表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第2部【動乱】篇 1章《帝国内乱》
232/383

08話【エミリアとコノハ】



◇エミリアとコノハ◇


 荒野の調査結果(ちょうさけっか)帝国侵入(ていこくしんにゅう)を話し、そしてサクラの現状(げんじょう)(つた)え終え。

 エドガーはエミリアをサクラのもとに連れていく。


『じゃあローザ、殿下(でんか)とあの話し……進めてくれるかい?』


『――ええ。分かったわ』


 ローザに、ここで依頼(いらい)の話しをしてくれと頼み、サクヤとエミリア、そしてフィルヴィーネを(ともな)って、部屋に向かった。

 残されたのはローザとメルティナ。

 そしてローマリア王女とノエルディアだ。

 フィルヴィーネがついていった理由は、部屋にリザがいるからだ。

 少々面倒臭(めんどうくさ)そうだったが、エドガーに言われて渋々(しぶしぶ)と言った感じだった。


『……ローザ、あの話しと言うのは、まさか……』


『ええ。依頼(いらい)の件よ』


 ソファーに座り直して、ローザは(あらた)めてローマリア王女に言う。


指南役(しなんやく)依頼(いらい)……受けさせてもらうわ。今度は、私だけの意志ではなく……私の(あるじ)であるエドガーの快諾(かいだく)()ている……そんな顔(・・・・)をしなくても、もうややこしい事にはならないわよ』


