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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第2部【動乱】篇 3章《聖槍、天高く》
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88話【皇女を追って】



皇女(こうじょ)を追って◇


 今、数人の騎士が車両の掃除(そうじ)をしている。

 バルクが【魔導車(まどうしゃ)】のドアを開けると、そこには高笑いをするノーマと死体となったマシアスがいた。いや、あった。

 バルクは、念の為に生命反応を確認してからマシアスの死を認めると、ノーマの頭を(はた)く。

 その瞬間にノーマはハッとして、正気に戻った。

 そして(たか)まったノーマは着替えをしに自分のテントに向かい。

 バルクはマシアスの部下であった騎士たちに掃除(そうじ)を命じたのだ。

 それが命令違反の罰だと言って。


「……ど、どうだった?」


 短髪の騎士が、バルクに恐る恐る聞く。

 バルクは辟易(へきえき)しながらも答える。


「――車内が血まみれだよ。あいつもな、「下着まで()れちゃった~」とか言ってたけど、絶対に返り血じゃねぇだろ」


「そ、それで興奮(こうふん)できるって事か……?」


それじゃないと(・・・・・・・)興奮(こうふん)出来ないんだよ……あの女は。お前も試してみるか?ウォイス、ノーマんこと狙ってたんだろ?」


 ウォイスと呼ばれた短髪の騎士は、首が取れるのではないかと思わせるほどに首を振った。


「いやいやいや、無理だわ……」


「ははは、だろ?」


「お、おう……」


 心底残念そうに、ウォイスの恋心は(はかな)く散った。





「おまたせ~、はぁ~、気持ち良かった♪」


「「「……」」」


 戻って来たノーマは、非常に艶々(つやつや)していた。

 拷問(ごうもん)で性的に興奮(こうふん)できる特異体質(とくいたいしつ)は、流石(さすが)異常者(いじょうしゃ)だろう。

 しかし、その実力が皇帝陛下(こうていへいか)に認められたことは事実。

 ウォイスを(ふく)む騎士たちは、一様(いちよう)に「逆らえん」と、ノーマに関する条約(じょうやく)を決めたのだった。


「バルク、何してんの?」


「地図を見てんだよ、分かってんのに聞くな」


「……怒ってる?」


「別に」


 ノーマはバルクの背から様子を見ている。

 地図を見るバルクは普段通りに見えるが、付き合いの長いノーマなら分かる。


(私のせいだよね~)


 自覚あり。実際、マシアスから聞かなければならない事は少なからずあった。

 【黒銀翼(こくぎんよく)騎士団】の現状(げんじょう)の任務は、エリウス皇女(こうじょ)の保護だ。

 エリウスが逃げた事は分かったが、聖王国に逃げたとなっては話は変わってくる。


「なぁ」


「ん?」


「エリウス殿下(でんか)聖王国(となり)に入ったと思うか?」


「う~ん。【コルドー村】から他の村や町に行けるとは思えないよね。近くても【アンガウの町】でしょ?あそこは基本的に帝国の兵が駐屯(ちゅうとん)してるから、行かないと思うけど?」


「だよな、俺もだ。俺だったら、聖王国に向かって様子見だが……」


「私もそうするかな。でもさ……」


「ああ。そうしたら、いつまで【魔導燃料(まどうねんりょう)】が持つか分んねぇな」


 【魔導車(まどうしゃ)】は燃料(ねんりょう)で動く。

 魔力を注入した、新世代の燃料(ねんりょう)だ。

 行きはともかく、帰りにどれくらい使うかを考えると、全戦力で向かうのは危険(きけん)だ。


「数台待機するとして、俺等が追いかけて何日で着く?」


殿下(でんか)が馬車で逃げてるなら、3日ってとこじゃない?」


(すで)に【魔導車(まどうしゃ)】の不調(ふちょう)で差が開いちまってるからな……」


 【魔導車(まどうしゃ)】の不調(ふちょう)は、新設(しんせつ)された以上仕方がなく、故障(こしょう)しなかっただけ幾分(いくぶん)マシだろう。


「元から、帝国内で捕まえ――じゃなかった、(むか)えに行くことが想定されてたんだし、仕方なくない?」


「マシアスのオッサン、言ってたよな。“天使”を落としたって……」


「あ~、言ってたっけ?」


 「聞いとけよ」とバルクはノーマを半眼(はんがん)で見る。

 「あはは」と、ノーマは笑顔で誤魔化(ごまか)した。


「相手が人数減ってんなら追いかけるしかねぇ。チャンスでもあるからな……ちっ、仕方ねぇな、マシアスのオッサンが使ってた隊は帝都(ていと)に戻す。“槍”の調達(ちょうたつ)もあるからな。んで三台は国境(こっきょう)付近で待機だ、残りは聖王国に向かうとして、途中(とちゅう)で一台待機だ」


「連絡用ね」


「そうだ。必ず殿下(でんか)をお連れするぞ……はぁ、めんどくせー」


「最後の最後に本音もれてっし……」


 こうして、作戦は決まった。

 そして、エリウスと騎士団が接敵(せってき)するまで、残り3日となるのだった。





 一方で、ここは帝都(ていと)近郊(きんこう)の森林だ。

 白い騎士服の男女が、“点灯魔道具(ライト)”を持って何かを探している。

 静かに、気付かれることを恐れているように慎重(しんちょう)

