表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第2部【動乱】篇 1章《帝国内乱》
264/383

39話【宝石接続《ジュエルリンク》2】



宝石接続(ジュエルリンク)2◇


 「「――【宝石接続(ジュエルリンク)】!!」」


 フィルヴィーネとリザ、二人の声に合わせたかのように。

 リザの《石》、【橙発火石(オレンジ・ジルコン)】は光り出す。

 その名を体現(たいげん)したかのように、オレンジ色の小さな炎を一瞬だけ生み出すと、あっと言う間にリザを(つつ)み光の(かたまり)となる。

 その光はリザの精神を(まと)うと浮かび上がり、身体と心を分離させる。

 浮かび上がったリザの精神は、ゆっくりとサクラの(ひたい)の《石》に吸い込まれるように、消えていった。

 残されたのは、ぐだっと眠りに入ったリザの身体だけだった。


「フィルヴィーネさん……これで、リザは……」


「……ぁ、ああ……精神が《石》に入った。時間は、そうだな……半時(はんとき)(30分)、といった……所、だ……」


「――っ!?フィルヴィーネさんっ!!」

「フィルヴィーネ殿!」


 くらりと、フィルヴィーネは真後ろに倒れていく。

 エドガーはその背を支え、受け止める。

 サクヤも一緒に背を支えて、フィルヴィーネを横にさせ休ませる。


「クックック……すまぬな……少々魔力消費(しょうひ)が多かった。だが瞬間的なものだ、心配はない」


 青い顔をしながら、フィルヴィーネは心配いらないと笑うが、エドガーは心配そうに。


「フィルヴィーネさん……これ以上の無理(・・)は」


 その無理(・・)とは、ローザの事だった。

 ローザが大変な状況(じょうきょう)詳細(しょうさい)は、エミリアとメルティナに聞いた以上に、エドガーは《契約者》としても感じている。

 その事をフィルヴィーネに頼んだという事も(ふく)めて、だ。


「――心配はいらぬと言ったぞ」


 エドガーの手を(つか)み、フィルヴィーネは立ち上がる。


「……いや、でも」


「リザも時間が()てば勝手に戻ってくる。そう言う《魔法》だからな……だから(われ)は、エミリアとメルティナと共に城に行く、いいな?」


 立ち上がり、フラフラとする。


「……けどフィルヴィーネさんが……」


 支えるエドガーの声を無視(むし)して、フィルヴィーネは出口に向かう。

 フラつく足元。倒れる事はしないが、明らかに疲弊(ひへい)している事が目に見えていた。


「――いや……ちょっと……ああっ!もう……頼んだよっ!!メルティナ!」


 横たわるサクラとリザ、勝手に行ってしまうフィルヴィーネを交互(こうご)に見やり、エドガーは(さけ)んだ。

 その言葉にメルティナは。


「――!!……お、お任せください、マスター!」


「……」

(それでよい、エドガー)


