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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 4章《残虐の女王が求めるもの》
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184話【天然】



◇天然◇


 ローマリアは椅子(いす)から立ち上がって、【聖騎士】オーデインの前まで来ると。


「――すまないわね。オーデイン・ルクストバー(きょう)……私は、やはり【あほビコン】なようだわ。でも、後悔(こうかい)はしない……エドガー達は信頼(しんらい)(あたい)するわ――それだけは、私が感じた……私だけの特権(とっけん)だから」


 サクヤの【魔眼】で動きを止められたオーデインの視線(しせん)は、今も「駄目だ」と(かた)っている。

 しかしローマリアは、エドガー達に向き直り。


「――事実だ……サクラ殿の言う通り、この【リフベイン聖王国】は、東西南北(とうざいなんぼく)を他国……敵国に囲まれている。その為、現在【聖騎士】の半数が……南の国境付近に駐屯(ちゅうとん)している」


「……西・北・東は……?」


 ローザが聞く。


「西には【カラッソ大森林】が……北には【ルノアース荒野】がある。どちらも、【リフベイン聖王国】へ到達(とうたつ)する為には何日もかかる難攻箇所(なんこうかしょ)だ、大群で侵攻(しんこう)するには、少しばかり無理があるわ」


 西の【カラッソ大森林】は、(けわ)しい森と渓谷(けいこく)が。

 そして【鉄の(いばら)】と呼称(こしょう)される、天然の(おり)がある。


 北の【ルノアース荒野】は、エドガー達も行ったように、何もない荒野が無限(むげん)のように広がっている。

 補給(ほきゅう)できる食物など無く、水もない。

 どちらも天然の要塞(ようさい)と言う訳だ。


「……東の【ロディルー女王国】は……そうね、実はこの前。間者(かんじゃ)に襲われたけれど……正直大したことはないわ。兵も素人(しろうと)みたいなものよ。騎士学生(エミリア)でも撃退(げきたい)できるのだから」


 助けられた本人が言うか?とサクラがジト目で見ているが、ローマリア王女は気にせず続ける。


「南の【ルウタール王国】が、一番距離(きょり)も近く……一番躍起(やっき)になっている国ね。だから【聖騎士】を国境付近まで送り込んでいるんだけど……」


 現在、聖王国に残っている【聖騎士】は片手で数えられる程しかいない。

 しかも、二人は新人だ。


「残り全部南って……アンバランス過ぎじゃないですか?」


 極端(きょくたん)采配(さいはい)に、サクラが(いぶか)しむ。


「ええ。でも、今まではそれで済んでいたのよ……今までは」


「だから西、そして北ね……」


 ローザが、(あご)に指を()わせて何かに納得する。


「そう――あ、そろそろオーデインを解放してくれない?もう観念(かんねん)したでしょうし」


「……」


 何故(なぜ)かサクヤはエドガーを見る。勝手に【魔眼】を使ったくせに、解除には同意を求めるとは。どの様な心境なのだろうか。

 その視線(しせん)にエドガーは頷く。


 その瞬間に、オーデインは【魔眼】の(しば)りから解放される。


「――っと……殿下(でんか)……引き返せませんよ?いいのですか?……レオマリス殿達を、今後巻き込むことになる……それに【従騎士(じゅうきし)】二人にも知られました。帰ったら、お話しさせて頂きますよ」


 (あき)れているのか怒っているのか。

 オーデインは冷静(れいせい)な口ぶりだが、かなりキテいる(・・・・)

 話しをすると言うのも、セルエリスに――だろう。


「構わないわ……攻め込まれてからじゃ遅いのよ。それに【従騎士(じゅうきし)】を新たに新設(しんせつ)したのだって、エリス姉さまのお考えなのだし、おそらく【聖騎士】を増やす為でもあるわ。いずれ知る事よ……」


「――はぁぁ……分かりましたよ。団長には私から(つた)えます。ですが、レオマリス殿達に言った事……是非(ぜひ)とも内密(ないみつ)に願いたい……」


 エドガー達に頭を下げるオーデインは、いつもの飄々(ひょうひょう)とした態度では無かった。

 それだけ、この内容が深刻(しんこく)だという事だろう。


「分かっています……ルクストバー公爵閣下(かっか)、皆もいいよね……内密、内緒だよ?」


 「しぃー」と指で口元を押さえるエドガー、実に子供じみている仕草(しぐさ)だ。


「エ、エド君……」

「……ふふっ……」


「え……あれ?」


 流石(さすが)緊張(きんちょう)の度合いが違うと、サクラは口端(くちはし)をヒクヒクする。

 ローザは肩を震わせて笑っているが。


「……え~っとぉ」


 やってしまった。と、エドガーは内心で絶望する。

 別におちゃらけた訳ではなく、天然だ。

 見れば、【従騎士(じゅうきし)】二人も「ええぇ」と引いている。

 オーデインは少しばかり口元を(ゆる)めている程度だが。

 そしてローマリア王女は、とても嬉しそうに笑った。


「あはははははっ!しぃー、しぃーっだって……子供ではあるまいに……あははっ、本当に面白い!こんな状況(じょうきょう)を聞いてそんなことが言えるなんて……大物だわ(・・・・)、エドガー・レオマリス」


