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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 4章《残虐の女王が求めるもの》
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186話【神意と口付け】

累計12万PVありがとうございます!

もうすぐ4章終わりです。



神意(しんい)と口付け◇


 フィルヴィーネの部屋の前まで来たエドガーとサクヤ。

 エドガーはトレーに食事を持ち。サクヤは顔に緊張(きんちょう)(にじ)ませていた。


「フィルヴィーネさん、リザ。入りますよ……?」


 コンコンとノックをし、エドガーは声を掛ける。

 すると、部屋からはフィルヴィーネが。


「――うむ、くるしゅうない。入るがいい」


 どこぞの殿様かと思わせる入室許可だった。

 エドガーは普通だったが、その返答に反応するサクヤ。

 殿様に(つか)える事を夢見ていた【忍者】は、まるで本能に(したが)うように。


「――は、ははぁ~~~!!」


「うぇっ!?」


 サクヤは雷に打たれた様に(くず)れ、(ひざ)をついて(こうべ)()れる。

 突然すぎる行動に、当然エドガーは(おどろ)く。

 変な声を上げて、サクヤから身を遠退(とおの)けた。


「――主様(あるじさま)っ!!さぁ、主様(あるじさま)もお早くっ!」


「ええ?何で土下座を?」


「――土下座ではありませぇぇぇん!さぁ!お・は・や・く!!」


「……わ、わかったよ……」


 異常な剣幕(けんまく)に押されて、エドガーも土下座――ではなく頭を下げた。


「「……」」


 扉は開かない。それはそうだ。

 誰が開けると言うのか、フィルヴィーネは「入れ(・・)」と言った。

 開ける側はエドガー達なのだから。


「それで、これからどうするの?」


「開くまで待ちます」


「……サクヤ。誰が開けるの……?」


「……誰でしょう?」


 リザには無理だ。

 フィルヴィーネはきっと座っているだろう。

 剣幕(けんまく)に押された自分がダメだったと、エドガーは立ち上がるが。

 サクヤはエドガーのズボンの(すそ)を引っ張って顔を青くする。


「大丈夫だよ――」


 エドガーはサクヤに声を掛け、扉を開けようとした、が。


「――早くせぬかぁぁぁぁぁっっっ!!」


 ――ドバン!!


「わあぁっ!」

「ひゃああああああああっっ!!」


 扉は勝手に開いた。ではなく、(しび)れを切らしたフィルヴィーネが豪快(ごうかい)に開けたのだ。

 肩にはリザが座っており、(あき)れたように言う。


「何をやってるのよあなた達。バカなの?」


 返す言葉もなかった。





 フィルヴィーネはベッドに腰を下ろし、エドガーは椅子(いす)に座る。

 サクヤはエドガーの後ろに待機した。


「やれやれ、まったく困った奴らだ……」


 そう言いながら、フィルヴィーネはリザを(つか)んで優しくベッドに降ろす。

 その微笑(びしょう)は本当に優しく、“神”と言われても今は信じられる。そんなものだった。

 しかし、その微笑(びしょう)を向けられている“悪魔”リザは。

 視線(しせん)をエドガーに向けて「あ・や・ま・れ」と、口パクで知らせる。必死だ。


「……?」


 (つた)わらないエドガーを尻目に、フィルヴィーネは。


「――()はね……エドガー、待たされるのが苦手なのよ……」


「「――っっ!?」」


 その解放された神意(しんい)に、エドガーもサクヤも、リザですら身を(すく)ませる。

 ()っすらと紫色のオーラを(まと)い、優しくリザを()でる姿はまさに女神。

 だが、そのリザの表情は固く、強張(こわば)る。


 理解した。フィルヴィーネは怒っているのだと。

 先に()べた通り、待たされるのは嫌いなのだろう。そうとう。

 “魔王”になっても、本来“神”であった力は残っている。

 それが(あふ)れて来てしまうほど、待たされたことに怒っているのか。


「エドガー、こちらに来なさい」


「……え」


「は、早くしなさいぃ!(私の為に)」


 リザが小声で(さけ)ぶ。

 エドガーは緊張しながらも、フィルヴィーネの足元に()する。

 片膝(かたひざ)をつき、見上げるようにベッドに腰掛けるフィルヴィーネを見た。


(こ、神々(こうごう)しい……身体が、本能から(かしず)いてしまいそうになる……)


 正直、半信半疑(はんしんはんぎ)だった。

 元“神”の“魔王”様と言うふざけた存在の女性。

 (うそ)ではないと分かってはいたものの、知ら締められる神意(それ)はエドガーでも身体を震わせる。

 目の前にいるのは、まさしく“神”。

 ――そうとしか思えなかった。


「エドガー」


「は、はいっ!」


 フィルヴィーネ左手を差し出す。

 エドガーは分からなかった。それがどういう意味なのか。

 だからリザが言う。


「キスだ、手の甲にキスをしろっ」


「は、ええっ」

「きす……キス……接吻(キス)!?」


 サクヤも、サクラの【スマホ】のおかげで知っていた。


「そうしたら許しましょう。さぁ、早くなさい」


「あ、主様(あるじさま)……」


「……」


 エドガーは、恐る恐るフィルヴィーネの手を取る。

 指先に触れた瞬間、全身に走る官能的な衝撃。


(――なっ!!……ふ、()れただけなのに……身体がぴりつく……?――なんだ、この感覚……この前(かか)えた時と全然違うっ……!)