 フッと笑みを見せ、フィルヴィーネは【召喚の間】を出ていく。

 その笑みは、とても満足のいくものだった。


「……じぃ~」


 エミリアがその笑顔を見ていた事に気付き、ビクッとした。

 その顔を見てエミリアがニヤリと笑ったことは、二人の中の秘密(ひみつ)となる。

 それはまた別の話に(つな)がるのだが、それはいずれ分かるだろう。





 何も無い。虚無(きょむ)の世界。

 光が()かれ、リザが目を開けた時、そこには何もなかった。


「――これが……サクラの世界……?」


 リザは、足場も存在しない場所を歩く。

 (なぞ)の空間ならではと言うか、不思議(ふしぎ)な力が働き、足をつけるたびに波紋(はもん)が広がる。


「……サクラはどこに……――ん?」


 ふと気になった。自分の身体が。

 大き過ぎるくらいだと思った【橙発火石(オレンジ・ジルコン)】が、胸元に無い。


「――え、あれっ!(うそ)でしょうっ!」


 無くしてしまったと思い、自分の身体をペタペタ触って探す、足元もチェック。

 しかし、無い。


「……は?」


 触って気付く違和感(いわかん)は《石》だけではなかった。

 手が、足が、胸が、腰が。成長している。

 尾が、翼が、角が。存在()る。

 無くしてしまった魔力までが、元に戻っていた。

 冷静(れいせい)になると、《石》の在処(ありか)も分かった。


 【橙発火石(オレンジ・ジルコン)】は指輪となって、左手の薬指に(はま)っていた。


「こ、これじゃあ……」


 まるでエドガーの妻のようだ。

 口には出さずも、心の中で(つぶや)く。

 しかし(かぶり)を振るい。


「――ば、馬鹿らしっ……速くサクラを探さないといけないのに……」


 リザは、蝙蝠(こうもり)のような翼を広げると、(なつ)かしそうに笑みを浮かべる。

 そうして、《石》の世界である異空間を飛び出した。





 何処(どこ)へ飛んでも、何処(どこ)を見渡しても。


「一切景色(けしき)が変わらないわね……サクラはどこよにいるのよっ……?」


 リザは戻ったばかりの身体で、《石》の世界を散策(さんさく)していたのだが。

 不意に、ある事に気付く。


「――あ!ああ……《石》をサーチすればいいのね……うっかりだわ」


 身体が戻った事に舞い上がってしまい、リザは忘れていた。

 それ以前に、リザは《石》の所持者ではない。突然魔力を取り戻して迷う事も、仕方のない事だが。


「……サクラの《石》……サクラの《石》」


 目を閉じて、感じる。

 《石》の感覚を。


「あったわ……こんな目の前(・・・)に」


 白き《石》の感覚は、目の前にあった。

 正確には、見えない所(・・・・・)にいる、と言うべきか。


「私の力に反応して、出て来た?」


 リザが身体から魔力を少し放出しただけで、空間が(ゆが)み、足場が現れる。

 スタッと着地し、一歩足を踏み出した瞬間。

 蜃気楼(しんきろう)が消えていく様に、空間はどんどん(うす)れていく。


「――いた」


 少し先に、その姿を消していた黒髪の少女、サクラがいた。

 眠っていたのか、目を(こす)りながら起き上がる。

 リザはゆっくりと近付き、そして声を掛ける。


「――サクラ、(むか)えに来たわ。帰るわよ……」


「……え……っと、誰?」


 小さな姿の“悪魔”リザしか知らないサクラは、目の前にいる真の姿のリザに、気付くことは出来なかった。


「――私よ」


「いや、だから誰っ!?」


 起き上がり、不審者(ふしんしゃ)を見るように身を守る。

 よくよく見れば、リザはオレンジ色のボンテージを着ていた。

 流石(さすが)、“魔王”フィルヴィーネの部下だ。


「……」


 サクラはまじまじとリザを見る。

 上から下まで、舐める様に見る。


「も……もしかして……」


「そうよ」


「やっぱり!――【魔界戦場レビデンス】の主役(しゅやく)……“悪魔”リリス!!」


「――誰よそれっ!!」


 ずるッと(かかと)(すべ)らし、転びそうになりながらもツッコむリザ。


「え、違うの?」


「あなたねぇ……もしかしてワザとやってない?」


 ワザとではない。

 サクラの世界にある漫画【魔界戦場レビデンス】の主人公リリスに、酷似(こくじ)していたのだ。

