表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 4章《残虐の女王が求めるもの》
208/383

194話【帝国の優遇職業】



◇帝国の優遇職業◇


 突如(とつじょ)として現れた、赤く高い(とう)。【東京タワー】。

 この異世界には似つかわしくない、鉄骨(てっこつ)で組み上げられた建造物。

 この(とう)の出現に(おどろ)いていたのは、エドガー達【福音のマリス】一行(いっこう)だけではなかった。


 【魔導帝国レダニエス】、皇女(こうじょ)エリウス。

 それら一行(いっこう)もまた、エドガー達と同じく(おどろ)いていたのだ。

 そして彼女らは、エドガー達よりも近くに。【東京タワー】が現れた真下にいた。

 この塔が出現した瞬間を、目撃している。


「……(おどろ)くに決まっているわよね……流石(さすが)に」


 驚愕(きょうがく)に目を()くエリウス、部下のレディルやカルストですら、声を出すことすら忘れて見上げていた。

 その(おどろ)きようで、この(とう)の出現がエリウス達、帝国の仕業(しわざ)ではないことが分かる。

 リューネなんかは、(おどろ)いて尻餅(しりもち)をついていた。


「――なんだこの建物……鉄骨(てっこつ)で出来てんのか……?すっげぇ数だな。ざっと見積もっても300メドル(m)はありやがるぞ……」


「4本の足で(ささ)えているのか……ん?入り口らしきものもあるな……どうやら入れるぞ」


 レディルとカルストが、異常事態(いじょうじたい)を調べ初め、リューネが起き上がる前に目測(もくそく)を付けた。


「……そうね。行ってみましょう」


 エリウスはリューネの手を(つか)んで起き上がらせると、そう宣言(せんげん)


「――エリウス様……危険(きけん)ですこんなの、私は長年聖王国に住んでいたのに、こんな建造物知りませんでした……!明らかに不自然ですっ」


 リューネの不安を(はら)んだ言葉に、レディルが。


「んなこと言ってもここにあるんだ。仕方がねぇだろ……川跡(かわあと)を掘り返していたら(とう)が出てきましたって報告するつもりか?……馬鹿っざて言われて終わりだぞ。それにな、調べるに()したことはねぇ」


「で、でも……!!」


「落ち着きなさい。この国では中々に存在しない鉄骨(てっこつ)の建造物……入れるという事は(のぼ)れるという事なのでしょう……レディルの言う通り、調べる価値(かち)はあるでしょう……それに」


 と、エリウスは、大量にあった筈の人骨(じんこつ)を探す。


「――(わたくし)達が()り起こした大量の人骨(・・・・・)……どこに行ったと思う?」


「……えっ!?」


「そうだ。丁度(ちょうど)この(とう)の位置だ」


 エリウスの言葉に、リューネはそれがあったはずの場所を見る。

 そしてカルストは、リューネが理解したと解釈(かいしゃく)して()べた。


「千体近い人骨(じんこつ)に、無数にあった家畜(かちく)動物の骨……それが消えて、この建造物が急に現れた……不審(ふしん)に思うのも無理はないだろう……エリウス様、ここは俺が――」


「――い~や、俺が行く。お前らは待機してろ」


 カルストの言葉を(せい)して、レディルが(とう)の足の一本に手を()えながら、不敵(ふてき)に笑う。


「どういう事?レディル。戦闘能力で言えば、カルストの方が上……それは自分でも自覚しているのでしょう……?」


 ならば何故(なぜ)、自分から進んで名乗り出たのか。


「おいおい皇女殿下(こうじょでんか)……俺は、【魔道具設計の家系(アイテムメーカー)】だぜ……?」


 【魔道具設計の家系(アイテムメーカー)】。

 グレバーン家。長い帝国の歴史で、“魔道具”を作り続けて来た、名家(めいか)

