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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 4章《残虐の女王が求めるもの》
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193話【異世界に赤い塔】

この話に出て来た建造物は、いたるところが現実と違っています。



◇異世界に赤い(とう)


 視線(しせん)をずらされる程の地響きに、会話は強制的に中断(ちゅうだん)されてしまった。

 ゴゴゴゴゴ――と音を鳴らして、荒野はあちらこちらで土煙(つちけむり)を舞わせる。


「――空気読めないわねっ!!」


 話の途中(とちゅう)で水を差された形になり、ローザは苛立(いらだ)って地鳴りに文句を言う。

 きっとフィルヴィーネ側でも同様だろう。


「ローザ!サクラ!」


 様子がおかしいと感じたエドガーとメルティナも、空気がどうとは言ってられずに()けてくる。

 エドガーの胸ポケットに入り込んでいるリザが、走っている反動でピョンピョン揺れる。

 エドガーは空を見上げながら走り、人為的(じんいてき)ではないのかとローザを見る、が。


(……う、うわぁ……)


 明らかに不機嫌(ふきげん)な顔をするローザに、自分のせいではないとはいえ、質問をすることを止めたエドガー。

 代わりに、同意見だったメルティナが助け(ぶね)を出すかのように言う。


「マスター、これは地震(じしん)ではありません……ですが、人為的(じんいてき)な何かとも思えません。しかし……震源(しんげん)は非常に近い可能性があります」


 地震(じしん)ではないが震源(しんげん)がある。

 それはつまり、その地点(ちてん)で何かしらが存在しているという事か。


「――皆、周りに注意して。敵の可能性もある、むしろその可能性が高いわね――サクラも、今は集中なさい……【心通話】、出来るようにね」


「さ、流石(さすが)に分かってますよっ……!」


 あれだけ感情的になっていたサクラでさえ、この状況(じょうきょう)には文句も言わずにローザに(したが)う。

 確かにローザの言う通りで、サクラが精神的に不安定になると、【心通話】が使えなくなったりする。

 それは契約しているエドガーや《石》で(つな)がっている異世界人も同様だ。


「フィルヴィーネ達はまだ来ないの……!?」


「ちょっと待って!」

<フィルヴィーネさん!状況(じょうきょう)把握(はあく)出来ていますか!?>


<フィルヴィーネさ――>


<――聞こえている……(さわ)ぐな。サクヤも無事だ、(あん)ずるがいい>


「<よかった……振動(しんどう)はそちらでも?>」


 エドガーは声を出し、ローザ達にも聞こえるようにする。

 (おさ)まってきた振動(しんどう)を足の裏で感じながら、フィルヴィーネに【心通話】を送る。


<ああ、邪魔くさいほどに揺れているな……――ん?……なんだ、あれは>


「<……あれ?>」


 一体どれだろうと、エドガーも見渡す。

 それを分かってか、フィルヴィーネが。


<北だ。赤い……(とう)か?>


「<(とう)?……あ、本当だ……>」


 エドガーの声に合わせて、ローザやメルティナ、サクラもその(とう)を確認する。


「――!?」


 その(とう)に反応する人物が、この場にたった一人だけいた。

 その(とう)認識(にんしき)でき、名を()べる事が出来る唯一(ゆいいつ)の人物――サクラ。


「――うそ、でしょ……なんで、あれって……と、【東京タワー(・・・・・)】!?」


「とう、きょう……タワー?」


 サクラの世界【地球】。

 【日本】の観光地(かんこうち)であり、首都東京(とうきょう)のシンボル。

 サクラは東京(とうきょう)出身ではないが、知らない訳はない。


「でも……なんで……」


 一番(おどろ)いているのはサクラだった。

 自分の世界の建造物が、地響(じひび)きと共に現れた。


<いきなり現れたな……まさか()え出て来たわけではあるまい>


 それではまるで。


「……“召喚”のようね」


「……うん」


 ローザの言葉にエドガーは(うなず)く。

 同意見だった。そうとしか取れない。

 出てきた瞬間を見逃してしまったが、地鳴(じな)りは短かったし、時間をかけて地中から出て来たという事はなさそうだ。


 その瞬間、と言うには長い気もするが、その間にフィルヴィーネとサクヤが戻って来た。

 ご丁寧(ていねい)にキチンと(まき)を持って。


「――“召喚”とはちと違うな……あれは具現(ぐげん)、もしくは封解(ふうかい)であろう」


「わっ!」

「フィルヴィーネ様……」


 センサー頼りのメルティナが、真隣に現れたフィルヴィーネとサクヤに(おどろ)く。

 リザはエドガーの胸ポケットから降りて、フィルヴィーネの肩に。

 わざわざ(かか)えて、(みずか)らの肩に座らせる“魔王”様。


