表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第2部【動乱】篇 3章《聖槍、天高く》
320/383

85話【レオマリス・ファーム1】



◇レオマリス・ファーム1◇


 エドガーとドロシーが昼食を取っている(ころ)

 【サザーシャーク農場(のうじょう)】では、二人の少女が土と格闘し(たわむれ)ていた。


「うわぁぁぁぁっ!!虫!虫ぃぃ!」


「えぇいうるさいぞサクラ!虫くらいなんだ!!手で()けろ!」


「――知ってる虫ならねっ!!何よこの虫!全然見たこと無いんですけど!!」


 普段はツインテールにしているサクラだが、今日はお団子(だんご)ヘアーをしていた。

 頭の上部に二つのお団子(だんご)を乗せている。

 サクラは、虫が出て来た穴に土を(かぶ)せながら、身震(みぶる)いしてサクヤに(せま)ってきた。

 そのサクヤも頭に大きなお団子(だんご)ヘアーを乗せていて、仲の良い姉妹のようだった。


「知らん!種を()えるのだろうがっ!あぁもう、折角(せっかく)()った穴を戻してどうするっ!!」


「だぁってぇぇ!」


 身体を両手で(かか)える様に、サクラは顔を青くする。

 サクラが土を(かぶ)せた場所から、にょきりと顔を出す虫。


「「……」」


 丁度(ちょうど)、二人と目が合う形で顔を出して「やあ」と言っているようだった。

 その虫の見た目は毛虫のようだったが、無数の足が長く、触角(しょっかく)と足が混ざったようなフォルムをしていた。

 足の一本一本が(うごめ)いており、(かぶ)せた土など容易(たやす)()けたのだろう。


「――キモッ!!」


「なに、大したことな――」


 ピトッ。


「あ」


 虫は飛び()ねることも出来た様で、全然平気と思われたサクヤの顔面に着地した。


「――ぁぎゃああああああああああああああっ!」


「ちょ!こっち来ないでよ!バカサクヤあああああぁぁぁぁっ!!」


 二人は走る、走る走る走る。

 その様子を、農場(のうじょう)の所有者であるモンシア・サザーシャークは、豪快(ごうかい)に笑いながら言う。


「ガハハハッ!相変わらず面白いな、あの子らは」


 (むぎ)わら帽子(ぼうし)(かぶ)る熊のような大きな体躯(たいく)で、少女二人を見る。


「もう、お父さんが変な事言うからでしょ?」


 メイリンの父モンシアが急に言い出した「野菜を育てて見ないか?」と言う言葉に、サクラは嬉しそうに二つ返事をした。

 自分の世界の野菜を、魔力消費(しょうひ)なしで作り出せればと思ったのだろうが、勿論(もちろん)土いじりなどしたことがなく、《戦国時代》から来たサクヤに手伝ってもらう形で、この【サザーシャーク農場】まで来た。そこまではいいが、虫が苦手な事を失念(しつねん)していた。


 そしてメイリンの中では、サクラもサクヤもまだまだ子供だ。

 エドガーと同じ目線(めせん)で見る二人の少女は、メイリンにとって妹のようなもの。


「二人共、ふざけてないで作業(さぎょう)に戻りなさい」


 少し遠めの所にいるメイリンからの優しげな言葉を聞いても、サクヤは走って逃げ(まど)う。

 一方サクヤは、ビタ止まりして。


「うむ、承知(しょうち)した。ほれサクラ、作業(さぎょう)に戻るぞ」


「――あんたがその虫を何とかしたらね!」


 実は言うほど怖くなかったらしいサクヤは、どうやらサクラをからかっていたようだ。

 サクラは逃げた先にいたモンシアの背に隠れながら言うが、モンシアはモンシアで、うら若い少女にくっつかれて「ガハハ」とまんざらでもない顔をしていた。


「お父さん」


「お、おう。サクラちゃん、これを使えばいい」


「これは?」


 娘の(にら)みにびくりと背筋(せすじ)(ふる)わせて、モンシアはサクラにあるものを渡す。

 作業箱の中から取り出した、小さな小箱だった。


「コイツはな、【虫がこな~い】っつう道具だ」


「――ぷふっ」


 どこぞの大泥棒(おおどろぼう)のような口調(くちょう)の道具名に、思わず()き出すサクラ。

 しかも、メイリンまでも父に追随(ついずい)するように。


「その【虫がこな~い】はね、その名の通り、虫が来なくなるのよ」


「ぷはっ!あは、あはは……ちょ、なんで、なんでそんな……ル○ン見たいな、あはははは、あはははははっ……あーおかし」


「「ル〇ン??」」


 現地民(げんちみん)の二人には分かるはずもない言葉に、きょとん顔をしながらも。


「それでね?」


 メイリンの言葉に、モンシアが追い付けする。


「おう。この箱はな、虫を殺さず追い返す代物(しろもの)だ。作業時(さぎょうじ)はこれを置きながらすればいい。終わったらこの【虫がこな~い】を撤去(てっきょ)するんだ。そうすれば、無害(むがい)な虫は戻って来て、土を綺麗(きれい)にしてくれる」


「へ……へぇ……」


 (ほほ)をピクピクさせて、笑いを(こら)えながら説明を聞くサクラ。


「――お、おおっ」


「?」


 小箱を出した途端(とたん)、サクヤの顔に張り付いていた虫は逃げ出していった。

 その様子に(おどろ)くサクヤと「マジか」と効能に(おどろ)くサクラ。


(あれ?これって……もしかして“魔道具”なんじゃ……)


 ありえないほどの防虫効果に、(ふく)らむ疑惑(ぎわく)


(この“魔道具”、いったいどこから?)


