、何かを(つぶや)く。

 わたしはそれを、自分に言われた気がして、いつの間にか返事をしていた。


「――か、構わないっ!わたしを、ここから連れ出してっ!!」


 もしこの少年が、わたしの(つか)えるべき君主(くんしゅ)ならば。

 この身を投げ打ってでも――彼を守ると(ちか)おう。


「ナンジノナヲノベヨ」


 誰もいないはずの空間から聞こえる、不思議な声にわたしは。


服部(はっとり) 咲夜(さくや)!シノビ……いや、くノ一だっ!!」


 (おさな)きわたしが(あこが)れた、女忍者。くノ一、響きが好きで、ずっとなりたかった。

 黒い影に(おお)われていくわたしの身体。

 どんどん意識が(うす)れて剝離(はくり)していく感覚に、ここではない場所へ行けるのだと、期待感が(ふく)らむ。


 わたし、服部(はっとり) 咲夜(さくや)は、こうして【ヒノモト】を去った。

 何処(どこ)に行くかなんて二の次で、ただ、只々、()くすべき少年を見つけられた事が嬉しかったのだ。




暗闇(くらやみ)を持つ花◇


 小さな島国。――【日本】。

 その【愛知県】と言う場所で、あたし、服部(はっとり) (さくら)は産まれた。


 子供の時から優秀で、欠点の無い子供。

 親に()められたくて、ずっといい子を演じ、幼稚園から聞き分けのいい子供だった。


 小学生では、六年間無遅刻無欠席。

 中学生では、学校の優秀生として表彰(ひょうしょう)されたりもした。

 それは高校生になっても同じで、あたしは優等生を(いつわ)っていた。

 二年生になって、今年も変わらずに優等生を演じるのかと思った。

 ――そんな時。


『A組の服部(はっとり)さん……援交してるらしいよ……』


 あたしに嫉妬(しっと)した子たちが、あたしの変な(うわさ)を流し始めたのは、学年トップの成績が発表された次の日の事だった。


『えー、マジで?学年一位も、やることやってんのねWW』


結構(けっこう)ヤリまくってるって……誰かが言ってたよWW』


 そんな陰口(かげぐち)が数日続き、あたしは指導室に呼び出された。

 生活指導員の先生が(うわさ)を聞いて呼び出して来たらしい。


服部(はっとり)……お前の(うわさ)は聞いてるぞ……大丈夫。安心しろ、先生に(まか)せておけっ!!』


 体育の篠崎(しのざき)。女子生徒を食い物にする(うわさ)がある、最低な男だ。

 この男に目をつけられてから、あたしは、自分を(だま)せなくなった。


『なあ服部(はっとり)……先生な、考えたんだよ……今のままじゃ、お前が学校にこれなくなる……そうだろ?』


 あたしは「はぁ……」と答えるしかなかった。

 こんなバカみたいな事態(じたい)(だま)ってれば済む。

 そう考えていたのは、確かに甘かったのかもしれない。

 ある日、この男にまた呼び出されて。


『だから、な?服部(はっとり)……先生は、お前の(ため)なら何でもするぞ……だから、分かってるよなぁ』


 鼻息荒く、あたしに近付く篠崎(しのざき)

 左手で強く肩を(つか)まれて、右手でシャツのボタンをはずそうとする。


 随分(ずいぶん)と手馴れている。

 テキパキと三つボタンが開き、白い下着が見える。


『……へぇ、援交してる割には、清楚(せいそ)なの着けてるじゃないか……てっきり黒とか赤とか派手(はで)なのを付けてると思ったんだがな』


 その言葉に、あたしはキレた。

 ――ドグシャ!!


『――ぐぁぁあっん、ぐぅぅ!!な、何をぉぉ』


 大股で椅子(いす)に座り、興奮する篠崎(しのざき)股間(こかん)

 アレ(・・)を、思いっ切りぶっ叩いてやった。


 椅子(いす)からはみ出たソレ(・・)は、(きたな)らしいと分かりながらも、弱点だともわかっていた、だから、右手を思いっ切り()り上げて叩きつけた。


 (あわ)を吹いて倒れる篠崎(しのざき)を見ずもせずに、あたしは急いで指導室から逃げた。

 我慢すれば()ぐに済む。そう考えて、クソみたいな男に好き放題されるのを受け入れようとした。


 不思議と、涙が(あふ)れて止まらなかった。

 最初から、決めつけであたしを狙っていたんだろう。

 『任せろ』。だなんて言われてからも、状況(じょうきょう)悪化(あっか)していく一方だったし。


 身体が目当てであたしを助けるフリをしていたんだって、心の中では分かっていた。

 でも怖かった。冷静でも、優秀でも、演技がうまくても、あたしは一人の女の子だった。

 制服を乱したまま校舎(こうしゃ)を走り、家に帰る。


 教室に置いたままの(かばん)を取りに行く余裕(よゆう)なんて一切無かった。

 それにきっと明日には、(うわさ)に尾ひれがついて、独り歩きしているに違いない。

 帰宅して、あたしは暗い自分の部屋でおでこに()れる。

 別に熱があるわけじゃない。


 うっすらと、前髪に隠れて見えないが傷がある。

 子供の頃に、人形のような自分を気味悪(きみわる)がった母親から付けられた。

 ――傷だ。


『……なんであんたは子供らしくできないのよっ!!』


 いい子にしようと、我儘(わがまま)も言わず、駄々(だだ)()ねない。

 まさしく人形のような子供。周囲の人から見られた評価だ。


 母は周りからの評価を過度に心配する(くせ)があった。

 だからこそいい子でいようと心掛けて、遊びも甘えもしなかった。

 それが、母には苦痛だったらしい。

 普通の家族。遊んで、喧嘩(けんか)して、仲直りする、そんな普通の家族。

 あたしには、それが出来なかった。


 ふと、(ひたい)の傷に触れた瞬間、フラッシュバックのように見える映像(えいぞう)

