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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 4章《残虐の女王が求めるもの》
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182話【あほ面《ビコン》】



あほ面(ビコン)


 頭を下げ続けるローマリア王女は、静寂(せいじゃく)と言っていいほど静まった一室で、ごくりと生唾(なまつば)を飲み込む。

 緊張は(すで)にピークを迎えており、意思を(つた)える事だけを真剣に考えていた。


 一国の王女が、一般市民であるエドガーに頭を下げる。

 それだけでも物凄い場面に出くわしているのだが、後ろで固唾(かたず)を飲む【従騎士(じゅうきし)】レグオス・イレイガルとレイラ・エルヴステルンは、どうしようもできない状況(じょうきょう)()(たま)れなさを感じている事だろう。


 そして、何刻(なんこく)(何分)待ったか。口を開いたのはサクラだった。

 エドガーもローザも、サクラを見ていた。

 思えば、きっとエドガーとローザ(ふたり)の考えは同じだったのだろう。

 だから、サクラが納得(なっとく)すれば事が進む。

 真剣に頭を下げる王女を見て、異世界の少女は何を思うのか。


「――頭を上げて下さい、王女様」


 サクラはため息を()きながら「まるであたしが悪者みたいじゃん」と小言を言うと。


「別に、王女様に悪気がないことは分かってます。あと、自覚が無いのも」


「……へ?」

「――ぶっ!」


 ローマリア王女はポカンとし、【聖騎士】オーデインは()き出した。


「――オーデイン!!」


 オーデインは「これは失礼を」と、形だけは(あやま)り、ローマリア王女から逃げるように後ろに戻る。どうも肩が小刻(こきざ)みに()れている。

 隣のレイラが(たしな)めているが、笑いが止まらないようだ。


「すまないサクラ殿……続けてくれ」


「……はい。あたしは……仲間の為なら悪者(・・)にでもなります。あたしにはもう、ここしかないから。あたし達は(のぞ)んでここに来て……(のぞ)んでエドガー君の味方をする。元の世界(あっち)最悪(さいあく)から救ってくれたのは、(エドガー)だから」


 死にたくなった現実から、召喚し(すくっ)てくれた少年、エドガー・レオマリス。

 (むく)いるために、サクラは悪になる。それが(たと)え一国の王女だろうが何だろうが。


「だから、彼の()にならない事があったら、当然反対するんです……すみません。でも勿論(もちろん)()があれば反対しません。内容次第(ないようしだい)では、こちらから協力もしますから……その、失礼な言葉を並べて失礼しました」


「――っ!!……サクラ殿……そのお言葉感謝する、ありがとう!」


 サクラの意図(いと)を理解して、ローマリア王女は再び頭を下げる。満面の笑みで。

 サクラが言いたい事、それは。王国が主体(しゅたい)になっている以上、“不遇”職業であるエドガーの()(ほとん)どと言って良いほど無い。


 だが、国が関係なければ?

 サクラが考えている事は、王女の友人(・・・・・)としての行動なら、と言っているのだ。


「ふぅ~~……済まなかったエドガー。ローザも、私はやはり【ビコン(・・・)】なようね……姉上から出された王命だからと言って、私が王女の立場で願い立てる必要は無かったんだわ……」


 王女はゆっくりと一息()き。

 雰囲気(ふんいき)をガラリと変えて、友人に話すように、軽く、心地よく、笑顔を見せて話しをする。

 王命であろうと、この世界の住人ではないローザやサクラ達に、強制(きょうせい)することは出来ない。

 それは初めから分かっていながら、ローマリアは王女(・・)としてここに来てしまっていた。


 サクラに、それを教えられた。ローマリアはサクラに顔を向けて笑顔を見せる。

 先程からしていた強張(こわば)った、緊張した面持(おもも)ちはもうない。

 年相応(としそうおう)、よりは(おさな)いが――素敵なスマイルだった。

 サクラも、空気の変わった王女からそっぽは向くが、その横顔は笑みを浮かべていた。


「――それじゃあ、サクラも納得(なっとく)しそうだし、話しに戻るわよ?」


「べ、別に納得(なっとく)してない訳じゃなくて……って、もう~!」


「あはは、分かってるよ……ありがとう、サクラ」


 ローザが張り詰めた空気を壊してくれた。

 エドガーも分かっていて、何も言わなかった。





<……これでいいですか?>


 エドガーは、【心通話】でフィルヴィーネ(・・・・・・・)に返す。


<……ああ。それでいい……主導権(しゅどうけん)はこちらにあるべきだからな。そのことは小娘(サクラ)が一番分かっているようだ……それにロザリームも分かっていて、小娘に(まか)せたのだろう。案外(あんがい)人思いな奴だな……>


 今のやり取りの中でエドガーが口数が少なかった理由は、フィルヴィーネと【心通話】で常にやり取りをしていたからでもある。

 逐一(ちくいち)全員の言葉を送っていたので、話す(ひま)がなかった。


 そして、フィルヴィーネに止められていた(・・・・・・・)

 サクラが王女に食って掛かって行った時。フィルヴィーネが、止めようとしたエドガーを(せい)した。ローザも同じく止めて来たという事は、きっと同じ考えだったのだ。初めから。


<だがこれで、話しはこちらに(かたむ)くだろう。だが油断はするなよ?お(ぬし)が“不遇”とやらで待遇(たいぐう)を悪くしている事は聞き及んでいるが、決して消極的(しょうきょくてき)になるで無いぞ?>


<……はい。ありがとうございます>


 フィルヴィーネの言葉に、エドガーは気を引き締める。

 エドガーの気持ち次第(しだい)で、事はまた揺らぐかもしれないという事だ。





「――もう王命はどうでもいい。いやどうでもは良くないのだが……それでも私は、友にお願いをするわ。まだ関係性はほんの少ししかないけれど、それでも、私がエドガー達を信頼(しんらい)しているのは本当よ……私は、ローザを指南役(しなんやく)(まね)くことを、自分の為――そしてエドガー達の為にもなると考えている」


「それはそうでしょうね。私も同じよ……私も、城に行くこと。それがエドガーの為になると思っているから、こうして行動することを選んだ……別にローマリアがそんな(かしこ)まって頼み事をしてこなくても、聞くつもりではあったわ」


「……えぇ」


「――あ、それはあたしも。今言ったのは本心だけど、最初から邪魔(じゃま)するつもりだったんじゃないから」


「……ええぇ」


「僕もですよ。殿下(でんか)……頼みなら聞きます。僕は……【召喚師】です。依頼(いらい)を受けて日銭(ひぜに)(かせ)ぐ、そうして生きて来たんですから」


 遠回しに金銭要求(きんせんようきゅう)

 それをしなかったら、ただの使いっぱしりになってしまう。


「――わ、私の緊張(きんちょう)は……」


 ガックリ肩を落とし、折角(せっかく)綺麗(きれい)着飾(きかざ)ったドレスの肩口をずるりと下げる。


「ふふ……ローマリア、今の貴女(あなた)……まさしく【あほ面(ビコン)】よ……?」


「――!?……あははっ……そうでしょうねっ!!」


 今のは流石(さすが)不敬(ふけい)なのでは!?と、【従騎士(じゅうきし)】二人がオーデインを見るが、(はさ)まれたオーデインは。


「フハハハハハ!!!ヒィー、ヒィ……フハハハハハ!!」


 ローマリア以上に涙を流して、過呼吸になりながら大爆笑していたのだった。


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