 リザにとってはなんのこっちゃの話だが、サクラにとっては大事に感じたのだろう。

 《石》の世界だからか、夢のような感覚に(おちい)り。

 漫画のキャラや有名人が出てくる感覚だったのだろう。


 リザは魔力を操作(そうさ)して、翼、尾、角を消す。

 そこにはサクラも知る、小さな“悪魔”の大きくなった姿があった。


「――リ……リザっ!?」


「そうよ。(むか)えに来たの、だから帰るわよ」


 差し出す手を、サクラは取らない。

 (おび)えたように、警戒(けいかい)したように口を開いた。


「……リザ、どうしてここに……あたし、帰れない(・・・・)よっ!」


 帰らない、ではない。

 それを聞いて、リザは笑う。


「なら、帰れる理由(・・)があればいい訳ね!――迷子を見つけた私が、家に連れ帰る……それでいいでしょう……?」


 リザは再び、“悪魔”の(あかし)である翼、尾、角を出現させる。

 それと同時に、魔力で作り出した巨大な(かま)を、サクラに向ける。

 その(かま)は、リザが元の世界で愛用していたものだ。

 (めい)は【テラノヴァ】。またの名を【(たましい)を狩る(かま)】と言う。


「……リザ。何のつもりなのっ!?あたしは帰れないって!こんな迷惑かけて……」


「――関係ないわね。私は約束したわ……エドガーと、コノハとサクヤに……あなたを連れて帰るって大見えを切った。だから、“悪魔”らしく……無理やりにでも連れ帰るっ!!」


 (かま)をサクラに向け、体勢を(ととの)えるリザ。


「……!」


 いつものサクラなら、困惑(こんわく)するだけのはずだった。

 しかし、今のサクラがとった行動は。


「ならっ!……ならあたしにも意地があるっ!」


 (ひたい)の【朝日の(しずく)】が(かがや)く。

 すると一瞬で、肩には(かばん)が掛かられた。

 サクラがいつも持っていた学生(かばん)。【地球】の道具を取り出す事が出来る、不思議(ふしぎ)(かばん)だ。


 ここが精神世界だと割り切って強気でいられるのか、サクラは(かばん)に手を突っ込み、魔力を使って【地球】の道具を取り出す。

 ジャキ――ッとリザに向けられたのは、【アサルトライフル】だ。

 エミリアの決闘でも使われた、軍が使用する本物のライフル。


「……強情(ごうじょう)ね。サクラ……あなたに()て――」


 チュイン――!!

 (ほほ)をかする、銃弾。


「――最後まで言わせなさいよっ!!」


 有無を言わさぬ攻撃に、リザは逃げる様に飛び立つ。

 空間に飛び立ったリザに、サクラは銃口を向け連射する。


「――くっ……早やッぃ……」


 空間は、サクラが銃を乱射(らんしゃ)するたびに亀裂(きれつ)を生む。


「――この馬鹿っ!」


 それに気づいたリザは、これ以上はまずいと判断して空中で急停止。

 (かま)を超高速で回転させて、飛んできた全ての弾を(はじ)く。


「なっ!ズルくない!?」


「――ズルくないっ!!」


 銃弾を上回る速度で回転して、盾のようになった大鎌(サイス)は、全ての弾丸を叩き落としていた。

 防いで()ねてしまえば、空間に異常が出ると思ったからだ。


「行くわよっっ!」


 リザは、大鎌(サイス)を回転させたまま突っ込む。

 それこそ、大きな弾丸に見えるような突進攻撃だ。


「――わぁぁぁっ!」


 横っ飛びして()けながら、サクラは(かばん)から更に武器を取り出す。

 サクラはそれを【アサルトライフル】の下部に取り付け、(かま)える。

 (つつ)のような形状(けいじょう)、グリップに近い位置にあるその(つつ)は、先が(ふく)らんでいた。


グレラン(・・・・)よっ!」


 停止しているリザに向けて、サクラはもう一つのトリガーを引く。

 太めの銃口から、その弾丸はボシュン!と射出(しゃしゅつ)される。

 弾丸と言うよりは、その(つつ)がそのまま撃たれたような形だ。


「――!!」


 リザは引き続き、回転させた大鎌(サイス)で受けようとしたのだが。


「……ちっ!これはマズい!」


 しかし、咄嗟(とっさ)の判断で魔力を発生させ、その身を包んだ。

 飛んできたグレネードランチャーの擲弾(てきだん)は、吸い込まれるようにリザに命中したのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