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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第2部【動乱】篇 3章《聖槍、天高く》
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142話【進軍】



◇進軍◇


 エミリアたちが【聖騎士団南方(とりで)】に到着(とうちゃく)して、二日が()った。

 現在早朝、エミリアはあくびをかみ殺して、(とりで)の上部にて監視(かんし)を行っていた。


「……あれが、矢も投石も(はじ)(とりで)……【レイオン(とりで)】、か」


 コーヒーを飲みながら、(かすみ)が掛かる敵国の(とりで)を注意深く観察(かんさつ)する。

 エミリアは思う所があるが、それを責任者であるヴィクトーには言えずにいる。


「……《魔法(・・)》なのかな……やっぱりあれって」


 うっすらと、エミリアの空色の(ひとみ)(かがや)く。

 しかし、ここにはエミリアが一人だ。誰も気付くことはない。


 そしてその反応は、《魔法》の発動の兆候(ちょうこう)によく似ていた。


「……なんだろう……目がチカチカする」


 グシグシと、両手で目を(こす)り再確認。


「あれ……なんともない?」


 チカチカは(おさ)まり、(ひとみ)(かがや)きもなくなっていた。


「うーん……」


 不思議(ふしぎ)なこの感覚を、エミリアは緊張(きんちょう)のせいだと言い聞かせて、交代の時間まで監視(かんし)を続けた。





 時間は進んで、エミリアは休憩中。

 【従騎士(じゅうきし)】リエレーネと共に、昼食を取っていた。


「あむ。美味しいですね……この野菜」


「そうだね。これも【ホルセト村】から買ったものだってさ、【ルウタール王国】は森林地帯だし……野菜の栽培(さいばい)にも(てき)しているんだろうね」


 しかも熱帯雨林であり、雨も多い。

 もぐもぐしながら、エミリアはこの隣国に関心を持つ。


「野菜もそうだけど、お肉もお魚も……全部新鮮で、食事が進んじゃうよ……」


 【リフベイン聖王国】では、あまり魚は(しょく)されない。

 そもそも()れる水源がない。

 【レド川】はあるが、生活用水として使われるその川では、魚は(たま)にしか()れないと言う理由があった。


「王都の貴族街に流れる川は、お城から流れるものですから、生き物が居ませんしね……あむ」


 レミーユも最近は色々と勉強をして、【従騎士(じゅうきし)】としてエミリアのサポートを頑張っていた。


「そうね。王都でもお魚食べれればいいのに……」


 どうやらエミリアは魚が好きらしい。


「――エミリア!!」


「ふぐっ!」


 突然背後から掛けられた言葉に、エミリアは(のど)()まらせる。

 「むぐぐぅ」と顔を青くするエミリアに、レミーユが水を渡し。

 声を掛けた人物。エミリアの先輩(せんぱい)、ノエルディア・ハルオエンデは。


「何してんのよ……ほら行くわよ!!ヴィクトー(おっさん)が呼んでる」


「……ゲホっ!ゲホ……ちょ、いきなり何なんですかノエル先輩(せんぱい)!ちょっと~」


 ノエルディアは無理矢理エミリアの手を(つか)んで、初日に行ったヴィクトーの部屋に連れていくのだった。





「……」


 エミリアとノエルディアが部屋に入ると、監視(かんし)の騎士がヴィクトーに何か報告をしていた。


「……」

「……」


「ご苦労だった。引き続き(たの)むぞ」


「はっ!!」


 騎士は敬礼(けいれい)をし、部屋を出る。

 出ていく(さい)にエミリアとノエルディアにも敬礼(けいれい)をしたので、二人も礼を返した。

 そしてヴィクトーは。


「待たせたな。では、早速本題だ……」


「「はい」」


 この場には、六人全員の【聖騎士】がいる。

 そして責任者であるヴィクトーが話があると言うのだ。しかも騎士の報告もある。

 エミリアの中でも、答えは分かっていた。


「……先程の騎士は、監視(かんし)任務(にんむ)を行っていた騎士だが、その報告を聞いていた」


「……来ましたか」


 オルドリンが腕組みしながら考え、言う。


「その通りだ。ルウタール軍が進軍して来た。ここに着くまでは(およ)一時(いっとき)(一時間)、数は百だそうだ……」


「百か、この前よりは少ないっすね……」


 ヘイズが頭の上で手を組んで、お気楽そうに言う。


「そうだね……でも前回は、それが三回続いたよ」


 ロットが答え、オルドリンも。


「ええ。それで怪我人(けがにん)が増えたから、私が王都に知らせに行ったのよ。まさか、その後に猿が来るとは思わなかったけど……」


 猿とは、【聖騎士】ギルオーダ・スコスバーの事だ。

 背が低くすばしっこい彼は、騎士団内でそう呼ばれている。


「オレが命じたのだ。援軍要請(えんぐんようせい)をしろとな……まさか【聖騎士】が二人も来るとは思わなかったが」


 オルドリンを(のぞ)く、エミリアとノエルディア、そして数人の騎士が、正式な援軍だ。

 【従騎士(じゅうきし)】の三人は、若いという事も考えて戦闘には参加させない方針だ。


「皆、準備を開始してくれ……それからエミリア・ロヴァルト」


「……は、はいっ!!」


 大きな声の、緊張(きんちょう)した返事だ。

 ヴィクトーはそれを見て、短いため息を()くと。


「お前も出撃はしてもらうが、初陣(ういじん)なのだ……四人の戦いをよく見ておけ、いいな?」


「……は、はい……了解、しました」


 まるで、戦力外と言われた気がしたが。

 ()ぐにオルドリンが付け加えてくれる。


「大丈夫よエミリア。まずは戦場に()れる事……私たちは、人を殺す(・・・・)のだから、貴女(あなた)に死なれたら……ロヴァルト公に合わせる顔が無くなるでしょ?だから、過保護にしてるのよ……この人は」


「おいスファイリーズ。余計(よけい)な事を言うなっ。勉強をしてもらいたいと言う、先輩心(せんぱいごころ)だろうが……それに、この二日の模擬戦(もぎせん)で、エミリア・ロヴァルトの実力は把握(はあく)している。【ルウタール王国】の兵たちにやられるほど弱くはない」


「――!」


 (こぶし)をギュッと(にぎ)る。

 嬉しかった。父と肩を並べた偉大(いだい)な【聖騎士】に、認められていたと言う事実が。


「だから、スファイリーズが言ったように……まずは()れろ。本物の戦場と言うものを、その身で感じ……覚え、そして国の為に……戦えっ。いいな?」


「――はいっ!!」


 気合を入れられたエミリア。

 もう、不安そうな顔はない。

 戦う事に、土壇場(どたんば)で迷う事も無いだろう。


「よし、では全員準備にかかれっ!!解散っ!!」


 ヴィクトーの大きな号令に、【聖騎士】一同は胸に手を当てて、高らかに(さけ)ぶ。


「「「「「了解っ!!」」」」」


 そうして、【聖騎士】エミリア・ロヴァルトの――初陣(ういじん)が始まる。


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