第1部【出逢い】篇 3章のあらすじ
◇第1部【出逢い】篇 3章のあらすじ◇
《第3章【近未来の翼】》
【大骨蜥蜴】を倒したエドガー達であったが、エドガーは魔力の使い過ぎで、まともに身体を動かせない状況が続いていた。
そんなエドガーを、何故かサクラだけが看病していたのだが、それは数日前に決めた、異世界人+エミリアによる不毛な戦いの結果だった。
サクラの世界の玩具で、一人になるまで続けられた争いはサクラが勝利し、見事その権利を獲得していたのだが。
エドガーの不調の原因を教えなければいけない羽目になるなど、勝者の権利とは言い難いものだった。
そしてエミリアは、不毛な争いに敗北して以降、【福音のマリス】に訪れる事が出来ていなかった。
それも、王城からの書状が届き、身動きが取れない状況になっていたからだ。
書状には、エミリアとアルベールの兄妹を王城に招待すると言うもので、直ぐにでも準備にかからなければならなかった。
王城に招かれたエミリアを待っていた人物は、【リフベイン聖王国】の第三王女、ローマリア・ファズ・リフベイン殿下だった。
しかもその王女は、【大骨蜥蜴】の戦いの際にエミリアが助けた女の子だったのだ。
ローマリア王女はエミリアの才を見抜き、自分の部下にしようと考えていたらしい。
急な事態に少々失礼な態度をとってしまうエミリアだったが、王女は気にすることなく笑う。
そこで出会った【聖騎士】、オーディンとノエルディアも、受け入れる事を了承しているようだった。
そして、帰宅したエミリアだったが、帰り際に渡された書簡に目を通すと、驚くことにエミリアとセイドリック・シュダイハと言う貴族の青年と結婚が決まったと記されていたのだ。
次の日にそれを聞いたエドガー達は、それぞれの世界観の違いに驚くも、エミリアと結婚することになった男、セイドリックの調査をすることにした。
サクヤが単独でセイドリックの調査をしている間、ローザとサクラは、エドガーの魔力を回復するために尽くす。
数日掛けて、エドガーは何とか自由に動けるまでは回復したが、【大骨蜥蜴】との戦いで見せた攻撃は使うなと、ローザに念を押される。
そしてサクヤは、セイドリック・シュダイハの姉、ルーリアと出会っていた。
そんな中、再びエミリアが城に行くことを聞きつけたセイドリックが、一度エミリアの顔を拝んでおこうと画策し動く。
その会話を聞いたサクヤはエドガーに知らせると、【福音のマリス】一行は夜の王都に馬を走らせた。
待ち伏せの如く敷かれた布陣に、エミリアを迎えに来ていた【聖騎士】オーデインは応戦することを選択。
応戦する【聖騎士】オーデイン達に、卑劣にもセイドリックは街中で火矢を放った。
一歩間違えば、王都が火の海になるという事も考えずに、無謀な事をするセイドリックに怒るエミリアは、エドガーとローザが作ってくれた槍を振るい、火矢の炎を吸い出すことに成功。
しかしセイドリックは、エミリアを見た瞬間に気に入り、いっそ連れて行こうと考える。
そこに現れたのは、エミリアとセイドリックの結婚を画作した張本人、聖王国の大臣、ジュアン・ジョン・デフィエルだった。
大臣は多数の重装兵を引き連れて参上し、書状を持って現れた。
エミリアを連れて行けと言う大臣、セイドリックは嬉々としてエミリアに近付くが、それを阻んだのはエドガーだった。
エドガーの炎弾の前に尻餅をつくセイドリック。
エドガーはエミリアを抱き寄せ、『エミリアに触れるな』と強く叫ぶ。
セイドリックはエドガーに一騎打ちをしろと凄むがエドガーは完全に無視して兵士達と戦う。
吹き飛ばされた兵士に潰されるセイドリック、そんな中、増援の騎士達がぞろぞろと押し寄せる。
エドガーはローザの助言を聞かずに、【大骨蜥蜴】との戦いで見せた炎弾を放とうとする。
しかし、魔力が足りずに不発。足りない魔力を補おうと、炎弾は勝手に異世界人達からも魔力を吸い上げて、異世界人達も行動不能になると言う悪循環に陥ってしまう。
倒れる異世界人とエドガー、そんなエドガーに、大臣が持つ剣がエドガーの肩口をとらえる。
このままでは、エミリアを助けるどころか自分達までやられてしまう。
起こしてしまった事態に、エドガーは自分を責めるが、そんな状況を打破したのは。
“魔人”と化したローザだった。
魔力が尽きたことで発動する、【魔人導入】が、ローザの姿を変貌させ、兵士達は怯えて立ち竦む。
ローザの力は、多少の熱を持つ金属を自然発火させるものだった。
兵士達は鎧や盾、剣を燃やされて、逃げまどい。
大臣が持つ剣も、エドガーに届く前に燃え尽きた。
吹き飛ばされて気絶する大臣。
“魔人”と化したローザを止められるものはおらず、混沌とした戦場に静寂を与えたのは、王城の方角からやって来た一団だった。