 騎士たちは、誰かを捜索(そうさく)しているのだ。

 逃げ出した皇女(こうじょ)が実は一人ではないという事実は、今この場にいる者しか知らない。


 その騎士たちの中に、橙色(だいだいいろ)の騎士服を着た二人の女性が混じっていた。

 サンドラ・シルス、そしてギリィ・チェイス。

 第二皇女(こうじょ)ミア・レイチェル・レダニエスの近衛(このえ)騎士である。

 この二人の女性騎士は、逃げたという皇女(こうじょ)を探す任務(にんむ)(あた)えられ、【白銀牙(はくぎんが)騎士団】に混じって捜索(そうさく)の手伝いをさせられていた。


「……サンディ、どうする?」


 ギリィは、他の騎士の目に付かない様にサンドラに近付き耳打ちをする。


「どうするもこうするも……きっとラインハルト陛下(へいか)監視(かんし)されてるはず……あの方は、そう言う御方(おかた)でしょ?」


「それはそうだけどさ……」


「一番は、ミア殿下(でんか)と合流してお守りする事。その為には……」


 ちらりと、白騎士たちを見やる。


「だね」


 どれだけ、この白騎士たちを()く事が出来るかだ。

 二人は視線(しせん)を合わせ(うなず)き合う。


慎重(しんちょう)に行くよ、ギリィ」


「りょーかい、サンディ」


 二人は近衛(このえ)騎士。実力もある。

 そして皇女(こうじょ)からの信頼があったからこそ、皇女(こうじょ)を逃がす作戦を立てられたのだ。

 (すき)を見てサンドラとギリィは、帝国から離れる決意をしたのだった。





 「止まれっ!」と、走ってきた馬を止める門番(もんばん)の騎士。

 (あや)しむように見るその馬に乗った男は、黒い布を全身に(おお)(かぶ)せた風貌(ふうぼう)をしており、ハッキリ言ってしまえば相当(あや)しい。

 しかも、その肩には大きな麻袋(あさぶくろ)(かつ)いでおり、先からは(よご)れた足が見えていた。


「お、おい……その袋、いったい」

(……なんだ、この(にお)い……)


「――(あま)り近付かない方がいい……」


 門番(もんばん)は鼻を(つま)みながら馬に近付こうとしたが、黒布の男は警告(けいこく)するように言う。


「なに?」


 黒布の男は、ぼそりと言う。


「村で奇病(きびょう)流行(はや)ってな……俺もその(やまい)(おか)されている。この袋は俺の娘だ……だが、もう死んでいる」


「……しかし、見ない事にはな……」


「どうやら空気でも感染(かんせん)するらしいぞ、この(やまい)は。感染(かんせん)したいのか?俺の顔は、もう見られないほどに(ひど)くなっている。もしそうなってもいいのなら、確認すればいい」


 黒布の男は、口元の布だけを()ぎ取る。

 そこからは、ぐじゅぐじゅと皮膚(ひふ)()がれる音が。


「ま!まて!!いい……平気だ。しかし、町に入れることは出来んぞ」


(かま)わんさ、裏を通らせてもらう……それだけでいい」


「そうか、ならば早々(そうそう)に立ち去って貰おう……どこぞに行って、(やまい)を広めないでくれよ?」


「ああ、その為に村を出たんだ……感謝(かんしゃ)する」


 (やまい)を町に持ち込まれれば、困るのは町民だ。

 その為の門番(もんばん)なのだし、妥当(だとう)な判断だろう。

 パカラパカラと歩き出す馬の後姿を見ながら、もうひとりの騎士が門番(もんばん)に声を掛ける。


「なぁ……今の馬、記章(きしょう)がついていなかったか?」


「は?記章(きしょう)?……いったい何の」


「いや、暗くてよくは……だけど、何処(どこ)かで見た覚えがあるんだよな……」


 少し歩き、馬は(いきお)い良く走り出した。

 その記章(きしょう)が、帝国騎士団長のものだとは、最後まで門番(もんばん)の騎士が気付くことは無かった。





 風を切り疾走(しっそう)する馬上で、男は黒布を()いだ。


「……くっ……物凄い(にお)いだ……!」


 男が()いだ黒布には、家畜(かちく)の皮が(まと)われていた。

 (くさ)りかけ、虫が()寸前(すんぜん)の物だった。

 その布を捨て去り、男は麻袋(あさぶくろ)に声を掛ける。


「――すみません!殿下(でんか)……こんな不躾(ぶしつけ)(あつか)いを」


 麻袋(あさぶくろ)はもぞもぞとし、隙間(すきま)から顔を出す。


「い、いえ。平気です……でも、無事に通れてよかった」


殿下(でんか)御助言(ごじょげん)のお陰です、助かりました」


 男の名はカルスト・レヴァンシーク。

 そして麻袋(あさぶくろ)から顔を出す少女は、ミア・レイチェル・レダニエスだった。


「しかし、カルストに(きたな)真似(まね)をさせてしまって……」


(かま)いません。一度帰って来た道が封鎖(ふうさ)されていたので、町を通らなければとは覚悟をしておりました、殿下(でんか)のお陰で通り抜けられたのです、感謝してもしきれません」


「夢で見たんです……あの町は、一度(やまい)蔓延(まんえん)したと……勉強不足な皇女(こうじょ)で申し訳ないですが……」


 知っていたでは無く、夢で見たという点を(あやま)るミア。


「いえ。では次の町に向かいますが、もうしばしその体勢(たいせい)でお待ちいただけますか?」


 ビクリと一瞬だけ嫌な顔をするも、ミアは。


「つ、(つと)めます」


 気丈に宣言(せんげん)をし、文字通り荷物(にもつ)となった皇女(こうじょ)は、こうして何度も町や村をやり過ごしながら、姉が向かっているだろう聖王国を目指すのだった。


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