具現(ぐげん)って、でもあれは……あたしの世界の建造物ですよっ!?」


「フィルヴィーネ、貴女(あなた)何か知っているのではない?」


 サクラとローザの声に耳を(かたむ)け、フィルヴィーネは言う。


「……この前ここに来た時、(われ)が力を使ったのは覚えておろう?」


「ええ」

「……はい。紫月(しづき)、ですよね」


 フィルヴィーネはバツが悪そうに。


「あの紫月(しづき)の力はな――その場の環境(かんきょう)をぶち(こわ)すことだ」


「ぶ、ぶち……(こわ)す?」


 メルティナは首を(かた)げて、乱暴な物言いに疑問(ぎもん)を持つ。


「――そのままの意味だ。紫月(しづき)が地上に近付いた前回、(われ)の傷を(いや)すために力を発動した【月の金木犀(きんもくせい)】は、その場の封印(・・)なども弱めたのだろうよ……」


 【月の金木犀(きんもくせい)】は(いや)しの力を持つ。

 (いや)しの効果はフィルヴィーネが立っていた地表にも発動し、そこら一帯(いったい)(ほどこ)されていた封印を弱めた。

 つまり、封印されていた何かの力を回復したと、そういうことか。


「それじゃあ、あの(とう)がここに封印されていた……と?」


「それは微妙(びみょう)なところだな。(われ)はあの建造物を知らぬ、この世界の物ではないという事はサクラが証明(しょうめい)できるし、封印する理由もないであろう」


 フィルヴィーネは(いま)(おどろ)いているサクラの近くに寄り。


「サクラ、あの(とう)の目的はなんだ?」


「……も、目的?……【東京タワー】の目的?えっと……昔は電波塔(でんぱとう)だったって聞いたことあるけど、あたしの居た時代だと、ホントにただの観光名所(かんこうめいしょ)だったはずです……」


 (あご)に手を当てて考えるサクラ。

 どう考えても、ただの観光名所(かんこうめいしょ)としか思えないようだ。


「サクヤは……?貴女(あなた)も同じ世界でしょう?」


 ローザが聞く。

 そしてサクヤは答える。


「……わたしの時代にはまだありません。もっともっと未来の話なのでしょう。それに、これほど大きな物見櫓(ものみやぐら)は、建てられませんでした」


(あれ……なんか、雰囲気が……)


 エドガーは、あまりにも冷静(れいせい)に話し始めるサクヤに違和感(いわかん)を覚えるも、とんとん拍子(びょうし)で進んでいく会話に、待ったをかけることは出来なかった。

 しかし、サクヤの言葉の違和感(いわかん)はローザやメルティナも感じているようで。


「……そ、そう。じゃあサクラ、あの(とう)の高さは……?」


 サクラは遠いようで近い(とう)先端(せんたん)を見ながら。


「333m……メートルは、こっちで言うと」


 この世界ではcmがセンツだ、もしかして。とサクラは思う。


「メドルだね」


「やっぱり……」


 単純で分かりやすいと言えばそれまでだが、(ひね)りは無かったのだろうかと、サクラは内心で(つぶや)いた。


「メルティナ、飛ぶのは?」


「可能ですが……皆を(かか)えては無理です。もしあそこに敵がいれば、的になりますから」


「333メドル(m)。高いね……城なんか目じゃないよ」


 (おどろ)きと(あき)れ半々で(つぶや)くエドガーは続けて。


「……それでどうします?……行って、見ますか?」


 恐る恐る、エドガーはフィルヴィーネに聞いた。

 敵がいる可能性もあるとは分かっているが、サクラも興味(きょうみ)(しめ)しているし。

 何よりも、異世界の建造物にエドガー自身が興味(きょうみ)がある。


「……そうだな、行く価値(かち)はあるであろう。観光名所(かんこうめいしょ)とはいえ異世界の物……十分に気を付けるべきだが……サクラよ、構造(こうぞう)は分かるか?あの大きさだ、中にも入れるのだろう?」


「え、はぁ……そのままなら、ですけどね」

(あたし、東京行ったことないけど……)


 複雑(ふくざつ)そうな表情(ひょうじょう)を浮かべながらも、サクラも【東京タワー】がこの異世界に現れたことが気にかかっている。

 簡易(かんい)な案内なら。と、許諾(きょだく)して。


「では、行きましょう……何があるか分からないから、(じん)を組むわよ」


 ローザが言うが、エドガーとメルティナが。


「じ、(じん)……?」

「この人数でですか……?意味がありますか?」


 陣形。戦闘事にめっぽう弱く、意味が理解できなかったエドガーと、戦い慣れしているメルティナの、同じ様で違う疑問(ぎもん)

 ローザはメルティナに耳打ちする。


「ええ。あの二人(サクラとサクヤ)(はさ)む形にする」


「……なるほど。了解です」


 メルティナもピンときたのか、ローザにしか聞こえない小声で返事をした。

 そしてローザは()ぐに離れて、全員に聞こえるように編成(へんせい)を話し始めた。


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