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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第2部【動乱】篇 3章《聖槍、天高く》
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140話【想いは届く1】



◇想いは届く1◇


 「へっくしゅん!!」と、盛大(せいだい)なクシャミをする少女がいた。

 場所は南方、【ルウタール王国】との国境付近(こっきょうふきん)、聖王国の南方(とりで)だ。


 用意された自室で待機しているエミリア・ロヴァルトは、今まさに自分の為の“召喚”が行われた事など(つゆ)とも知らず、数日掛けて辿(たど)り着いたこの【聖騎士団南方砦】を案内された後、責任者である人物と対面する為、こうして待機している。


「だ、大丈夫ですか?エミリア様」


「あ~平気平気。だれか(うわさ)してるのかもね」


「……何ですかそれ……」


 サクラに聞いたクシャミの逸話(いつわ)を言うと、レミーユにキョトンとされた。

 この世界に、クシャミをすると誰かが(うわさ)しているなどという話はないのだ。


「あはは……それよりも、【聖騎士】と【従騎士(じゅうきし)】が一組で同室って、レミーユは気を使っちゃって嫌じゃない?変えて貰えるか聞いてみようか?」


 エミリアなりにレミーユに配慮(はいりょ)した一言だが。

 レミーユは立ち上がって否定する。


「そ、そんなことありません!!誠心誠意(せいしんせいい)、お世話させていただきます!!おはようからおやすみまで!」


「……そ、そう?」


 鼻息を荒くするレミーユに、若干(じゃっかん)引いたエミリア。

 するとそんなタイミングで、ドアがノックされる。


「失礼します!【従騎士(じゅうきし)】ゼレン・ホロートです……ここの責任者、【聖騎士】ヴィクトー・マルドゥッガ様のご準備が終わりました」


 オルドリン・スファイリーズの【従騎士(じゅうきし)】ゼレンが、エミリアを呼びに来た。

 エミリアはスッと立ち上がり。


「了解。ご苦労様、ゼレン」


 一つ下の少年騎士に、微笑(ほほえ)みかけた。


「……あ、はい!こ、こちらです!」


 一瞬、エミリアの笑顔にボーっとしたゼレンだったが、エミリアの隣から発せられた負のオーラにゾッとして気を取り直す。


「それじゃあ、行ってくるね。荷物(にもつ)整理(せいり)よろしく、レミーユ」


「うぅ~。分かりました……」


 呼ばれているのは【聖騎士】だけだ。

 ゼレンはあくまでも、オルドリンの補佐で動いているだけなので、レミーユやリエレーネはお留守番と言う訳だ。

 名残(なごり)()しそうに、エミリアの背中を見届けたレミーユだった。





 砦内(とりでない)の中心部、管理者室。

 そこに、合流したエミリアとノエルディアが。

 ゼレンは二人を案内すると、一礼して戻って行った。


「き、緊張しますね……」


「そう?ヴィクトーの旦那(だんな)は顔は怖いけど、優しいオッサンよ?」


「……知ってますけど、言い()ぎでは?」


 ヴィクトー・マルドゥッガは、よく騎士学校にも顔を出してくれていた。

 それ以外にも、【元・聖騎士】であるエミリアの父、アーノルド・ロヴァルトと面識(めんしき)がある。

 エミリアも、何度か顔を合わせた事があった。

 それでも、やはり緊張はするという事なのだが、ノエルディアは気楽すぎないかと。


「んじゃ、挨拶(あいさつ)しときますかねー」


 ノエルディアは悪びれる事もなく、ドアをノックする。

 ()ぐに返事は来て「入りなさい」と、オルドリンの声だ。


「「失礼します」」


 二人はドアを開き、入室。

 質素(しっそ)な空間に、机が一台。

 窓から差し込む光が()らす聖騎士勲章(くんしょう)(まぶ)しく、二人は一瞬緊張(きんちょう)をするも。


「――ノエルディア・ハルオエンデ、増援(ぞうえん)として参りました!」


 胸に手を当てて、ノエルディアが敬礼(けいれい)をする。

 エミリアも続いて。


「同じく増援(ぞうえん)として参りました。エミリア・ロヴァルトです……よろしくお願いします!」


 真顔で敬礼(けいれい)する二人に、椅子(いす)に座る人物……ではなく、隣にいた女性。

 先に来ていたオルドリンが優し気に言う。


「あら、そんなに気を張らなくてもいいのよ?」


 入口までやって来て、オルドリンは「楽にして?」と言う。

 その言葉に、この(とりで)の責任者である男が。


「おいおいスファイリーズ……それを言うのは、オレの役目だろう?」


「うふふ……そうでしたね」


 椅子(いす)から立ち上がり、二人の前に立つ。

 背の低いエミリアを完全に(おお)い隠す、大きな体躯(たいく)

 (ととの)えられ、もみあげと(つな)がった顎髭(あごひげ)

