表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 4章《残虐の女王が求めるもの》
195/383

181話【国からの依頼】



◇国からの依頼(いらい)


 サクラの世界である、【地球】。

 その英国式で()れられた紅茶を堪能(たんのう)しながら、ローマリアは息を落ち着かせる。

 紅茶のおかげで、だいぶ精神的にも余裕(よゆう)を持てそうだった。


「話に戻ろうか……姉上。第一王女セルエリスからの王命は……調査(・・)なのだ」


調査(ちょうさ)……?」

「ですか?」


 ローザ、そしてエドガーが。

 疑問符(ぎもんふ)を浮かべずにはいられなかった。

 それを()べたローマリアにも戸惑(とまど)いがあったが、姉に(さか)らう事も出来ないのが現状(げんじょう)ではある。


「ああ。そう……調査(ちょうさ)だ、最近……不審者(ふしんしゃ)が王都の北門から出ていくのが、目撃されている」


不審者(ふしんしゃ)、ねぇ……」


 最近、自分達も王都北門を出入りしたが。

 「それって、もしかして……」とエドガーはローザを見るが、ローマリアが先に。


「……いや。ローザやエドガー……殿、達ではない」


 切りが悪いローマリアの(しゃべ)り。気が抜けて、どうしても口調(くちょう)が軽くなってしまいそうになる。

 ローマリアは、普段ようやく友として話せるようになった者たちと、こうして仕事モードで話をすることが嫌だったのだ。しかし、後ろに(ひか)える部下たちの手前もある。

 下手な事も、冗談も言えない事がなんとももどかしかった。


 しかし、ローザが気になるのはそんなんことではなく。


「――ふぅん……私達ではない。どうして(・・・・)知っているのかしら?私達が北門から出た事を……」


「――うっ……や、やはり気になるか?」


「――ああ。なるほどそういうことか……」


 他の誰よりも早く、サクヤがローザが言った言葉に勘付く。

 何故(・・)知っているのか。門番すらいなかった北門から、エドガー達が出たことを。


「確かにわたしも気になります……あの鉄馬車【らんでるんぐ】は、まぁ見られていたとしても……わたしたちが門を出るところは見られていません。誰にもです」


 門番すらいない北門、通行人は皆無(かいむ)

 外国からの旅行者(りょこうしゃ)もいない。では何故(なぜ)、王族のローマリアがエドガー達が北門を出た事を知っているのか。


「……何かあるわね?ローマリア」


「……ええ。そう……この王都の全ての門には……“魔道具”が設置(せっち)されているわ。監視の“魔道具”が」


 観念(かんねん)したように、ローマリア王女はそれを()べる。


「――えっ!?」


「監視カメラってこと……?」


「カメラが何かは……ああ、ソレか……」


 サクラが簡単に(たと)えるソレを、【スマホ】で見せる。

 ローマリアはうむ、と(うなず)く。


「そういったものだ。門には、それと同じ概念(がいねん)の物が設置(せっち)されている訳だが……数日前、エドガー達が帰ってきた後……その(あと)に、不審者(ふしんしゃ)が映っていたらしい。一瞬だったが、馬車を使って出て行っていると聞き及んだ……そしてその馬車は――西から来たものだ」


