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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 4章《残虐の女王が求めるもの》
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183話【敵】



(てき)


 爆笑する【聖騎士副団長】を、立ち上がった王女が殴りかかる。しかしそれは華麗(かれい)(かわ)されて、反動で王女は壁に顔をぶつけた。


「――へっぶ!!」


「「殿下(でんか)!?」」


「おっと、靴紐(くつひも)(ほど)けていたようです、失礼しました殿下(でんか)


「ふ、ぐぐ……私の目には、具足(ぐそく)を付けているように見えるがなぁぁっ!」


 鼻頭(はながしら)を押さえ、涙目でオーデインの足元を確認する。

 しっかりと、靴紐(くつひも)具足(ぐそく)の下だった。


「顔が真っ赤ですね殿下(でんか)。本当に【ビコン】のようですよ――ふふっ……」


 「誰のせいよっ!」と、ローマリアはオーデインを半眼(はんがん)(にら)むが、ものの見事にスルーする。


「――そろそろいいかしら?話しを進める……と言っても概要(がいよう)は聞いたし、後は……」


 ローザはテーブルに片肘(かたひじ)を着いて、ローマリア達の寸劇(コント)を見ていたが。

 しかし、そろそろ話しを進めようと冷めた笑みを浮かべて声を掛けた。


「……ご、ごめんなさい……ローザ」

「申し訳ありません。ロザリーム殿」

「ひぃっ!」

「す、すす……すみません!!」


 ロザリーム、オーデイン、レグオス、レイラの順で(あやま)る。

 二人は真面目に(あやま)ったが、一人は怖がり、もう一人はどう聞いても心がこもっていない。


「あなた達……大概(たいがい)ね、まったく」


「本当にすみません!あの、お兄さんも……その……」


「――お兄さん?」


「あっ!……えっと、私……リエレーネの同窓生で、レイラと言います……」


 レイラが一歩前に出て、遅めの自己紹介をする。

 遅くなりましたと、エドガーの妹であるリエレーネの学友、レイラ・エルヴステルンがエドガーに頭を下げる。


「え……リエの同窓生……友達?」


 エドガーは知らないようだ。

 そんな中、ふんぞり返って椅子(いす)に座っていたサクヤが言う。


「……うむ。そう言えばエミリア殿の決闘の会場にいたな……其方(そなた)


「――ええぇぇっ!?」

「なんで分かんのよ!?」


 エドガーとサクラが(おどろ)く。

 意外な程に、サクヤは人を見ている。

 あの日もサクヤは観察(かんさつ)していた。(がい)のある人物がいないかを。

 そして覚えていた。会場にいた全員の人相(・・・・・)を。


「はっ――!!そうか、あの時其方(そなた)の近くにいた茶髪の女子(おなご)……あれが主様(あるじさま)妹君(いもうとぎみ)かっ!!」


 雷に打たれた様に、両手で頭を(かか)える。


「エド君に似てた!?ねぇ似てた!?」

(ちょう)似ていた!!」

「マジで!?」

「まじだ!!」

「わぁぁぁ!見たい、見たいぃ、【忍者】!あんた何で教えてくれないのよ!」

「お(ぬし)は出場者だったであろうが!」

「……そ、そうだったぁぁ」


 サクラとサクヤは、二人でキャッキャウフフと盛り上がる。

 ローマリア達の視線(しせん)など気にせずに。


「……す、すみません。殿下(でんか)……」


「か、構わないわ……ある意味お相子(・・・)よ」


「え?」


 エドガーは恥ずかしそうにしながら、ローマリアに謝罪する。

 ローマリアも、これでお相子だと笑ったのだったが。


「――あ!いや、なんでもないわっ」


 言えない。

 エドガーの妹、リエレーネ・レオマリスが、自分の部下である【聖騎士】に(したが)う【従騎士(じゅうきし)】となり、城に(つと)め始めたとは。

 ローマリアは、レイラに視線(しせん)で「絶対言うな!」と合図(あいず)し、レイラも物凄い(いきお)いで(うなず)く。


「あ、改めまして、レイラ・エルヴステルンと申します。リエレーネの学友で、このオーデイン様の【従騎士(じゅうきし)】をさせて頂いています」


「あ、これはご丁寧(ていねい)にありがとうございます。リエレーネの兄です……妹がお世話になって……」


「あ、いえ……どうも、お兄さん」


 二人のやり取りに、サクラは「サラリーマンのやり取りじゃんか」と、他の誰も分からない事を言った。

 様子を(うかが)う様なレイラの雰囲気(ふんいき)を、ローザだけが(さっ)する。

 エドガーが【召喚師】である事と、友達のリエレーネの兄であるという事を、葛藤(かっとう)しているのだろうと推測(すいそく)して、ローザは笑みを浮かべて(だま)った。