「――す、す、す……すみません!!」


「ふふっ……いいのよエドガー……近隣諸国(きんりんしょこく)のいざこざなんてどこにでも、いつの時代にでもある事よ。別に気にする事ではないわ」


 何故(なぜ)かローザが許したエドガーの行動。

 そもそもローマリアは怒っていないし、ただ単に会話の流れでする行動では無かっただけだ。

 空気を読み間違えた、それだけの事。


「ローザの言う通りよ。おかげで気も楽になったわ……改めて、協力感謝するわ、エドガー」


 頭を下げるローマリアに、オーデインも続く。

 それを真似(まね)てか、レグオスとレイラも頭を下げた。

 最後に、ローマリアが差し出した手をエドガーが取り。

 こうして、ローマリア王女が急来した【福音のマリス】の緊急会議は終幕(しゅうまく)した。





調査(ちょうさ)のタイミングはエドガー達に(まか)せる。報告は……そうね、数日後に誰かを送るから、その時に』


「――ねぇ……(まか)せると言っておきながら、数日後には報告聞きに来るき満々じゃない……まったくもう」


 王女達が帰ったあと、一階の食堂で冷めた紅茶を飲むローザとサクラ。

 帰り(ぎわ)に放ったローマリア王女の言葉に、(あき)れていた。


「あはは……ホントですね、明日には始めないと間に合わないかも」


 【ランデルング】を使ったとしても、数日で荒野全てを回ることは出来ない。

 それだけ広く、遮蔽物(しゃへいぶつ)のある荒野を調べるなど、本来この数人でやれることではない。


「まぁ、協力すると言ってしまったものは仕方がないわね。期間(きかん)が短い事以外、別段反対する気も無いわよ」


「それは……まぁ、そうですけど」


 サクラだって、初めから反対する気でいた訳ではない。

 誰かがああ言わなければ、エドガーが(そん)をするだけになる。サクラはそれが嫌だった。


「そう言えば、メルティナはいなかったのね……」


 ローザはようやく気付く。大変遅いのだが、メルティナ・アヴルスベイブが居なかった事に。


「メルならエミリアちゃんのとこですよ……最近はずっと会いに行ってます。ローザさん、引きこもってたから」


「……す、好きでそうしてたわけじゃないわよ……知っているくせに」


「えへへ、すいません」


 【スマホ】をいじりながら、笑って言うサクラ。


「で、サクラはさっきから何をしているわけ?」


 気になったのか、ローザは【スマホ】を(のぞ)く。

 別段(のぞ)かれても平気――むしろ見てもらわなければならなかった事なのでありがたそうに、サクラはローザに【スマホ】を見せる。


「予定って言うにはまだショボいですけど……明日からの行動予定表です」


「……起床(きしょう)、朝食……移動、到着、調査(ちょうさ)、休憩……調査(ちょうさ)、昼食、調査(ちょうさ)……休憩、調査(ちょうさ)……」


 明後日まで、二日分の行動指針(こうどうししん)が、きめ(こま)やかに書き込まれている。

 「どうですかっ!?」と、喜々(きき)としてローザに問う。


「……この通りに行けると思ってる?」


「……う。やっぱりそうですよね……」


 【ルノアース荒野】の広さを数人で調査(ちょうさ)

 一度見たからこそ、その広さに無謀感(むぼうかん)を感じる。

 空を飛べるメルティナがいるにせよ、一人に(まか)せる訳にもいかない。

 ましてやメルティナは、話し合いに出ていない。

 エドガーの手伝いを断る事は、万が一にも無いにせよ負担(ふたん)が大き過ぎる。


「それに、王家の予想通りに西の国の間者(かんじゃ)が居たとしたら……戦闘もあり()るわ。馬車から考えて、大人数だとは思えないけれど」


「……で、ですよね~」


 戦闘と言う言葉に、汗を流すサクラ。

 一度対人戦を経験したとは言え、サクラがサクラとして戦った訳ではない。


「もし西国……【レダニエス帝国】でしたっけ……その人たちが居たら、やっぱり戦うんですか?」


「相手にもよるわね……問答無用(もんどうむよう)で襲ってくるようなら、こちらも容赦(ようしゃ)なく斬るけれど……話が出来るに()したことはないでしょう?」


 「エドガーの為にもね」と。ローザも、考えの優先度を決めていた。


「それに……怪しい(・・・)のもいるのよ。サクラとサクヤ、メルティナは知らないだろうけれど、私がこの世界に来た時……」


 ローザはサクラに、自分がこの世界に“召喚”され。

 グレムリンと戦闘を行った時の話しを始めた。


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