 (かた)い筋肉はゴツゴツとし、腕の筋肉など、エミリアの顔ほどある。


「よく来たな。ハルオエンデ……それに、エミリア・ロヴァルト。オレがここの責任者を任されている、ヴィクトー・マルドゥッガだ」


 ヴィクトーは、エミリアに手を差し出す。

 ノエルディアとは当然顔なじみなので、エミリアに、という事だろう。


「――はっ!マルドゥッガ殿も、ご壮健(そうけん)そうでなによりですっ」


「――お、お久しぶりです……マルドゥッガ殿……」


 エミリアが差し出された手を取ると、ギュッと力を()められる。

 痛くはなく、感慨(かんがい)さを我慢(がまん)しているような、そんな(りき)みだった。


「ああ。本当に久しぶりだ……随分(ずいぶん)大きく……は、なってないようだが……」


 上から下までエミリアを見て、言い直すヴィクトー。正直者だった。


「は、ははは……すみません……」


「マルドゥッガ殿とエミリアは、お知り合いのようね」


 オルドリンが言う。


「ああ。ロヴァルト伯……おっと、今は公だったな。失敬(しっけい)


「い、いえ……私も間違えるので……」


 エミリアの父、アーノルド・ロヴァルト公爵は、【聖騎士】二人を輩出した功績を称えられて、伯爵


「はははっ!面白い事を言う!」


 事実である。


「しかし、ロヴァルト家から二人も【聖騎士】が輩出(はいしゅつ)されるとはな……お父上も鼻が高いだろう」


「ありがとうございます。父も、マルドゥッガ殿によろしくと(おっしゃ)っていました」


「そうか。オレが以前お会いしたのも随分(ずいぶん)と前だ……あの時は――」


「――ほらほら、マルドゥッガ殿もエミリアも、積もる話は席に着いてからにしましょう?あの二人(・・・)も、待ちくたびれてますよ?」


「おお、それはすまんな」


「すみません……」


 オルドリンに(さえぎ)られ、ヴィクトーは言葉を途切(とぎ)れさせて移動する。

 エミリアとノエルディアも、後に続いてテーブルが配置された場所に向かうと、そこにはオルドリンがあの二人と言った、【聖騎士】二人が座っていた。

 ヴィクトーは、その二人を。


「紹介しよう。ハルオエンデは知っているだろうが、右がロット・グン・ファーバ……左がヘイゲラットレイアーズ・ラドアーザスだ」


 待ちくたびれたように、紹介された二人も立ち上がり。

 右の男、ロット・グン・ファーバが先に。


「初めまして、ロヴァルト(じょう)。僕はロット・グン・ファーバだよ、よろしくね」


 ロットは右手を差し出し、エミリアは握手(あくしゅ)をする。


「よ、よろしくお願いします!」


 続いて左の男。


「やあ、俺はヘイゲラットレイアーズ・ラドアーザス……名前が長くて悪いから、ヘイズでいいぜ」


 エミリアも感じた「名前長っ!」と言う反応を見越(みこ)してか、自分から愛称(あいしょう)で呼んでくれと言うヘイズ。

 ヘイズもエミリアと握手(あくしゅ)をし、自己紹介は終わったかに思えたのだが。


「へぇ……キミ可愛いね。この後お茶でもどうだい?」


「は、はぁ……」


 この男、なんと初対面でナンパをして来た。

 しかも、責任者でもあるヴィクトーの目の前で。

 エミリアは苦笑いしつつも、無礼(ぶれい)に当たらない様に心配りをするが。


「――エミリア。このヘイズっていう先輩(せんぱい)、先輩(せんぱい)と思わなくていいわ!誰にでもこう言う事を言う、クズ野郎だか……らっ!!」


「――いでっ……おいおい、痛ぇじゃんかノエルよー」


 ヘイズの手を(はた)き落とした人物は、ノエルディアだ。

 目に見えるほど嫌そうな顔をして、ヘイズに(さげす)みの目を向ける。


「うるっさい!!エミリアに手ぇ出したら、私があんたの股間(それ)を射抜くからねっ!!」


「お~こわ。分かったよ……つまんねぇな……一緒に寝た仲だろぉ?」


 ブチッ――!!と音が鳴った気がした。


「――てめぇこの軽薄(けいはく)男っ!テントの中で一緒になっただけでしょーが!!誤解を招くような言い方すんじゃないわよっ!!」


 置いてけぼりのエミリアは、目を見開いてノエルディアの形相(ぎょうそう)を見る。

 しかし他の【聖騎士】たちは、我関(われかん)せずで。

 まるでいつもの光景(こうけい)だと言わんばかりだった。


「さぁ。ロヴァルト(じょう)……こちらへどうぞ?」


「そうね、ほらエミリア、座りましょう」


「そうしてくれ。アレは放っておいていい」


「え……えぇ~~~~」


 ロット、オルドリン、ヴィクトーが総じてそう言うものだから、エミリアはそうせざるを得ない。

 一方でヘイズは部屋から逃げる様に出ていき、ノエルディアは怒りのままに追いかけて行ったのだった。


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