ローマリア・ファズ・リフベイン第三王女が、軽装鎧を纏って現れ、場を静める。
遅れてしまった事を謝辞しつつも、まるでローザを“精霊”のようだと例え、この場を後にする。
翌日、【福音のマリス】に訪れたローマリア。
大臣は、ローマリアから盗み出した王家の印を使って、独断で命令を出していたのだ。
エミリアとセイドリックの結婚状に記された印も、それを使ったものだった。
本物の印が使われていた事で、結婚自体は覆せないと言う。
そこで、結婚を懸けた決闘を行うことで決着をつけようと打診する。
袋詰めで連れてこられたセイドリックも了承し、5対5の団体戦が行われることになった。
その状況に、一番戸惑ったのはサクラだった。
エミリアが“魔道具”の使用というルールを設けた代わりに、セイドリックが突きつけた条件が、ローザの出場を禁止すると言うものだった。
つまり、エドガー、エミリア、アルベール、サクヤ、サクラと言う5人で出場しなければならない。
気付いたのだ、自分が出場しなければならないと。
それからは鬱屈した気分のまま過ごしていたサクラ。
負けてはならない戦いに自分が出なければならないなど、プレッシャーに耐えられない。
しかも、ローザやサクヤが自分に気を遣っている事を目の当たりにしてしまい、さらに落ち込む。
そんな中で、宿の唯一の従業員であるメイリンが付けていた帳簿を見てみると、驚くことに、宿の経営状態は火の車だった。
気を紛らわすように、エドガーと一緒に帳簿を確認するサクラは、エドガーのふとした言葉に混乱して取り乱してしまう。
そんな時、どうやら二人を観察していたローザが間に割って入り、サクラを平手打ちする。
驚くエドガーを尻目に、サクラは逆に冷静になれたようで、ローザに感謝した。
サクラが無理に戦わなくてもいいように、最大限配慮された作戦。
“魔道具”の使用が許可されているという利点を用いて、立てられる。
そしてサクラは、条件として“召喚”を見せてほしいとして、地下に向かうのであった。
地下の【召喚の間】に入り、棚に置かれた様々な“魔道具”を鑑賞するサクラ。
何か違和感を感じるエドガーも、楽しそうなサクラに安心していた。
そしてサクラの望むままに“召喚”を見せる。
無事に成功し、キーホルダーを“召喚”して見せたエドガーに、サクラは喜ぶ。
そんな時だった。
エドガーが感じた違和感、それは、本来この場になかったはずの物が目に入っていたからだ。
緑色の《石》、それが急に発光し、エドガーから大量の魔力を吸収していく。
魔法陣は大きく書き換えられ、棚に置いてあった様々な“魔道具”も吸い込まれる。
ついには光で目を開けていられなくなったエドガーとサクラ。
光が治まり、やがて聞こえてきたものは。
『フリーズ』と、銃口を向けられるエドガー。
突然現れた緑色の女性に、戸惑いながらも心当たりがあるエドガー。
それは【異世界召喚】だった。
しかし、一切好意的ではないその女性とエドガーの間に、サクヤが割って入る。
いざ戦闘が開始されると言う時、その新たな異世界人の女性は、突然倒れ、気を失ったのだった。
ローザと一緒に確認すると、エドガーの背に《紋章》が浮かび上がっていた。
それは、この女性がエドガーと契約した証だ。
ローザは呆れながらも、私が見張っておくからと、用事のあるエドガー達を見送ったのだった。
エドガーはエミリアとの待ち合わせが。
サクラとサクヤはメイリンの手伝いがあった。
ローザは新たな異世界人の見張りをしていた。
それぞれの場所で各々の役目を果たしていた【福音のマリス】一行だったが、事件が発生してしまう。
サクヤが依然知り合ったルーリアが、何者かに追われていたのだ。
武器を取り、ルーリアを追う男達は、確実に殺す気でいると悟ったサクヤは、単独でそれに向かい、ルーリアを助ける。
しかし、ルーリアを追ってきた男達に囲まれ、毒矢を受けて負傷してしまう。
そんな窮地を救ったのは、新たな異世界人である、メルティナだった。
ローザに食事を貰ったメルティナは、恩を売ると言う思惑でローザに協力した。
【心通話】でサクラから連絡を受けたローザは、メルティナを援軍に向かわせたのだ。
情報の開示と言う条件で。
サクヤの毒を中和し、サクヤ達を連れてメルティナは空を飛び、この場から飛び去った。
一方で、エミリアとの約束があったエドガーは、エミリアと共に来たローマリア王女に驚かされながらも、買い物に付き合っていた。
聞かされた話だと、どうやら城から抜け出してきたらしい。
そんなローマリアを、【聖騎士】ノエルディアが迎えに来る。
残されたエドガーとエミリアは、何をすることもなく、帰路に立った。
次の日、サクヤは【鑑定師】マークスの家でルーリアと共に保護して貰っている。