 そんなサクラの様子に気付いて、メイリンが近寄り言う。


「この道具ね、エドガー君のお父さんから(いただ)いた物なのよ?」


「……エド君の、お父さん……?」


 エドガーの父、エドワード・レオマリス。

 先代の【召喚師】であり、(こわ)れたものしか“召喚”出来ないという力を持つ。

 宿の大浴場の素材(そざい)は彼が(いく)つもの“魔道具”として“召喚”し、組み合わせたものだ。

 修理(しゅうり)し、組み合わせる。それはエドガーが得意(とくい)とするものでもある。


(この箱が“魔道具”なら……意外と“魔道具”って知らないうちに広まってるんじゃないの?)


 この広い王都で、もし誰もかれもが知らないうちに“魔道具”を使っているのだとしたら、非常に気分が悪い。

 それでは、エドガーが苦労(くろう)している意味がなくなってしまう。

 何のために“不遇”職業と呼ばれ、(さげす)まれているのか。

 “魔道具”を集めて変人(へんじん)と呼ばれるエドガー、しかしその“魔道具”が広まっていて、王都民の大半が使っていたとすれば、それこそ胸糞(むなくそ)の悪い話だとサクラは思う。


「……ちっ……」


 知らず内に舌打ちをし、横にいたメイリンが目を丸くする。


「サ、サクラ……?」


「あ、はい。なんです?」


「……」

(あれ、気のせい?)


 瞬きするうちに、サクラは元通りの元気な少女に戻っていた。


「あ、ほら……作業(さぎょう)を始めましょう、私も手伝うから、ね?」


「……あ。そうだった……すみません、メイリンさん」


「うふふ、いいのよ。さぁサクヤもしっかり働いてね?」


「うむ。ではわたしは土を(たがや)すとしよう、サクラは種を()け」


「なんであんたが仕切(しき)ってんのよー!」


 こうして、ようやく農作業(のうさぎょう)が始まったのだった。





 作業を始めて一時(いっとき)(1時間)程が()った。

 【虫がこな~い】のお陰で(とどこお)りなく作業が進み、サクラが(かばん)から取り出した種を()くことも終えた。

 如雨露(じょうろ)で水を()き、植えたての野菜たちに栄養(えいよう)(あた)えるサクラとサクヤ。


「うん、こんな感じでしょ」


「ああ。綺麗(きれい)(ととの)えられてるな」


 【サザーシャーク農場(のうじょう)】の(はたけ)には遠く(およ)ばないが、それでも立派な(はたけ)には違いない。


(たたみ)……六畳(ろくじょう)ってとこかな……」


「うむ、そうだな」


 個人で育てるには充分な広さだろう。

 植えたのは、二十日大根(はつかだいこん)にベビーキャロット、(かばん)が土で(よご)れる覚悟をし、ナスやトマトの(なえ)を取り出して()えたりもした。


「この世界にも似たような野菜はあるけど、味はやっぱり違うからね」


「これは楽しみだな……」


 夏野菜であるトマトやナスの(なえ)は、この世界の時期(じき)に合わせて取り出して、お礼としてモンシアにも献上(けんじょう)した。

 【サザーシャーク農場(のうじょう)】の育て方を見せて貰う為でもあるが、単純にお礼としての割合(わりあい)が高いだろう。


「それにしてもサクラ」


「ん?なに?」


 作業(さぎょう)を終えて汗を(ぬぐ)うサクラに、サクヤが不思議(ふしぎ)そうに問う。


「お前、そんなに(それ)から物を取り出して……魔力は平気なのか?」


「……。……。……あ」


 忘れていたようだ。


「そ、そう言えば……何も考えずにバカスカ(かばん)使ってた!」


 サクラの(かばん)は、自分の世界の物質(ぶっしつ)を取り出す事が出来る能力がある。

 取り出せるものに制限(せいげん)はなく、【地球】に存在するものならばありとあらゆる物を取り出せる。

 唯一(ゆいいつ)(かばん)の口より大きいものは取り出せないという点はあるが、バラバラな状態で取り出し組み立てれば、その点も解決(かいけつ)だった。

 しかし、取り出した物によってサクラの魔力が消費(しょうひ)され、気を失いそうになる時もあったのだが。今は。


「へ、平気みたい。何ともないよ、疲れも倦怠感(けんたいかん)もない……」


「魔力は()ったのだろう?」


「多分……でも、全然動けるよ」


 自分の身体のあちこちを見ながら、平気とアピールする。

 サクヤも(いぶか)しみながら、じろじろと見ていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