表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 4章《残虐の女王が求めるもの》
210/383

196話【出逢い1】



◇出逢い1◇


 展望台(てんぼうだい)にいたエリウス達は、()ぐにローブのフードを(かぶ)った。

 このローブは、【薄幸(はっこう)法衣(ほうい)】という“魔道具”だ。

 使用者の存在感(そんざいかん)(うす)める効果がある。


何故(なぜ)こんなに近くまで気付かなかった!レディル」


「――知るかよ、俺はしっかり【死の神(オルクス)の眼】を使ってたっつの!!」


 物陰(ものかげ)に隠れ、いがみ合う男二人。

 それに対して、別の物陰(ものかげ)に隠れた少女二人は。


「……赤髪の女……ローザ!楽しみだなぁ!」


「――エ、エリウス様……?」


 ガラリと雰囲気(ふんいき)を変えたエリウス。

 フードを目深(まぶか)(かぶ)り、ちらりと見える耳に光るイヤリングが、その雰囲気(ふんいき)を変えた“魔道具”だ。


(わたし)は待っていたんだよっ……!強敵に逢えることを、戦える喜びをさっ!!」


 少年のようでもあり、少女のようでもある。

 存在を不確定(ふかくてい)にする“魔道具”、【幻想の耳飾り(ファントムイヤリング)】。

 久しぶりにこの“魔道具”を発動させた事で、エリウスも(たかぶ)っていた。

 少年にも少女にも聞こえる声音(こわね)で、エリウスはリューネに言う。


「リューネ。相手は数人ってレディルが言ってたね……相手、出来るかい?出来るよねぇ!」


「――は、はぃっ!」


 普段と違う、違いすぎる主人の(たかぶ)りに、リューネは「はい」と答えるしかなかった。





 階段から展望台(てんぼうだい)へと入るゲートまで、十刻(じゅっこく)(十分)程で到達(とうたつ)したエドガー、ローザ、フィルヴィーネの三人。

 本当はもう少し急げたのだが、何だかローザが高い所が苦手らしく、時折(ときおり)立ち止まっては「すぅ、はぁ」と、深呼吸(しんこきゅう)をしていた。


「……何故(なぜ)ついて来たのだ、其方(そなた)