そしてエドガーは、後ろから突き刺さるメルティナの視線に戸惑っていた。
そんな中、事態は急変する。
ローマリアの名代として訪れた【聖騎士】ノエルディアが、一通の書状をエドガーに渡す。
その内容はまさかの、決闘の日にちを早めると言うものだった。
第一王女であるセルエリスに知られ、早められてしまったのだと言う。
自分のせいで、ろくに準備も出来ていない状態で決闘を迎えることになってしまった。
自分を責めるエドガーだったが、ノエルディアが帰り際に渡したもう一通の手紙を読み、心を揺さぶられる。
『私は其方の味方だ』、エドガーが“不遇”職業でありながら、自分は味方だと宣言してくれる王女の言葉に、暖かいものを感じ嬉しさが込み上げる。
しかし、それを感じていたのはエドガーだけではなかった。
エミリアもまた、同じ内容の手紙を受け取り、読み、居ても立っても居られなくなって、【福音のマリス】までやって来た。
エドガーに抱きつくエミリアと引きはがそうとするローザ、更にはサクヤまでやってきて、混乱状態に。
それに終止符を打ったのは、何か吹っ切れたようなサクラの行動だった。
エドガーを思うエミリア、エミリアを思うエドガー。
互いを思う気持ちで、一つになる事が出来た。
異世界人達も、各々が協力してくれる。
そんな空気の中、メルティナだけが不穏な気持ちを抱き、この場から脱していた。
そして翌日、とうとう決闘が開始される。
しかし、一回戦の出場者アルベールが来ない。
妨害を受けていたアルベールは、時間ギリギリに到着し試合に出るも、ジュダス・トルターンに敗れてしまう。
二回戦は、覚悟を決めたサクラの出番だった。
自分から進んで出場したはいいものの、負ければ後がなくなる状況に、サクラは精神的に攻めるしかなかった。
言葉で、態度で、相手であるカリーナ・オベルシアを挑発し、憤らせる。
功を奏し、サクラは何とか勝つ事が出来た。
そして、一勝一敗のまま、出番はエドガーに回ってくる。
試合は圧倒的だった。
エドガーの持つ剣が強すぎて、普通の剣では太刀打ちできない状況だったのだ。
相手のフェルドス・コグモフも、早々に心を折られ降参するも、エドガーの試合だけの特別審判は認めない。
これは、ローザの予想通りだった。
エドガーが勝つことは、決してないと。
どんなに圧倒的に勝とうとも、難癖をつけてエドガーを敗北させる。
態度を見て、それは確実だと判断した。
フェルドスは、ついに場外から出てしまう。
その時点で勝敗は決められるはずなのだが、宣言はされない。
フェルドスは大将であるセイドリックに懇願するも、様子のおかしいセイドリックは、なんと【魔石】をフェルドスの身体に埋め込んだ。
止めようとしたエドガーは場外負けを言い渡されるもそれを無視。
エミリアやローザも、【魔石】の危険性を知っているので、決闘どころではないと判断した。
“悪魔”と化したフェルドスに恐怖を隠せない観客たちは悲鳴を上げて逃げ惑う。
“悪魔”バフォメットと対峙するエドガー達は、元凶であるセイドリックも、異変をきたしている事を察して戦う。が、セイドリックも異様に強く、エミリアが致命傷を負ってしまう。
人外染みた力でエミリアを宙に投げ飛ばす。
その先は、バフォメットの口だった。
エミリアを救ったのは、メルティナだった。
バフォメットを吹き飛ばし、エミリアを抱きかかえるメルティナは、直ぐに治療をする。
安心したエドガーとローザはバフォメットと戦い。
メルティナはエミリアの遺伝子情報を調べると、それが前マスターのティーナ・アヴルスベイブと同じものだと確信。
路地裏で受けたエミリアの言葉と、元の世界でティーナから受けた言葉をリンクさせ、エミリアを助ける事を誓う。
セイドリックと対峙するエドガーは、新たに覚醒した力でセイドリックと戦い勝利する。
しかし、バフォメットはそのセイドリックの遺体を口に運び、完全に【魔石】を統一させてしまう。
エドガー、ローザ、エミリア、そしてメルティナは、“悪魔”バフォメットを倒すことを心に決め、立ち向かう。
満身創痍になりながらもバフォメットを倒す事が出来たのは、メルティナが真に異世界人となったからだった。
半機械のようだった身体が人間と同義となり、口調や表情も人間と変わらなくなった。
そして、エドガーを新たなマスターと認めたメルティナは、必殺の一撃でバフォメットを屠ったのだ。
事件は円滑に進められ、何事もなかったかのように平穏が戻った。
エミリアは、功績が称えられ、【聖騎士】に正式に昇格が発表され、今回活躍したサクラは下町から多大な人気が出る。
そして、陰で暗躍していた帝国の面々は祖国に戻り、次の盤面へ。
誰もいない【召喚の間】で笑うのは、胸に《石》を輝かせる白銀の女性と、へそに《石》を光らせる幼女だった。




