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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第2部【動乱】篇 1章《帝国内乱》
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34話【召喚の責任】



◇召喚の責任◇


 サクヤ達が来るまでもう少しかかると判断(はんだん)して、エドガーは今日起きた事を話してくれた。

 それは、メルティナが《石》の反応を感じて飛翔(ひしょう)していった直後の事だったらしい。


「……」

(あ、あの後ですか……)


 少し居た(たま)れなくなったメルティナだったが、エドガーの話はキチンと耳に入れる。


「それでリザが言うには、サクラは《石》の中にいるらしいんだ。時間もない。だから、《石》の中に入ってでもサクラを呼び起こさないといけない……でも、それには同等の力(・・・・)を持った《石》でないと駄目らしいんだよ」


「同等の力?」


「イエス。つまり、サクヤの《石》が最適だという事ですね」


 エミリアの疑問に、メルティナが答えた。

 そしてエドガーが補足(ほそく)する。


「うん。ローザやメルティナ、フィルヴィーネさんの《石》では強さが違うから、接続出来ないんだって」


 ローザの《石》と言われて、エミリアもメルティナもピクリと反応する。

 今が言うチャンスだろうかと、二人は目を合わせたが、その前にエドガーが。


「けど、サクラを呼ぶのに、サクヤでは駄目だって事になって……」


「そ、そっか……原因(げんいん)が、二人の関係性なんだっけ……」


 コクリと(うなず)くエドガー。


「だから、同等の力の《石》は無いと思ってたんだけど……」


 メルティナはピンときたのか、ハッとしながら言う。


「……リザですか?」


「……そう。僕がリザに(おく)ったあの《石》が、同等の力を持っているって……言ってくれたんだ。フィルヴィーネさんが」


 リザの首に掛かっている、指輪をネックレスのようにした物だ。

 リザの大きさからすれば、顔と同じサイズであるが。


「あのチビ“悪魔”かぁ……」


「では、リザがサクラを迎えに行くのですか?」


「うん。この後にね……だから、忙しいんだよ……」


 「でもやらなきゃね」と、エドガーは決意に満ちた表情(かお)を見せる。

 どうやら、(すで)に覚悟は決まっているようだ。

 エミリアに、メルティナはこそっと寄って耳打ちをする。


「言い出せる雰囲気(ふんいき)ではありませんね……」

「……うん……だねぇ」


 しかし、その二人の挙動(きょどう)を読んだかのように、エドガーが()べた。


「――エミリアもメルティナも、急いできてくれたのは分かるよ。顔を見れば何となくだけど……言いたいこともきっと……多分、ローザの事でしょ?」


「えっ!?」

「――マスター……気付いていたのですか?」


 エドガーは、そっと右手の甲を見せる。


「当り前じゃないか……これでも、僕は《契約者》だよ。感覚で分かるさ……――ローザも、大変だってくらい」


 エドガーの右手の甲には、紫色の《紋章》しかなかった。

 変化した天秤(てんびん)の《紋章》ではなく、紫の月、それしかない。

 本来ならば、そこには赤い炎の《紋章》もあるはずなのに、そこには存在していないのだ。


「でも……エミリアもメルティナも、言いにくそうにしてる……きっと、ローザが言うなって言ったんだろうけど……」


「……うぅ、当たってる」

「……ローザは、もしかして」


「うん。僕が気付いてることも、知ってるはずだよ」


 《石》の使い方は、ローザが誰よりも(くわ)しい。

 フィルヴィーネは例外(れいがい)だが、メルティナは元は人工知能だ。

 サクヤとサクラも、長年《石》を使ってきたわけではない。


「もしかして、こうなるって分かってたのかな……ローザは」


「そうなんじゃないかな。多分だけど……そして――僕が行けない事も、知ってる筈だよ」


「「!!」」


 信じられないと言う顔をするエミリア。

 メルティナは、理由を理解しようとするが、あのローザを見てしまっているので、かなり葛藤(かっとう)していた。


「どうしてっ!?」


「……サクラを戻すには、コノハちゃんを消さなくちゃいけないからだよ……」


「……」

「……やはり、ですか……」


 まさかの理由に、口を(つぐ)むエミリア。

 予想はしていたのであろうメルティナは、考えるように目を(つむ)った。


「だから僕は行けないんだ……(たと)え助けを求められても、僕は行けない、行かないんだ」


 絶対に、このままではいけない。

 エミリアにもそれは分かる。でも、ローザだ。

 今、助けが必要なのは、ローザも同じなんだと、今一番それを感じるエミリア。


「――エミリア。ありがとう……そこまで心配してくれて。でもね、僕は放棄(ほうき)できないんだ……僕は【召喚師】だから……ローザは勿論(もちろん)、サクラの事も放っては置けないし……コノハちゃんの事も、放っておく気はないんだよ」


「……それって……どういう」


 それは、ここ数日エドガーが考えていた事だ。

 サクラを元に戻して、かつコノハを失わない為の、唯一(ゆいいつ)の方法。


「……!」


 エドガーの言葉を待っていたメルティナが、【召喚の間】に近付く気配(けはい)に振り向く。

 エドガーも気付き、言葉を止めた。


「――それは直接、本人に言うよ……僕の答えを。【召喚師】としての――覚悟をさ」


 エドガーの出した答えは、後に大きな世界の(ひずみ)となる。

 それを理解しながら、エドガーはその答えを選択した。

 覚悟は、もう決めている。

 世界を変える(・・・・・・)覚悟と、異世界人を巻き込むと言う覚悟が。





「エミリア殿、それにメル殿も……どうしたのです?」


 こんな所で、と言う意味だろう。

 サクヤは眠そうにするコノハを連れて、地下に来た。

 後ろではフィルヴィーネが、肩にリザを乗せてついて来ていた。


「あ~、え~っと……」


「ワタシは帰って来ただけです」


(ズルいっ!!)