「……そろそろ時間ですね、殿下(でんか)……話を()めないといけませんね」


「――誰のせいよっ!」


 急に冷静(れいせい)になり、オーデインが時間を気にする。

 ローマリアは、いぃぃぃっと(にら)みながらレイラを下げる。


「レイラ、すまないけれど話しはまた今度にしてもらうわね、リ――妹さんの知人なのだから、これから何時(いつ)でも話せるわ」


 リエレーネを影武者(かげむしゃ)にしたローマリアは、バレない様に誤魔化(ごまか)すが。

 ローザにジィーっと見られていた。


「は……ははは。ほれ!早く戻れっ」


 ローザは「まぁいいけれど」と言う感じで視線(しせん)を外してくれた。

 ふぅ、と息を()いて、ローマリアはやっと椅子(いす)に座り直す。


「それでエドガー……最終的な事は」


「あ、はいっ……協力します!」


 背筋(せすじ)を正して、エドガーは了承(りょうしょう)する。


「そうね。私も協力はするわ……私の為でもあるし、ね」


 【召喚師】の事を知るために、自分(ブラストリア)の事を知るために。

 城に行かなければいけないのは事実(じじつ)だ。

 協力することで、トラブル無く円滑(えんかつ)に進めるのなら、それに()したことはないのだから。


「助かる――で、だ」


「はい。不審者(ふしんしゃ)捜索(そうさく)……それと“北”の調査(ちょうさ)、ですね」


「そう。北門から出ていった馬車……不審者(ふしんしゃ)はそれに乗っている可能性が高い」


 西門から王国入りした馬車は、北門から出ていった。

 その後は目撃はされていない。

 セルエリス第一王女が何を考えているのかは知る所ではないが、ローマリアを通じて、エドガーに何かをさせようとしているのではないかと、ローザは()んでいる。


「……」

(可能性があるとすれば……その不審者(ふしんしゃ)の正体を、第一王女は勘付(かんづ)いている……それを私達、いや、エドガーに調査(ちょうさ)をさせようとしている……)


「もしも北国、【エルタント公国】に向かうただの旅人だったとしても……あの馬車では超えられないわ。荒野を、あの広大な土地を広げる【ルノアース荒野】を……」


「なるほどね。初めから分かっていて……他国の間者(かんじゃ)と疑っている訳ね、貴女(あなた)の姉は」


 (うなず)くローマリア。


(くわ)しくは教えてもらえなかったわ。でも私もそう思っている。西には【レダニエス帝国】がある……そして、その帝国からこの聖王国に来るには……【カラッソ大森林】を抜けてこなければ入れない。観光目的で来る者など、居るはず無い(・・・・・・)から」


「その森から入ってくる人物も、たかが知れていると言いたいのね。つまり帝国人である可能性が、(きわ)めて高いと……」


 【レダニエス帝国】から来たとしたら、ただの観光だとは考えにくいという事かと、ローマリアとローザの会話を聞いて考え込むサクラ。


「……どうして観光じゃないって言いきれるんですか?旅行(りょこう)くらい誰でもするでしょう?」


 この世界に、入国制限や監視(かんし)はない。

 正式な手続きなどもなく、自由に出入りできる。

 それは、サクラの世界【地球】ではあり()ないことだ。


 サクラだからこそ感じることができる――違和感(いわかん)

 それは、この平和な王都に居れば感じる事が出来ない感覚。

 他国になど行った事はなく、国民が内向的で、自閉(じへい)ともとれるほどの出国(しゅっこく)の無さ。


「西、今回の場合北も……かな?……あたしの勝手な考えなので、答えてくれなくてもいいですけど。もしかしたらこの国って……他国……敵国に囲まれて(・・・・)ます?」


「――!!」

「……なるほど」

「敵……?」


 ローマリアの(おどろ)く表情を見て、サクラは確信する。

 今、【リフベイン聖王国】は攻められる恐れがあるのだと。

 東西南北、全ての近隣諸国(きんりんしょこく)に。

 東と南は不確定だが、西の【レダニエス帝国】と北の【エルタント公国】は確実に敵だと。

 そう判断(はんだん)できる。


「……――あ、ああ。それに近い……」


 ローマリアは一瞬躊躇(ためら)うも、口を開く。

 しかし、後ろから。


殿下(でんか)っ!それ以上は!……――ぐっっ!!」


 ローマリアはサクラの言葉を肯定(こうてい)する。

 先程まで飄々(ひょうひょう)としていた【聖騎士副団長】オーデインが、今までにないほど(あわ)てて声を(あら)げた。

 しかし、ローマリアに()け寄ろうとしたオーデインだったが、誰に止められるでもないのに、動きを完全に停止させる。


「ふ、副団長……?」

「オーデイン副団長?」


 不自然な程の動きの停止(ていし)に、レグオスとレイラは困惑(こんわく)する。

 どう見ても不自然。手を伸ばし、片足を一歩前に出した格好。

 まるで彫刻(ちょうこく)か、時が止まっている(・・・・・・・・)かのようだった。


「……副団長殿……声を(あら)げた時点で“確定”だぞ……」


 エドガーだけが、不安そうに眉根(まゆね)(しか)めさせている中。

 オーデインを停止させた(・・・・・)張本人が声を上げる。

 【忍者】サクヤが、オーデインの動きを“止めた”のだ。

 眼帯(がんたい)を外して、その左眼の【魔眼】を(かがや)かせる。


「敵国に囲まれている。それはつまり……戦争が起きようとしているのであろう?」


 声も出せないオーデインは、苦悶(くもん)の表情を浮かべながら必死に視線(しせん)を左右に動かしてローマリアに(つた)えようとする。

 「言うな」と。これ以上は「公務外」だと。

 だが、ローマリアは(うなず)きながらも、オーデインの考えとは反対の事を言い出した。


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