 その中でも、類稀(たぐいまれ)なる実力を()(そな)えた、天才。

 素行(そこう)が悪く不真面目、その実力を発揮(はっき)しないまま消えていくと言われた、不肖(ふしょう)の男。


 レディルを見出したのは、帝国の皇太子(こうたいし)、ラインハルト・オリバー・レダニエス。

 エリウスの実兄(じっけい)だ。

 そのレディルが【魔道具設計の家系(アイテムメーカー)】と(みずか)ら言うという事は、それなりに“魔道具”が関わっている可能性を示唆(しさ)している。

 レディルが言い出した事を、カルストも意味合いを分かって引く。

 しかしエリウスは。


「……ならば、(わたくし)を連れて行くことが条件(じょうけん)よ」


「――はぁ!?なぁエリウス、お前は俺が言った意味……」


「分かっているわ。危険な“魔道具”がある可能性、それが高いと言いたいのでしょう……?」


 重々承知(じゅうじゅうしょうち)していると、エリウスは笑う。

 そして、何か決意したかのように前に出て、部下の三人に言い放った。


「それならば、余計(よけい)に私が行かなければならないわ。皇女(こうじょ)エリウスとして、この異物を……“送還(・・)”する為に……」


「……!」

「――!!」

「……“送還(そうかん)”?」


 レディル、カルストはエリウスの言葉を理解し、(ひざ)をつく。

 エリウスがそういうと言う事は、そうしなければならない理由があるからだ。

 リューネだけは分からず「え、えっ?」としていたが、空気感に(なら)って同じく(ひざ)をついて(こうべ)()れる。

 ちらりと(のぞ)くと、レディルもカルストも、(つば)をごくりと飲んで(のど)を鳴らし、(こうべ)()れる相手、エリウスが話す言葉を待っていた。


「――【魔導帝国レダニエス】……皇女(こうじょ)エリウスの名において、この建造物を異世界(・・・)の異物と認定します……帝国の名誉(めいよ)のために、遺物(いぶつ)排除(はいじょ)する……」


 帝国の歴史上、(もっと)も“優遇”された職業。【送還師(そうかんし)】。

 それは、異世界からの不純物(ふじゅんぶつ)(はい)し、元の世界に送り返すと言う、強制送還(きょうせいそうかん)させる力だ。世界を平穏(へいおん)に保つ為の職業である。


 それが、この青い髪を持つ、皇女(こうじょ)エリウス・シャルミリア・レダニエスだ。

 ()しくも、聖王国の“不遇”職業、【召喚師】と対になる力を持ち。

 加速する異文化(いぶんか)(くさび)を打ち込む、異能(いのう)の職業。

 帝国皇女(こうじょ)エリウスは、生まれつきその力を持つ。


「カルスト、レディル。そしてリューネ……力を貸しなさい。この(とう)異物(いぶつ)……世界のバランスを(くず)しかねない“(がい)”になる可能性がある……力が使えなくとも(・・・・・・・・)、調べることは出来る……」


 (とう)先端(せんたん)を見上げようとしながら、エリウスは()げる。

 その言葉には(くや)しさが(にじ)んでいた。

 エリウスは、ある条件(・・・・)を満たさなければ、“送還”の力を行使する事が出来ない。

 それが、(くや)しさの理由だ。


「――(わたくし)も感じるわ……この(とう)はこの世界の、()いてはこの国のものではない……私の責務(せきむ)、別世界からの進行を(おさ)える……防ぐこと……まさか、目の前に現れるとは思いもよらなかったけれど」


「はい、エリウス様。【帝国騎士長】カルスト・レヴァンシーク……御身(おんみ)(のぞ)むままに」


「……【魔道具設計の家系(アイテムメーカー)】レディル・グレバーン……御身(おんみ)(のぞ)む通りに……」


「……えっと……」


 エリウスに(こうべ)()れながら、カルストとレディルは忠誠(ちゅうせい)を口にする。

 慣れないリューネは、その姿を見てあたふたと(あわ)て始めるも、隣のレディルに(ひじ)で小突かれて、急かされるように言う。


「――わ、私も頑張ります!エリウス様の為に……!!」


 精一杯(せいいっぱい)の言葉だった。

 急すぎる展開に、頭が追い付かないままに言葉を(なら)べたが、以外とそれらしいのではないかと、内心自画自賛(じがじさん)してやりたい。の、だが――。


「「「……」」」


「え、えぇ……」


 三人の()めた顔ときたら、リューネの心を(えぐ)るのには十分だった。

 しかし。


「……フフッ……」


 エリウスがクスクス笑い出す。

 それだけで、リューネはからかわれていたと(さと)った。


「――ひ、(ひど)いですっ!エリウス様、カルストさんも……レディルさんは別にいいですけど」


「すまんな」

「なんでだよっ!」


 どうやら三人で息を合わせていたらしい。

 実にいいコンビネーションな事で。


「フフフ……それでも、何も知らない貴女(あなた)がここまでの事を言ってくれるのだもの……一度国に帰ったら、しっかりと話させてもらうわね……」


「は……はいっ。エリウス様!」


 笑いながら、それでもしっかりと対応して、年上の部下たちを手玉に取る。

 【魔導帝国レダニエス】の皇女(こうじょ)、エリウス。

 そんな彼女のカリスマ性に、リューネは改めて、この少女の力になりたいと、高鳴る気持ちを(つの)らせた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