 二人の女が、一人の男を取り合っている光景だった。


「な、なにこれ、バカらし……疲れてるんだ、きっと」


 思わず出た言葉だったが、もう一度(ひたい)に触れる。

 赤い髪の女性が茶髪の少年に抱きつき、頭を()でている。

 もう一人、金髪の少女はそれに反発して、赤い髪の女性を引き()がそうとするも、頭を(おさ)えられて手が出ない。

 一方で少年はというと、抱きつかれて赤くなったり、金髪の少女をみて青ざめたりと表情が忙しい。


「……ふふっ。なんなの?」


 ふと、自分が笑っている事に気が付き、ショックを受ける。

 これだけ長い年月、いい子の皮をかぶり続けていたのに、こんなくだらない事に笑っている。


「なんで……」


 そして、少年に近付く二つの影。

 ――あれは、あたしだ。


 そこにいるあたしは笑顔で彼女達の輪に入り、赤い髪の女性と金髪の少女、そして茶髪の少年に「これからよろしくっ」と声をかけた。


 気になったのは――あたしが()()いたこと。


「――ちょっ!なんであたしが!?二人!?」


 髪型は違えど、顔は同じ。

 ポニーテールのもう一人のあたしは、赤髪の女性に対抗(たいこう)するように少年に抱きつき、身体を押し付ける。


「――なっ、何してんのよっ!?」


 あたしは驚いて、立ち上がって叫ぶ。

 ――そして。


「ナンジノナヲノべヨ」


 突然聞こえる声に、あたしは反射的に怒鳴(どな)る。


「はぁ!?名前……?誰よっ、どこにいるのっ!?」


 機械のような声音(こわね)に、あたしは(おく)せず突っかかる。


「ナヲノべヨ」


 イラっとしたあたしは、つい。


(さくら)よっ!!文句あんのっ!?」


 そして、真っ白い光に包まれて――部屋から居なくなった。




(めぐ)り会う黒白(こくびゃく)


「――な、何っ?何なのよぉ!誰よさっきの声……出てこーいっ!!」


 (さくら)は謎の空間でフワフワと浮遊(ふゆう)し、誰かも知れない言葉の(ぬし)にキレ散らかしていた。

 そんな(さくら)に、背後から声がかかる。


「――そんなはしたない声を出すものではないぞ。そなたも【ヒノモト】の女子(おなご)であろう?」


「――っ!だ、誰よっ!?」


 ()り向いた先。目の前を浮遊(ふゆう)するもう一人の少女。

 その顔は少し(おさない)いが、どう見ても(さくら)と同じ、髪型が違うだけで全く同じだ、しかし唯一左眼が少し違う(・・・・・・・)


「……はぁっ!?」

「――な、なんとっ!?」


 同じ顔の少女が、異空間で出会った。


「コレハ……ドウシタモノカ……」


 機械的な音声に、不思議と(あせ)りの色が見られた。


「なんだお主!何故(なぜ)私と同じ顔をしているのだ……!」

「――こ、こっちのセリフなんだけど……!」


 二人は、プカプカと浮かびながら口喧嘩(くちげんか)を始めた。


「第一あんた!さっきのアレ何なのよ!あたしの身体で。な、なに男の子に抱き付いてるのよっ!?」

「はぁ?――な、何のことだっ!?身に覚えのないことを()べるなっ!」


 二人の言い合いに、謎の声は強制介入を始める。


「……!?」

「……!?」


 二人は突然身体が動かなくなり、声も出ない。

 勝手に身体を止められて、二人は謎の声に話しかけられる。


「マズハシャザイシヨウ……マサカ、オナジタマシイガベツベツノセカイニアルトハ」


(何なのよっ……この声、マジック!?)

(――なんと面妖(めんよう)な……妖術(ようじゅつ)かっ!?)


 言葉は(ちが)えど、似たようなニュアンスを心の中で(つぶや)く二人。


「キミタチハ、センタクデキル……ココロノナカデカマワナイ、ナニガホシイカセンタクスルノダ、チナミニ、ゼンカイノジンブツハ、【ココウナルチカラ】ヲセンタクシタ」


 有無を言わさずに淡々と進める声。


(なによ……選択?前回?)

(なんなのだ……選択……とな?)


 まずはステータスを決められた、勝手に。

 これはランダム要素が強く、元の世界の身体能力が反映されるらしく、自分では決められないとのこと。

 選択できるのは、あくまでも能力(・・)だと言う。


(ステータスがランダムって……メチャクチャ弱い可能性もあるって事?)


「アンズルナ……コレカラソナタラガムカウセカイ【リバース】ハ、トテモゼイジャクナセカイダ……タショウヨワクテモ、セイカツニコマルコトハナイ」


「弱いって言った!?」


 謎の声が言うには、あたし達がこれから行くらしい世界、【リバース】は、《魔法》や“異能力”が存在する、まさしくファンタジーの世界らしい。

 どんなゲームだと言いたくなったが、ちらりと横を見たら、同じ顏をしたポニテ女が、爛々(らんらん)と目を(かがや)かせていた。


(これって、異世界転生ってやつ……?あたし、死んだの?……いや、でも――でも)

(なんと素晴らしいっ!《魔法》や“異能力”だと……た、た、楽しみだ――だが)


「サァ、センタクセヨ!」


 二人は、(たが)いに(にら)み合い。同じくこう願う。


((――この女に……負けない力をっ!!))


 そうして、同じ(たましい)を持った別世界の二人は、(エドガー)のいる異世界に旅立っていった。


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