 “召喚”した時に、弱ったフィルヴィーネをおんぶで運んだ時を思い出して、その違いに(つば)をのむ。

 ゆっくりと近付き、おおよそ人とは思えない綺麗(きれい)な肌に顔を近付ける。


(……凄い……意識(いしき)が、途切(とぎ)れそうだ……歯を食いしばらないと、何も考えられなくなるっ)


 フィルヴィーネ、いや【紫月(しづき)の神ニイフ】の神意(しんい)に、エドガーは飲まれそうになる。

 なんとか腹に力を入れて、足の指にもグッと力を込める。

 そしてゆっくりと(くちびる)を近付けて――ちゅっ、と手の甲に触れた。


(――!!……な、なんだこれ……ず、ずっと口付けていたくなる……ヤ、ヤバい……ヤバすぎるっっ)


 しかし意識を高め、何とか口付けを終えて(くちびる)を離し、フィルヴィーネの様子を(うかが)う。


「ふむ……まぁいいでしょう。許してあげる」


(……の、脳が(しび)れるかと思った……)


 実際(しび)れたかもしれない。

 【紫月(しづき)の神】でこの刺激(しげき)だ、もしも【美の女神】や【愛の女神】なんてものだったら、エドガーは正気でいられない自信がある。

 椅子(いす)に座り直すエドガーだが、手の汗が尋常(じんじょう)じゃなかった。(かす)かに震えもある。


 そしてフィルヴィーネは、満足気に手の甲を見ていた。

 神意(しんい)はもう出ていない。

 何の時間だったのかと、心底(しんそこ)疲れたエドガーだった。





「ニイフ様……そろそろお話を」


(だま)れリザ、(われ)は今機嫌がいいのだ……今にも、自分の手の甲にキスしそうなほどにな」


「……そ、それって……」


「お(たわむ)れを。エドガーと小娘が引いています……」


 今にも間接キスをしそうなフィルヴィーネ。

 エドガーはドキリとしたが、後ろのサクヤが自分の肩を(つか)んで来たので押し(だま)った。


「クックック……そうだな、そうするか――ゴホンっ!」


 わざとらしい咳払(せきばら)いをして、フィルヴィーネは話しをする気になってくれた。

 本当に何の時間だったのか。


「――さて。小娘……お(ぬし)、今……【魔眼(ちから)】を使おうとしていた事、気付いていたか?」


「――えっ!?……わ、わたし?」


 エドガーも振り向く。

 サクヤは指で自分の顔を指して、ポカンと口を開けている。


「やはり気付いておらぬのか……やれやれ」


 サクヤの力、つまり能力。【魔眼()】の事だ。

 それを、サクヤは使おうとしていた?今?ここで?

 どのタイミングだろう?と、エドガーは考える。


「キスのタイミングに決まってるでしょ……」


 答えを出す前に、リザに(くぎ)を打ち付けられた。というか内心(ないしん)を読まれた。

 「鈍感(どんかん)ねぇ……」と、(あき)れたリザはベッドからジャンプで降りて、とてとてとエドガーのもとに。

 「ほら、早く!」と、急かされて、そっと両手で(かか)え上げる。


「エドガー、お前は少し女心を学ぶべきね……その内、痛い目を見るわよ?」


「……はい、すみません」


 (しか)られた理由がいまいち分からずも、エドガーは取り()えず(あやま)る。

 しかし、今はそれどころではない。


眼帯(がんたい)を外すがいい……小娘、いや……サクヤ」


「……う、うむ……」


 サクヤは【魔眼】を隠した左眼の眼帯(がんたい)を外す。

 ローマリア王女達が来ていた(さい)もつけていたのだが、一度オーデインに使用した時もそのままにしていた。


「外したが……ん?主様(あるじさま)?“魔王”殿も……どうし……」


「サクヤ……【魔眼(ちから)】、使ってるの?」


「――何を言うのですか主様(あるじさま)……どこにそんな理由があります?」


「いや……でも」


 エドガーはフィルヴィーネを見る。


「うむ。自覚なしか……仕方ない。勉強の時間とするか……」


 こうして、怒ると怖い元“神”様。

 “魔王”フィルヴィーネ・サタナキアの講座(こうざ)が始まる。


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