「……西?」


「ああ、西の門の監視“魔道具”にも、同様の馬車が映っていた……」


 西から来た馬車が、北から出ていった。


「普通に旅行者(りょこうしゃ)じゃないの?……ですか?」


 サクラの言葉にローマリアは首を振る。


「それはない。有り()ない……」


 全否定(ぜんひてい)だった。確信を持って言っているのを見て取れる。


「また自信満々ね……ローマリア王女。不自然な程だわ」


「――そ、それは……」


 目を()らすローマリアは、一筋(ひとすじ)汗を流す。

 何か知られたくない事を隠す子供。そんな感じだ。


「ローマリア殿下(でんか)……その不審者(ふしんしゃ)を僕たちが調べる……調べなくてはいけない理由を教えて頂けますか?――そうしてくれたら、深くは聞きません」


 エドガーは深く追求(ついきゅう)しようとする隣のローザを(せい)して、ローマリア王女に答えを(のぞ)む。

 ローザは「聞かなくていいの?」とエドガーに視線(しせん)だけで確認するが、エドガーは首を縦に振って(うなず)いた。

 そしてローマリア王女は。


「……わ、私の試練(しれん)だ。エドガー殿……これは、私がセルエリス姉様から突き付けられた――私の……王族としての課題(かだい)なの」


試練(しれん)課題(かだい)?……何のよ?」


「……」


 ローザに急かされて、ローマリア王女は口籠(くちごも)る。

 ジト目を受けて、ローマリアは汗を()狼狽(ろうばい)しそうになった所、後ろから声が掛かる。


「――殿下(でんか)……もういっそ、正直に(おっしゃ)ったらよいではないのですか?」


「オ、オーデイン……!?」


 ローマリア王女は振り返るが、汗が遠心力(えんしんりょく)で飛んだ。

 (うし)ろから口を出したオーデインは一歩前に出て、空になったティーカップをテーブルの上に置き、王女に助け(ぶね)を出す。


「――言いにくい状況(じょうきょう)を作ったのは殿下(でんか)ご自身ですし、セルエリス様が(おっしゃ)ることもごもっとも。国に(つか)える私達【聖騎士】には口出しできません。ですがローマリア殿下(でんか)は違う。今ここにいる殿下(でんか)が、今回のこの公務を任された。それは、ローマリア殿下(でんか)が多少なりとも利益(りえき)を得る事が出来るものでしょう……」


「それはそうだけど……でも、こんな命令……私は」


「そうですね。嫌でしょう……ならば誠意をもって依頼(いらい)をし……認めて貰う事こそ、王女の仕事ですよ。それに、セルエリス様には『我儘(わがまま)を言うなら、それ相応(そうおう)対価(たいか)を』……そう言われたではないですか」


「――うっ!!」


「「我儘(わがまま)?」」


 エドガーとローザがハモッた。

 ダラダラと、ローマリア王女の汗はとどまる事を知らない。

 レイラはそれを、そっと()いている。

 レグオスだけは、どうしたらいいのか分からないのか、サクラを見た。


「――!?」


 どうやらサクラと目があったようで、ギギギと視線(しせん)()らす。

 このレグオスだけは、ハッキリ言って会話に集中していない。


「むぅぅ……――はぁ……」


 ローマリアは一人、必死に苦渋(くじゅう)の顔を浮かべて。

 そして何かを(あきら)めたかのようにため息を()き。


「――エドガー殿、ロザリーム殿……私がロザリーム殿に依頼(いらい)を出した件、覚えているだろう?」


「……え、ええ。勿論(もちろん)です」


「覚えているわよ……指南役(しなんやく)、でしょう?」


「そう。私は……それを姉上に打診(だしん)したのだ……ロザリーム殿を、指南役(しなんやく)として城に(まね)きたいと」


「……あ~、そういうことね……」


 それだけで、サクラは気付いたようだ。

 この話しに(つな)がると言う事を、(あらかじ)予測(よそく)していたのだ。


「――つまり、ローザさんを指南役(しなんやく)として(むか)えたいのなら、この不審者(ふしんしゃ)の事を調べろ、もしくは解決しろって条件付けされたんじゃないですか?――しかもそれを王女様じゃなくて、“不遇”職業とか言う訳も分からない設定されてるエド君に、正確には【召喚師】に、ですかね?」


「――うぐっ……す、(するど)い……」


 サクラはもう完全に理解していた。

 (すで)に答えまで(みちび)き出ているのか、うんざりした顔を隠すことなく、ローマリア王女に言葉を向ける。


「あたしは元々、ローザさんが城に行くのは反対派です……でもローザさんが、それにエドガー(・・・・)君がいいなら……って理解しようとしました。でも、それに更に難題(なんだい)が追加されるようじゃ、考え物ですよ。王女様……」