 うまく逃げたメルティナに、エミリアは涙目で(にら)む。

 どうするかと必死に思案(しあん)していると、エドガーが。


「遊びに来ただけだよ。そのついでに、荷物(にもつ)運びをしてもらっただけさ。【聖騎士】も以外と(ひま)なんだってさ」


「あぁ~、そうでしたか!しかしエミリア殿、忙しくなったと言うのに遊ぶ余裕(よゆう)があるのだな……」


「え、ああ~。うん、ま、まぁね~……」

(エドありがとう!でも余計(よけい)な一言だよ!だよぉ!)


 視線(しせん)で感謝と共に(うら)みを送るが、エドガーはフッと笑うだけで、そのまま作業を続ける。

 その今まで見ない仕草(しぐさ)に、不覚にもドキリと胸を鳴らして。


 エドガーがコノハに何を言うのかと、エミリアは想像も出来ない。

 メルティナはほんの少しだが、同じ異世界人の観点(かんてん)から想像は出来るが、それがいかに大変な事かを考えると、突飛(とっぴ)だと考えを捨てた。


「――フィルヴィーネさん。さっきのお願い(・・・・・・・・)、考えてくれましたか?」


「……ああ。仕方がないからな……」


「良かった……ありがとうございます。それでは、メルティナと……」


「――え?」


 エドガーはフィルヴィーネに笑顔で感謝を告げる。

 しかし、自分の名が出てくると思わなかったメルティナは素直に(おどろ)き、エドガーとフィルヴィーネに視線(しせん)彷徨(さまよ)わせた。


「そう言えば、メルティナには言ってなかったか……――でも、これはエミリアとメルティナが言いたい事にも(つな)がるから、いいかな……?」


「え、何が……?」

「……?」


 エドガーが一人で解決してしまっている中、エミリアとメルティナは困惑(こんわく)する。

 メルティナも、これはまったく予想出来ていなかった事らしい。

 そんな二人に答えをくれたのは、フィルヴィーネだった。


「先程な、エドガーに頼まれたのだ――城に行ってくれと……な」


「「!?」」





 それは、ローザとスィーティア王女が戦っている時だった。


 エドガーは右手に違和感(いわかん)を覚え、確認してみると。

 そこにローザの《紋章》は無かった。


『――ぐっ……うっ』


 喪失感(そうしつかん)にも似た感覚が一気に押し寄せてくると、右手を押えて(うずくま)る。

 《紋章》の消失が、ローザの身に何かあったと知らせてくれたのだ。


『……ローザ、ローザに何か……でも、僕はっ……』


 しかしその時、(すで)にエドガーはサクラとコノハの事態に終息(しゅうそく)を着けるべく決意していた。

 だから急いで、エドガーはフィルヴィーネの居る場所に向かい声を掛けた。


『――フィルヴィーネさん、城に行ってもらえませんか……?』


 その時フィルヴィーネは入浴中だったが。扉越しに、何とか話を聞いてもらえた。

 なぜ昼間から入浴していたのかと言うと、リザのお清め(・・・)だ。

 “悪魔”を清めていいのかと言われれば、それもそうだとしか言えないが、《石》には必要な事らしいので、エドガーはそれ以上は言わなかったが。


何故(なぜ)だ?』


『ローザに、何か起こったみたいなんです……契約の《紋章》が消えてしまって』


『そうだな……確かに《石》の反応が(にぶ)い。ロザリームに何か起こったことは確定だ。だが、何故(なぜ)(われ)が行かねばならぬのだ?』


『そ、それは……』


 確かにそうなのだ。フィルヴィーネが正しい。

 自分で行けばいいのだと、確かにそうも思う。

 むしろ、自分で行ってこその《契約者》なのだが。

 エドガーは、決めてしまっている。


『――無理です。僕は、ローザを助けに行けない……きっと、ローザもそれを(のぞ)まないから』


『……なるほど。それもそうだな……確かにあ(やつ)が言いそうなことだ。だが、それで(われ)に行けと言うのは、(いささ)か身勝手ではないか?』


 ちゃぱちゃぱと水音をさせて、フィルヴィーネが正論を言う。

 『ニイフ様!』とリザが(さけ)んだ気もするが、エドガーは扉に背を預けフィルヴィーネの言葉の続きを待った。


 少し待ち、フィルヴィーネの言葉が続かない事をおかしいと思ったエドガーは。


『あれ……フィルヴィーネさ……――んっ!?』


 ガラガラ――っ!と、突然開かれた大浴場の扉。

 当然ながら、背を預けていたエドガーはそのまま後ろに倒れていく。


『……って!』


 ゴチンとタイルに後頭部を打ちつけ、両手で押さえる。

 しかし、真上に気配(けはい)を感じ、恐る恐る目を開けた。

 大浴場(おんなゆ)で気配を感じて、何故(なぜ)目を開けたのか。


『――……えっと……その』


 目の前にはフィルヴィーネの下半身。

 ()らそうとしても、何故(なぜ)か勝手に目がそちらに向いてしまう。


『身勝手を(つらぬ)くと決めたのならば、(われ)はそれに同意しよう。しかし、覚悟のないまま進もうと言うのなら、(われ)は契約の解除を要求するぞ……』


 こんな状況(じょうきょう)で、とんでもない事を言い出した“魔王”様だった。


『……!!』


『《契約者》の……“召喚”した責任を果たしてもらうぞ――エドガー・レオマリス』


 真っ赤な顔のエドガーを見下(みお)ろして、“魔王”フィルヴィーネの言葉は、エドガーの心に突き刺さった。


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