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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第2部【動乱】篇 3章《聖槍、天高く》
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92話【緊急招集】



緊急招集きんきゅうしょうしゅう


 深夜の【リフベイン城】。

 周囲の(あわ)ただしい雰囲気(ふんいき)に、第一王女セルエリスは寝所(しんじょ)で目を覚ます。

 自然とベッドから起き上がり、その時を待った。

 すると、コンコンとノックがされ、返事も待たずに扉は開けられた。


「――失礼いたします。セルエリス殿下(でんか)


 セルエリスの騎士、ヴェイン・カトラシアスだ。

 この寝所(しんじょ)に入る事を許可(きょか)されたのは、このヴェインと数人の人間だけ。

 たまに関係なしに(ローマリア)が入ってくるが、それ以外は親王(しんおう)ですら入る事が出来ない部屋だ。

 しかも、こんな深夜にやってくることなどまずない。つまり。


「――着替えを」


「はい。殿下(でんか)


 緊急事態(きんきゅうじたい)なのは確実だ。

 だからセルエリスも何も言わずに、ヴェインに着替えを持ってこさせた。


 着替えながら、事の成り行きを説明される。

 事態(じたい)は、【聖騎士】ギルオーダ・スコスバーの帰還(きかん)主立(おもだ)っていた。

 先程、連絡もなしに城に帰還(きかん)したギルオーダは、セルエリス殿下(でんか)に会わせろと(もう)し立てたらしい。

 先日、【聖騎士】オルドリンが帰還(きかん)した(さい)は、帰還報告(きかんほうこく)書状(しょじょう)がまず届いた。

 その経緯(けいい)を完全無視しての帰還(きかん)

 余程の事か、それともくだらない事柄(ことがら)か。

 会ってみない事には何もわからないが、前回の書状(しょじょう)(しる)したのが、ギルオーダ・スコスバーだという事を知っている手前、不安しかなかった。


「スィーティアは?」


「第二王女殿下(でんか)は、【聖騎士】アルベール・ロヴァルトと共に【貴族街第一区画(リ・パール)】に視察(しさつ)に出ており、そのまま一泊(いっぱく)のご予定でしたが……」


