表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第2部【動乱】篇 3章《聖槍、天高く》
321/383

86話【レオマリス・ファーム2】



◇レオマリス・ファーム2◇


 遅めの昼食を取りながら、サクラは考えていた。


(あたしの魔力が上がったのかな……それとも、(かばん)消費(しょうひ)魔力が()った?結構(けっこう)な量の物を取り出したけど、何ともないのはおかしいよね……)


 パンを(かじ)りながら、考える。

 自分の身に最近起こった事と言えば。


(……《石》の世界……に居た事、くらいでしょ)


 自分の存在に絶望して、逃げ出した先にいたのは。エドガーの母マリスだった。

 彼女もまた、何かから逃げた(・・・・・・・)と言っていたが、《石》の前所持者である彼女に会ったことが、何かしら魔力に影響(えいきょう)(あた)えたのだろうかとも考える。

 人物の詳細(しょうさい)データを見る事が出来るのは、メルティナだけだ。

 サクラは、そのメルティナに確認してもらうのが手っ取り早いと考えて、パンを一気に頬張(ほおば)り、ゴクリと飲み込んで。


「……よし。とにかくこの件は持って帰ってから考えよう」


 取り()えず投げた。


「お(ぬし)は……そう言うところだぞ……」


 何故(なぜ)だかサクヤに(あき)れられた。


「いーじゃん。考えないって言ってんじゃないんだから!」


 元々、異世界人同士で話し合いはしなければとは言ってはいたのだ。

 だが、サクラが現実逃避(げんじつとうひ)をし、ローザも今は居ない。

 だから話はなあなあになっていたのだが。

 今は早期(そうき)に調べたい。そう思う。


「ローザさんが帰ってくるのも、もう()ぐなんでしょ?なら、あたしたち異世界人同士で共有(きょうゆう)しておかないとダメじゃん。自分の能力をさ」


「それはそうだが」


 あ、サクヤの視線(しせん)が言っている。「お前が言うか?」と。

 だがそれは大いにサクラ自身が理解している。


「――それはごめん」


「顔が(あやま)っていないぞ。まぁ……別に(あやま)ってほしいなどとも思っていないがな」


 サクヤも自分の考えを持っているが、それを押し付ける気はない。

 (ゆず)れぬ信念(しんねん)とも言えるそれは、誰かと共有(きょうゆう)すべきものではないと、サクヤは考えるからだ。


「まぁでも、能力の開示(かいじ)妥当(だとう)だな。わたしも、(みな)の強さを知りたい……特にフィルヴィーネ殿は、底知れない強さを感じるしな」


「リザもすっごく強いよ……ああ見えてさ」


 “魔王”であるフィルヴィーネは()(かく)、“悪魔”であるリザも充分な強さがある。

 今はその強さを(おもて)に出せはしないが、《石》の世界で見たリザの強さは本物だろう。


「なんにせよ、ローザさんが帰って来てからだね。あたしたちの話し合いは」


「だな。ではそれまでは……」


「うん」


「「野菜を育てよう!」」


 一つは自分の為に。

 一つは仲間の為に。

 一つは世界の為に。


 この野菜たちがこの世界でも育つ事が出来れば、食文化も変わってくるはずだ。

 それを変えるのが自分だと想像(そうぞう)したら、嫌でも武者震(むしゃぶる)いしてしまう。

 サクラにも、もう自分の世界の知識(ちしき)は持ち込まない。などという考えは、皆無(かいむ)だった。





 サクラは、仕上げに作った(かこ)いを()み上げ「ふぅ~」と息を()く。


「これで害獣対策(がいじゅうたいさく)もいいんじゃない?」


害獣(がいじゅう)?」


「うん、野菜を食べちゃう動物ね。(はたけ)に入ってこれないようにしたんだ」


 メイリンは、サクラの言葉に不思議(ふしぎ)そうに首を(かし)げていた。

 それはモンシアも同じで、何故(なぜ)そんな事を?と言っているよう感じだ。


「……え?」


 農場(のうじょう)(いとな)んでおいてその反応はないだろう。


「あたしの言ってること、分かりますよね?」


 苦笑いしながらも、聞いてみる。

 サクヤですら、腕を組んでうんうんと(うなず)いているが。


「――野菜を食う動物なんて、ここにはいない(・・・)ぞ?」


「そうね、精々(せいぜい)、鳥がいるくらいかしら」


「いやいや、(たぬき)とか、(いのしし)とかいるでしょ?」


 畑荒(はたけあ)らしと言えば、な害獣(がいじゅう)だ。

 日本では年々被害(ひがい)が増え続けている。

 そんな被害を受けないようにと考えて、サクラは(さく)を立てたのに。


「「……」」


 父娘(おやこ)は顔を合わせて、不思議(ふしぎ)そうにしている。


「えぇ……」

(ん?あれ……でも、そう言えば)


 サクラは思い返す。この王都も少しは()れてきた。

 そこで思い返すと、ある事に気付く。


(馬や豚、牛に羊……基本的に家畜(かちく)と呼ばれる動物は見たけど……)