 エドガーを愛称(あいしょう)で呼ばないくらいには自制(じせい)が利いているが、目つきは(するど)い。しかし心なしか、(ひたい)の《石》が光っている。


「サ、サクラ……ちょっと落ち着い――」


「――ごめんエド君。あたし冷静(れいせい)だよ」


「あ、はい……」


 (にら)まれた。サクラの(するど)眼光(がんこう)に、蛇に(にら)まれた(かえる)のように大人しくなるエドガー。

 サクラの眼光(がんこう)は、そのまま王族側に(うつ)される。

 王女は生唾(なまつば)を飲み込み、レグオスは必死に視線(しせん)()らす。

 レイラは困ったようにあわわ、と(あわ)てる。

 そんな中、オーデインだけが笑顔を()やさず、サクラの言葉を理解していた。


「サクラ殿……貴女(あなた)のお言葉はごもっともですよ……気持ちも分かる。しかしその言葉は、不敬(ふけい)にも取られかねないという事をご理解して……いえ、愚問(ぐもん)でしょうね」


 サクラが完全に理解して言葉を()べた事を、オーデインも感じ取った。

 この娘は、それだけこの【召喚師】との関係性を大事にしているのだと。


「――しかし我々(われわれ)も、協力が()られると確証をもって来ている訳ではありません……そこだけは分かっていただきたい。ローマリア殿下(でんか)も、この王命を出すことを受け入れたくはなかったのです」


「それは分かってます。理解もしてます……でも、あたし達(・・・・)には関係ないんで。あたしは、自分の大切な物だけを優先します。『我儘(わがまま)を言うならそれ相応(そうおう)対価(たいか)を』……それはあたし達にも言えます。エドガー君が【召喚師】だからと言って、無償(むしょう)で聞くほど……あたし達(・・・・)善良心(ぜんりょうしん)を持ってません」


 ローマリア王女は、サクラの視線(しせん)から逃げ出せないままそれを受け止める。

 そしてその言葉を重く受け止め、言う。


「――分かっている。サクラ殿の言う通りだ……私は甘えている。エドガー殿なら、ロザリーム殿達ならと……勝手に頼ってしまっている。自分の都合だけで話していた」


 背筋を伸ばして、誠心誠意(せいしんせいい)の言葉を()くす。

 誤魔化(ごまか)してはいけないと。逃げてはいけないと。

 同世代の少女が、覚悟を()って向き合ってくれている事実に。


我儘(わがまま)を言った……すまない」


 ローマリアは頭を下げる。

 テーブルに手をついて、(ひたい)を押しつけて。


「で、殿下(でんか)……!――っ」


 一番(あせ)ったのはエドガーだ。

 「頭を上げてください」と言おうと腰を上げたのだが、ローザに止められる。

 「しっ」とローザはエドガーを(せい)す。その顔は少し複雑(ふくざつ)そうであり、嬉しそうでもあった。

 そんな中ローマリアは続ける。


「当然……依頼(いらい)報酬(ほうしゅう)は用意する。【召喚師】だからと、差別することはしないと約束しよう。国の為の依頼(いらい)……確かにそうでもある。だが、私が王城以外で信頼(しんらい)できるのはローザやエドガー達だけなのだ……!頼むっ――いや、お願いします!」


 サクラは思った。

 この時点で、【聖騎士】を動かせないのは確定。

 きっと姉のセルエリスには、『自分の力=聖騎士の力ではない事』を(しめ)せ。

 そう言われた可能性が高い。


 ローマリアは、姉から(ため)されている。

 現在の【聖騎士】の大半は、ローマリアに()くしていると言う実態(じったい)があるにせよ、確実に指示を出せるかと言えばそうではない。

 【聖騎士】を『軍事(・・)』として動かすには、王の言葉が必要になる。

 そしてその実権(じっけん)を持つのは、(おおやけ)に出てこなくなった王と、第一王女セルエリスだけだ。


 セルエリスからこの王命をされたという事は、【聖騎士】は使えないという事だ。

 だとするとローマリアには、使える手札、頼りに出来る人物がいない。

 今この瞬間、エドガー達以外には。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