「……ああ、そうだった、そうだったわね……」


 寝惚(ねぼ)けていたと、セルエリスは頭を振るって時間の無駄(むだ)後悔(こうかい)する。


「なら、ローマリアを起こしなさい。それと、今集められる【聖騎士】は?」


「ローマリア殿下(でんか)の騎士が二人。ノエルディア・ハルオエンデとエミリア・ロヴァルトが」


「――クルストルとオーデインは?」


「お二人ともご自分の屋敷(やしき)に……お二方とも公爵閣下(かっか)でありますので、貴族会議のご準備でしょう」


「そうか……仕方がないわね。ハルオエンデとロヴァルトを招集(しょうしゅう)して」


「はっ」


 そうしてセルエリスの準備は(ととの)い、謁見(えっけん)の間にて、【聖騎士】ギルオーダの報告がされる。





 ローマリアは、寝惚(ねぼ)(まなこ)をこすりながら、無理矢理起こされた事に対して不機嫌(ふきげん)対応(たいおう)していた。

 ムスッと(ほほ)(ふく)らまし、半眼(はんがん)で鏡に(うつ)る自分を(にら)む。


「ローマリア様、お顔お顔!」

「動かないでください~」

「だらしのない……」


 ローマリアの支度(したく)をしているのは、エミリアとレミーユ、そしてローザだった。

 ノエルディアは自分の支度(したく)で手間取っていて、絶賛(ぜっさん)リエレーネに手伝って貰っている最中(さなか)だ。

 ならば何故(なぜ)、同じ【聖騎士】のエミリアがそうしているのかと言うと。

 実はエミリア、意外と寝起きがよかった。

 いきなり起きろと叩き起こされても、自然と対応出来るタイプだったらしい。

 そして【従騎士(じゅうきし)】のレミーユとリエレーネは夜勤(やきん)で起きていて、ローザもまだ寝ていなかった。


「うぅ……眠い。いったい何があったというの?」


 寝惚(ねぼ)(まなこ)はまだ取れないものの、事態(じたい)が急な事は理解しているらしい。


「【聖騎士】ギルオーダ様がご帰還(きかん)したそうです。それでローマリア様と、ノエル先輩(せんぱい)と私が招集(しょうしゅう)されました」


随分(ずいぶん)急な事ね……スィーティア王女は?」


 ローザの口から第二王女の名前が出た事に少し(おどろ)いたエミリアだったが、ローザの表情(かお)は非常に優しく(おだ)やかだった。

 それに安堵(あんど)して、理由を述べる。


「スィーティア様は視察(しさつ)に出てるよ」


「貴族街の視察(しさつ)ですから、多分一泊(いっぱく)してくるんじゃないですか?」


 エミリアの言葉にレミーユが続けて言う。


「なるほど……それでエミリアとメイド騎士が……」


 ローザの中で、ノエルディアの印象(いんしょう)はメイド服しかない。


「あやつ……まさかこの場面でメイド服を着て来たりはしないだろうな……」


 ローマリアも、嫌な予感(よかん)がして完全に目が覚めたようだ。


「リエちゃ……【従騎士(じゅうきし)】リエレーネがついていますから、大丈夫だと思いますけど。た、多分」


 言葉の端々(はしばし)から、本当は不安だというのが見え見えのエミリアだった。

 それは多分、本人が一番分かっているかもしれないが。


「髪はいいわね。ドレスも準備は出来ているわよ」


「ありがとローザ。レミーユ、お願い」


「は、はい!殿下(でんか)、失礼いたします」


「うむ」


 そう言ってローマリアは立ち上がり、腕を広げる。

 三人がかりで寝間着(ねまぎ)()がし、一気に着せていく。

 流石(さすが)王女様のローザが手馴(てな)れているおかげで、すんなりと準備は終わる。

 すると。


「――お待たせいたしました!ローマリア様!」


 扉が開かれると、そこにはメイド服のノエルディアがいた。


「「「「……」」」」


「あ、あれ……?」


 完全に白い目と言うものを理解した。

 自分の場違い感を認識(にんしき)できないノエルディアに、ローマリアが。


「――騎士正装で来い!!」


「す、すみませぇぇぇぇぇん!!」


 どたばたと、ノエルディアは戻っていく。

 後ろで「ほらやっぱり!だから言ったじゃないですか~!」と、リエレーネの(なげ)きが聞こえた。


「まったく……本当に戦闘以外ポンコツだな」


 ふんす!とローマリアは腰に手を当てて憤慨(ふんがい)する。

 予測(よそく)はしたとはいえ、まさかそのまま来るとは思いもしなかったらしい。


全権(ぜんけん)をリエレーネに渡した方がよさそうね」


「……ノ、ノエル先輩(せんぱい)……」


苦労(くろう)しているんですね、リエレーネさん。同じ【従騎士(じゅうきし)】として尊敬(そんけい)します」


 関係ない話だが、今後何か二人きりで作業(さぎょう)などをする場合、ノエルディアの意見が採用(さいよう)されることは無くなったのだった。





 ローマリアとエミリア、そして着替えたノエルディアが謁見(えっけん)の間に(おとず)れると、(すで)帰還(きかん)したギルオーダ・スコスバーがいた。


「――おお!君がエミリア・ロヴァルトか!?」


「え、ええ……そうですけど。いや、私の前に殿下(でんか)に……」


 ローマリアを無視(むし)した形のギルオーダに、流石(さすが)のエミリアもドン引きだった。

 残念なことに、これがギルオーダと言う青年だった。


「うぉ、すみません!殿下(でんか)!!小さくて見えませんでした!」


「おぃこら、私はエミリアとそう変わらないだろ!というかお(ぬし)も五十歩百歩ではないか!!」


 ギルオーダは背の低い男性だ。

 すばしっこい動きと体捌(たいさば)きから、お猿と呼ばれる。


「うはは!そりゃそうでした、やっぱり可愛(かわい)い子が目に入るんですよね!」


「お前……相変わらずだな……この馬鹿猿(ばかざる)め」


(殿下(でんか)に向かってそんなこと言うなんて……凄い、のかな?それとも……)


「さーせん!バカなもんで!」


(あ、そーなんだ)


 一瞬大物なのではと思ったエミリアだったが、瞬時に答えが飛んできた。本人の口から。


「ノエルディアも久しぶりじゃね?」


「あ、そうね……」


 あのノエルディアが、滅茶苦茶(めちゃくちゃ)素っ気ない。


「つれねーこと言うなよぉ。同期だろぉ……ほれほれっ」


「へぇ……」


 ノエルディアは苦虫を(つぶ)したような顔をして、エミリアとローマリアを見る。

 コイツやっていいですか?そう聞かれているような気がした。


「おいギルオーダ、お前……なにか大事な話があるのだろうが。何故(なぜ)そんなに緊張感が無いのだ!」


 そう。本来、緊急招集きんきゅうしょうしゅうで呼び出した側なのだ、この男は。

 現在の女王と言っても過言(かごん)ではないセルエリス王女を起こしてまで(おこな)ったのだ。

 それなのに、なぜそこまで馬鹿(ばか)でいられるのか。


「もし大したこと無かったら……お前絶対にクビだぞ、大丈夫か?」


「大丈夫っす。それだけは大丈夫、だって一大事っすから」


 そういう所だと何故(なぜ)理解しないのか。

 ローマリアは頭を(かか)えたくなった。

 補足(ほそく)だが、エミリアとノエルディアは頭を(かか)えていた。


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