 農場(のうじょう)の周りを見渡しながら。

 その動物を探して、気付く。


「ね、ねぇメイリンさん……犬とか猫とか、いないの?」


「いぬ?……ねこ?」


 メイリンは再度首を(かし)げた。


「……うそぉ……」


「わたしが犬犬言っていた時、エミリア殿は知っている素振(そぶ)りだったぞ?」


 サクヤは、よく自分を犬に(たと)える。

 エドガーに忠誠(ちゅうせい)(ちか)忠犬(ちゅうけん)だと。

 そんなサクヤの言葉には、サクラも聞き覚えがある。


「エミリアちゃん、自分を猪娘(いのししむすめ)って言ってたか……ん?言ってたっけ?」


 正確には、ローザが言った言葉だ。


「でも、疑問(ぎもん)を持たないってことは知ってるって事か、普通は……うん、普通は」


 相手はエミリアだった。

 「だれが猪娘(いのししむすめ)よ!」とは言っても、(いのしし)を知っているかは別の話の気もする。


「「不安だ……」」


 二人は口を(そろ)えて言う。

 それ以外にも、エドガーが疑問(ぎもん)を持たなかったという点もある。


「エド君だったら、知らない物は知りたいって思うはずだから……犬と猫は知っているんじゃないかな、んで、最終的にローザさんが知っていて……メイリンさんたちが知らないって事は……」


 この世界では、犬や猫は絶滅(ぜつめつ)している可能性だ。


「うわぁ……へこむ……」


「しかし、言葉は残っているではないか、猫舌(ねこじた)とかな」


「確かにねぇ」


 サクヤの猫舌(ねこじた)というワードに、メイリンが。


「ああ、ローザの猫舌(ねこじた)……の、ねこね!」


 もしかして、実物を知らないで言葉を使っているのだろうか、この世界の人間は。

 サクラもサクヤも疲れた顔で(うなず)いた。


「「そう、それ」」


「う~む。やはりわたしたちの世界とは大幅(おおはば)に違うのだな……しかし馬や豚はいる、不思議(ふしぎ)な虫もいるが……」


「まあ、《魔法》がある時点で異世界よね……(あきら)めて覚悟決めても、()れない事も沢山(たくさん)だわ」


「確かに。ところでサクラ」


「ん?なによ?」


 地味に作業(さぎょう)をしながら会話をしていたのだが、サクヤが気になったようで手を止める。

 サクラが作業(さぎょう)をする物を見つめて言った。


「それは、立て札であるな。何のだ?」


「立て札……まあそうだね、看板(かんばん)ね」


 サクラが作業(さぎょう)していたのは、木の板を組み合わせた立て札看板(かんばん)だった。

 丁寧(ていねい)(けず)(くぎ)で固定した、手作り感満載(まんさい)の。


「……れおまりす・ふぁむ?」


「【レオマリス・ファーム】ね。わざわざ平仮名(ひらがな)で書いたのよ。この世界の人間には読めないでしょ、これで」


「おお、成程(なろほど)!」


 看板(かんばん)には【れおまりす・ふぁ~む】と書かれている。

 サクラの世界の文字で、この世界の人間が読めない様に。

 その意図(いと)をサクヤも気付いたようで、サクラを感心していた。


「これならば、主様(あるじさま)の名がついていても読めないから、(とが)められることもないな」


「そ。あとはコレを……よっと!!」


 手作り感のある立て札を地面に突き立てる。

 これで完成だ。


「毎日水やりに来ようね」


「毎日はやらないだろう、普通は」


「そうなの?」


「そうね、あげない日もあるわよ?水を少なくすれば甘みが増すものもあるから」


 サクラは【スマホ】にメモしながら「なるほど」と納得(なっとく)していたが、急に少し遠目に移動し始めて、サクラは言う。


「うん。サクヤ、メイリンさん、そのままこっち見て!この板(スマホ)見てて、笑顔でね!」


 言われるまま、サクヤとメイリンはサクラが(かま)えるスマホを見て。


「はいっ!チーズ!」


「は?」

「え?」


 カシャ!!


「ぬわっ!」

「きゃ!」


 一瞬の閃光(せんこう)に、二人は戸惑(とまど)うが。

 サクラは「オッケー」とご機嫌に言っていた。


「おいサクラ!何をしたのだ!?めめ、目がチカチカするではないか!」

「一瞬真っ白になったよ~」


「あはは、いいからいいから。ほらこれ、見てみて」


「ん?おお!」

「う~、目が……って、え!?」


 サクラが見せる【スマホ】には、こちらをみるサクヤとメイリンが(うつ)っていた。

 サクヤは半目だが、メイリンは言われた通りに笑顔だった。


「これは見事な写実(しゃじつ)だ……」

「すご~い……これ、絵なの?」


「いやいや……写真だよ、そのまま写したの。あ~っと……」


 面倒臭(めんどうくさ)いので、その場を魔力で切り取る“魔道具”と説明することにした。


 もう一度、今度はモンシアも入れて写真を()る。

 サクラは操作側であり、サクラしか操作が出来ないので自分は(うつ)り込めないのだ。


「これを、エド君に見せたいんだ」


 写真には、(はたけ)と立て札も(うつ)っている。

 エドガーなら気付くかもしれない。


「なるほど……喜んでくれるといいな、主様(あるじさま)


「うん。だね」


 二人は笑い合って、今日の仕事を終えたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