「エ、エドガーが決めたことに歯向かうわけないでしょ……」


 若干(じゃっかん)(ふる)えながら、ローザはフィルヴィーネに言う。

 エドガーは(かわ)いた笑みを浮かべながら。


「ローザが高所(こうしょ)が苦手だって分かってたら、メルティナに頼んだんだけどね……」


「私だって知らなかったわよ!自分が高所恐怖症(・・・・・)だなんてっ!」


 フィルヴィーネさんと空中で戦っていなかった?とは、()えてエドガーは言わなかった。


「――む!?……ええいバカ者!落ち着かぬかっ、気付かれておるぞっ!」


 フィルヴィーネは、感知対策として《魔法》を使っていた。

 そのおかげで、ここまで気付かれること無くすんなりとこれたのだが、どうやら今のローザの叫びで《魔法》が(ゆが)んだ。気付かれたらしい。

 意外な所でドジを()むのがローザだと認識した。


「す、すみません!!」

「――ご、ごめん」


 真剣(マジ)なトーンのフィルヴィーネに、(たまら)らず二人は(あやま)った。

 まぁ、悪いのは明白なのだから仕方が無い。


「いいか?敵は……4人だな、各々(おのおの)が隠れている……遮蔽物(しゃへいぶつ)はあまりないから、()ぐに戦闘に入るだろう……ってどうした?ロザリーム……」


 フィルヴィーネが丁寧(ていねい)に説明していることに、違和感(いわかん)、と言うか疑問(ぎもん)を持つローザ。


貴女(あなた)……《石》の反応が無いのに分かるの?」


「当然であろう……魔力を感じる。(かす)かだがな、上手く隠しているが、(われ)には意味なしだ」


 “魔道具”は隠せても、内から(あふ)れる魔力を完全に隠すことは難しいと言うフィルヴィーネ。


「――それってつまり……初めから知っていたの?」


「……。……。……あ」


 この“魔王”様は、初めから知っていたのだ。

 敵が何人いるかも、どこにいるかも。魔力を感じる事で、誰よりも正確に理解していた。


 聞かれなかった。

 そう言われれば、もうどうしようもないが、フィルヴィーネは正直に本音を言う。


「――うむ、知っていた……だが(われ)が本質的に手助けする事は無い。必要も無いからな……」


「そ、そんな……」


 エドガーは(おどろ)くように言い、ローザは。


「“魔王”の力は絶大。貴女(あなた)介入(かいにゅう)すれば……全て(とどこお)りなく解決する……そう言いたいの?」


「――結論から言えば、そうだ。だから(われ)は今後も、トラブルに(おの)ずと突っ込んでいく気はない。エドガーに助けを求められれば多少は考えるが、今回のように……歯車(・・)を回す必要がある時は、絶対に助力はしない。覚えておくがいい」


 歯車(・・)を回す。それは何の?誰の?

 (いな)。全員のだろう。

 エドガーの、異世界人達の、運命の歯車。

 フィルヴィーネはサクラとサクヤに言った。

 「“運命”ではなく“必然(ひつぜん)”だと思え」と。


 (さだ)められた“偶然(ぐうぜん)”を“必然(ひつぜん)”と(とら)える事で、何事も前向きになれる。

 そんな意味合いがあるかもしれないと、勝手に納得(なっとく)したエドガーであったが、今のフィルヴィーネの言葉を聞いて、少し思うところがあった。

 それは。


「それじゃあ……今後は協力を()られない……って事、ですよね?」


「――うっ、ま……まぁまて、何もまったく協力をしないと言う訳ではない。お主等(ぬしら)が解決しなければならぬ事に、“神”は(ことわり)(くつがえ)すような真似(まね)は出来ぬのだ……“神”であった手前、(みちび)くことは出来ても、答えをそのまま教える事はは出来んのだ……(ゆる)せエドガー……あと、その子犬の様な顔をやめよっ!意思が揺らぐであろうが!」


 視線(しせん)()らしながら、フィルヴィーネは告げる。

 元々“神”である為、ある程度の(ことわり)は理解してしまう。

 これから何が起こるのか、どうすればいいのか、断片的だが解釈(かいしゃく)を一瞬で出せてしまう。

 それは、人としては面白くない事だとフィルヴィーネは思っている。

 だからこそ、エドガー達には必要ない。

 助力はしよう、だが解決(かいけつ)(おのれ)でしろ、そう言いたいのだ。


(あきら)めなさいエドガー、“神”とはそう言うものよ、この女は“魔王”だけれどね……」


「……そ、そっか。分かった……今後も、助力お願いします」


「……う、うむ……何故(なぜ)だか釈然(しゃくぜん)とせぬが、まぁいいであろう」

(ロザリームの言う事はすんなりと聞くのかこの男は……なんであろうか、この……自分の()っていた動物が他人に(なつ)く気分だ)


「……それじゃあフィルヴィーネ、早速協力してもらうけれど、いいのね?そのつもりでついて来たのでしょうし」


「うむ。まぁな。相手は四人だ……それも“魔道具”を上手く使える者共だ……数的に仕方あるまい」


「分かった……一人だけでいい。(おさ)えて」


「いいだろう。エドガーも用意しろ……戦闘になるぞ」


「――あ、はいっ!」


 あんなことを言ったのに、いきなり協力してくれるんだ。

 そんな顔をして、エドガーは【片手半両刃剣バスタード・ツインセイバー】を二刀流状態で手に持つ。

 ローザも、いつもの長剣を《石》から用意した。

 何故(なぜ)か同じものを4本、両手に持ち、残りの2本は腰のベルトに差した。

 (さや)の無いまま差してるけど大丈夫なのだろうか。


「行くわよ……――開幕(かいまく)から飛ばす!……【火炎弾(フレアボム)】!!」


 ローザの宣誓(せんせい)と共に、分厚(ぶあつ)鉄板(てっぱん)の扉が、見事に()き飛んでいった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