『そ、そうか……それはよかった』


 ローマリア王女は、以前この話しを打診(だしん)した(さい)に、サクラが反対したことを思い出してか、不安そうな顔をしていた。


『私も、やれることをすると約束したのよ、エドガーと。サクラとサクヤの為にね……』


 この世界に来た異世界人の先輩として、姉代わりとして。

 《契約者》であるエドガーが、ローザと(はな)れてでも解決(かいけつ)したい事柄(ことがら)を、ローザも受け入れた。

 その為には、王城にある情報も重要なファクターとなる。

 そして現状(げんじょう)、それが出来るのはローザだけだった。


 王女に依頼(いらい)された指南役(しなんやく)としての仕事を、《石》の事を調べる切っ掛けに出来る。

 それに、王城にはエミリアもいる。

 何より、多少(あや)しまれても、ローマリア王女の指南役(しなんやく)として、王城で動く事が出来るのは大きい。

 エドガーはそれを考えて、ローザが依頼(いらい)を受けることを快諾(かいだく)した。


『ありがとう。ローザ……早速、私は姉上に帝国の事を報告する。そうすれば、近日中には入城できるように手配(てはい)しよう』


『ええ。頼むわ』


 荒野の調査(ちょうさ)と、帝国の動向。両方の情報を手に入れられたのは大きいはずだ。


⦅姉上にだって……これだけの情報があれば文句(もんく)はないはず……問題があるとすれば……⦆


 もう一人の姉。スィーティアだ。

 《石》を所有(しょゆう)するスィーティアは、赤や黒(・・・)と言っていた。

 それは、ローザ達を指す言葉でもあると、流石(さすが)にローマリアも理解できる。


⦅いや……それでも、何とかして見せる……私が……!⦆


 二人の姉の影で、民衆(みんしゅう)にすら姿を隠されていた王女の、追襲(ついしゅう)が始まる。





『コノハちゃん……入るよ?』


 コンコンとノックをして、エドガーは部屋の扉を開ける。

 すると、目に飛び込んで来たものは。


『――うぎゃぁっぁぁあああぁぁぁっ!!やめ、やめろぉぉぉお!!』


『あははっ。あははっ……あははははっ!』


 お人形遊びをする、見た目17歳の5歳児の少女だった。


『あぁ~。なんか(ゆる)したかも、私』


 コノハに遊ばれるリザを見て、エミリアはにやける。

 あの怒りが(うそ)のように晴れていく。


『エ、エミリア……って!それどころじゃない』


 エドガーは、笑みを浮かべるエミリアに一瞬だけ恐怖心(きょうふしん)(いだ)くも、()ぐにコノハのもとに向かってリザを助ける事にした。




 むすっとするコノハ。

 玩具(リザ)を取り上げられて、この表情だ。

 壁に向いて、エドガー達を見ようとしない。


『ど、どうしよう……』


『これコノハ……主様(あるじさま)が困っているでしょう?』


『だって姉上……』


『だってではないわよ……散々(さんざん)振り回しておいて、この小娘ぇぇ』


 サクヤに言われて、コノハはこちらを向いてくれたが、表情はまだムッとしていた。

 リザは、エミリアの(ひざ)の上でグロッキー状態だった。


『――良いザマね。チビ“悪魔”』


『グゥ……この小娘まで来ているとは!!』


 エミリアの(ひざ)をバシバシと叩くリザだったが、当然痛くも(かゆ)くもなかった。


『ま、この状況(じょうきょう)が見れただけで気分がいいから、(ゆる)してあげるわよっ。リザ……だっけ?』


『……うっ。そ、そうだが』


 エミリアも、そうそう怒っていた訳ではないのか、リザの暴言を(ゆる)すと言った。

 しかし、エミリアはリザを両手で(つか)み上げて、サクヤとコノハのもとへ行く。

 それだけで、自分の末路(まつろ)(さと)るリザ。


『――え、ちょっ!小娘っ!貴様……いや、エミリアと言ったわね。はな、話しをしましょう!ちょっとお願い、頼みます!』


『い~やっ♪』


『―――エ!……エドガァァァァァァァ!!』


 リザの悲鳴は、こんな(おそ)ろしい幼馴染を連れて来た、エドガーに向けられたのだった。





 コノハの手には、お人形と化したリザが死んだ目でエドガーを(にら)んでいた。

 エドガーはそれを完全に無視して、エミリアを紹介する。


『コノハちゃん。この人はエミリアって言うんだ、僕やサクヤ、お姉さんの友達だよ』


『こんにちは。コノハちゃん……私のことは、そうだなー、あ、そうだ。エミリアちゃんでいいよ』


 サクラがそう呼んでいたように。

 コノハにもそう呼んでもらう事で、少しでも切っ掛けになればと、エミリアなりの考えだ。


『……エミリア……ちゃん……?』


『うん。コノハちゃん』


 優しく、目の前にいる人形の様な“悪魔”に対する態度(たいど)とは全く別物の表情で、エミリアはコノハに(せっ)した。


主様(あるじさま)……エミリア殿は、お優しいのですね⦆

両極端(りょうきょくたん)なんだよエミリアは。一か百になっちゃうんだ、でもだからこそ、コノハちゃんに(せっ)する事が出来るんだよ、サクラの時と、変わらずね⦆

⦅……そうなのですね……感謝します、エミリア殿⦆


 小声で、サクヤとエドガーはエミリアに感謝をする。

 その後エミリアの一言で、リザもコノハから解放されたのだった。


 後ろで見守っていたフィルヴィーネは、疲れ果てたリザを胸の谷間(たにま)(はさ)み込み、一言。


『――どうだった?……人間に受けた(ばつ)は……』


(ひど)いものです、フィルヴィーネ様……私を山車(だし)に使うなど。ですが、エミリアのポテンシャルは分かりました』


『ほう……では、どうだったと言うのだ?』


驚異(きょうい)……でしょうか。フィルヴィーネ様は気が付いていないでありましょうが……』


『――構わぬ、続けよ』


 下手をすれば侮蔑(ぶべつ)と取られかねぬ発言も、フィルヴィーネは(ゆる)す。

 自分がリザに命じた、エミリアの調査(・・・・・・・)、わざととは言え、混乱を(まね)いた事は素直に謝辞(しゃじ)をせねばならぬと理解して。

 フィルヴィーネは昼間、城に行くメルティナと共に、リザをついて行かせた。

 誰にも聞こえぬように、『エドガーの幼馴染を挑発(ちょうはつ)してこい』と()げて。

 そして、この夜が答え合わせだった。


素質(そしつ)はあります。この小娘は、異世界人に好かれています……フィルヴィーネ様も、少なからずお気に()していると思われますが……?』


『……そうだな。それは(みと)めよう』


『エミリア・ロヴァルトは、次代の英雄(・・・・・)素質(そしつ)を秘めています……それこそ、ロザリーム・シャル・ブラストリアが(いた)れなかった、【勇者】のように……あくまでも可能性、ですが』


『……』


 次代(じだい)英雄(えいゆう)

 この国に、英雄(えいゆう)と呼べる存在はいない。

 【月破卿(げっぱきょう)】レイブン・スターグラフ・ヴァンガードを失った聖王国に、もはや英雄(えいゆう)は存在しないのだ。


『フィルヴィーネ様は覚えていますか?』


『――何をだ?』


『私たちの時代に存在した、最後の英雄(・・・・・)、です』


『……ロザリーム・シャル・ブラストリアが【勇者】になり損ねた数年後、突如(とつじょ)として現れた、人間の英雄(えいゆう)……確か、名は――』


 誰が(のぞ)んで、誰が押し上げたのか。

 しかしその者の名は、未来には(つむ)がれてはいない。

 何故(なぜ)ならば、その英雄(えいゆう)すらも、フィルヴィーネが“召喚”された(のち)に、消え去っているのだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