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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第2部【動乱】篇 2章《天使奔走》
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エピローグ1【予知夢の姫】



予知夢(よちむ)の姫◇


 帝国領内(りょうない)を走る、(おさな)い影。

 小さな身体は(ふる)え、恐怖に追われて(こご)えそうになる。


 息は(あら)く、大きな(ひとみ)からは涙がこぼれる。

 その手に持った首輪の様な、首飾り(チョーカー)の様な曖昧(あいまい)な物を、大切そうに両手で(かか)え、走る。

 足元は裸足(はだし)だった。(すで)に結構な距離(きょり)を走ったのだろう、()り切れて血は(にじ)み、寒さと地面の冷たさであかぎれていた。


 はぁはぁと息を(あら)くするその肩は小さく、背も低い。

 一見、村娘のような風貌(ふうぼう)は、ドレスを切って短くし、走りやすくしたものだ。

 何度も後ろを振り返り、追手(おって)の姿が見えないかを確認する。


「……ど、どこかで……」


 その少女は、青色の髪(・・・・)をしていた。

 皇族(こうぞく)のみが持つ、伝承(でんしょう)ある青。


 この少女の名は、ミア。ミア・レイチェル・レダニエス第二皇女(こうじょ)

 兄である、【魔導皇帝(まどうこうてい)】ラインハルトによって(とら)らえられた、エリウスの妹だ。

 ミアは、(すき)を見て城から抜け出した。

 近衛(このえ)の兵だった二人の女性騎士の助力で城を(だっ)したが、遠くまで行けるかは、まさに運次第(しだい)だった。


 そもそも、ミアは身体が弱い。それも極端(きょくたん)に、身体を動かす事が出来ないのだ。だが、今はこうして全力で走っている。

 成さねばならない目的があるからだ。


「どこかっ!誰かっっ!――あっ!?」


 ドシャァァァァッッ――!!


「――う、ううぅ……」


 連日続いた雨に足を取られ、転んでしまう。

 しかし、(かか)えていたアクセサリーだけは、絶対に離さなかった。


「これだけは……姉様に届けないと(・・・・・)……姉様っ……!」


 傷だらけでも、泥だらけでも、前だけを見る。

 まるでそれが分かっているかのように。


「――ミア殿下(でんか)っ!!」


「――っ!!……ほっ……良かった、夢の通り(・・・・)……」


 草むらを()き分けて出て来たのは。

 エリウスの部下、カルスト・レヴァンシーク。帝国の前・騎士隊長だった。


「ミア殿下(でんか)っ……なぜこんな危険な事を!」


 転んだミアを(かか)えるカルストも、傷だらけだった。

 カルストは、レディルと別れた後、単独(たんどく)帝都(ていと)へ戻った。

 しかし、カルストを待っていたのは、白衣の騎士たちだった。

 情けないくらいに迎撃(げいげき)されて、追い返されたカルストは、様子を(うかが)う為にこうして森の中に身を(ひそ)めていたのだ。

 そこで見かけた。走る幼い姿を。


「……カルスト、姉様は……」


「ミア殿下(でんか)……まさか!」


「はい。見ました……予知夢(よちむ)を、わたしの未来を……」


 彼女、ミア・レイチェル・レダニエスは、予知夢(よちむ)を見る事が出来る。

 その能力が原因(げんいん)極端(きょくたん)に身体が弱く、自由に動く事が出来ないのだった。


「――カルスト、急いでここを離れてください……追手(おって)が来ます……白い、コートの騎士たち……【白銀牙(はくぎんが)騎士団】です」


「【白銀牙(はくぎんが)】!?……――分かりました、乱暴(らんぼう)(あつか)うこと、ご容赦(ようしゃ)ください!!」


「ゆ、(ゆる)します」


 カルストは、ミアを荷物(にもつ)の様に(かか)えると、全速力で自分の馬を隠してあった場所に向かった。

 逃げる為、姉にこのアクセサリーを届けるため、ミアは行動する。

 それが、この帝国に何を(もたら)すか、今はまだ知らないままに。


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