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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 4章《残虐の女王が求めるもの》
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165話【朝日の雫】



朝日の雫(ホワイトサファイア)


 異世界人達の話し合いは、エドガーとメルティナが木を(ひろ)っている最中(さいちゅう)に終わった。

 【心通話】で連絡を受けたメルティナは、申し訳なさそうにエドガーに言う。


「――マスター」


「……ん?」


「どうやらローザ達の話し合いが終わったようです。戦いを再開するので、戻って来いとの事でした」


「えぇ~……僕達、全然聞いてないじゃないか……勝手だなぁ、もう……」


 「あはは」と笑いながらも木を(ひろ)う。

 小脇には(すで)に十本近い(まき)代わりの木が(かか)えられており、そろそろ戻ろうかと考えていた所だったのだが。


「申し訳ありません。詳細(しょうさい)はワタシが聞く予定ですので、後でマスターにもお知らせいたします」


「――ん?――そっか……分かった。頼むよ」


 それは僕に直接でもいいのでは?と思うも、エドガーはその言葉を飲んだ。


「それと……」


 メルティナは申し訳なさそうに続ける。


「……今()ぐに戻って来いと催促(さいそく)が止まりません。どうやら、ローザとワタシで、フィルヴィーネと戦う事が(すで)に決まっているようです……」


 いつの間にか、ローザとメルティナのタッグでフィルヴィーネと戦うことが決まっていた。

 そして、ついでと言わんばかりにエドガーにも【心通話】が入る。


<エドガーよ、()()鍛錬(たんれん)してから話がある……キチンと戻っておれよ>


 赤はローザ、緑はメルティナか。


<……分かりました>


 今のフィルヴィーネからの【心通話】はメルティナにも聞こえていたようで。


「……と言う訳だから、メルティナは今直(います)ぐ行ってあげてくれる?」


「イエス。マスター……では申し訳ありませんが……この(まき)をお願い致します――では」


 言い終える前に、メルティナは(すで)に背中に緑色の光翼(こうよく)を出現させていて、なんだかんだ言っても戦う気があるようだった。そして飛び立つ。

 残されるエドガーは。


「――えっ……ちょっ!せめて持って行ってくれても……――い、行っちゃった……」


 手を伸ばすが、(すで)にメルティナはぎゅんぎゅんスピードを上げて、キラーンと《石》を(かがや)かせて行ってしまった。

 残されたのは、まぁまぁ大量の(まき)と、(むな)しく夜空に手を伸ばすエドガーだけだった。





 食事を終えて、フィルヴィーネとローザは被害(ひがい)が出ない様に遠くに向かっていった。

 残されたサクラとサクヤの二人は、消えてしまった焚火(たきび)(そば)でもぞもぞとしている。

 この二人が何をしているかと言うと。


「……こう、かな?」

「分からぬ……いや逆にわたしが分かるとでも思っているのか?」

「――なんで開き直ってんのよっ!ってか、その顔やめいっ!!」


 サクヤの開き直った態度(たいど)に、サクラは一旦(いったん)作業の手を止めてハリセンで叩く。

 ――スパーン!と。


「痛いであろうが……」

「……(うそ)つけっ!」


 二人は、暗くて見えないローザとフィルヴィーネの戦いを見るために、わざわざサクラが開発した【簡易(かんい)フォトンスフィア】の設定を(おこな)っていた。

 エミリアとセイドリックの決闘時に、王族のローマリアとセルエリスが使用していた物。

 その簡易版(かんいばん)何故(なぜ)そんな物をサクラが作っているかと言うと。

 元の世界での【ビデオカメラ】を意識して、この世界での“魔道具”を使って改造(かいぞう)したのだ。


 【遠見(とおみ)水鏡(みかがみ)】と呼ばれる、水面に波紋(はもん)を広げている様な手鏡(てかがみ)

 その鏡部分を数枚と、【拡大四角形(かくだいしかくけい)】と言う物凄く小さなキューブ。

 そのキューブを加工した鏡で(つつ)み込み、(みが)いて球体(スフィア)にした。

 それを今、使用できるか(ため)していたのだ。

 その最中(さなか)にサクラが(つぶや)いた独り言に、サクヤが反応したのだった。


「ああもう。無視無視……」


 サクラは(かばん)から様々な工具を取り出しながら、色々と(ため)して新たな“魔道具”を作っていた(・・・・・)

 エドガーが様々な“魔道具”を組み合わせて【異世界召喚】をするように、サクラもそれに似たことを考え付いたのだ。

 組み合わせて、新しい“魔道具”を作れないかと。


 結果は、出来る――だった。

 サクラの《石》である【朝日の(しずく)】は、“接続(せつぞく)”の力を持つ。

 それは【心通話】の心の(つな)がりであり、空間を(つな)げる(かばん)もそう。【スマホ】の電波を(つな)げる力も、全ては《石》の力だ。

 物質(ぶっしつ)(つな)げる事も容易(ようい)だった。

 組み合わせ次第(しだい)では、万能を超える可能性を()めている。


 サクラは、自分をゲーム機本体に(たと)え、“魔道具”をソフトとして考えた。

 初めはエドガーの家である宿屋【福音のマリス】、その大浴場の“魔道具”を直せないかと考えた。

 エドガーの父が作ったと言う、お湯を出す“魔道具”。

 しかし、その力は欠陥(けっかん)で、お湯を室内から持ち出せないと言う【福音のマリス】でしか温泉を堪能(たんのう)できないものだった。


 室内そのものが一つの“魔道具”として(あつか)われているのか、身体が()れている状態で浴場(よくじょう)から更衣室に出ると、身体に付いた水滴(すいてき)まで消える。

 一見(いっけん)()かなくてもいいと便利に思いがちだが、湯に入ったと言う余韻(よいん)が台無しだった。

 お風呂好きのサクラにとっては、是非(ぜひ)とも直したかったのだ。


 そこから、サクラは地道に“魔道具”を調べ始めた。

 温泉に入る(たび)に何度も何度も調べて、唯一(ゆいいつ)同じ温度の湯に一緒に入れるローザが「鬱陶(うっとう)しい!」と怒ったこともある。

 そんなサクラの成果が(みの)り始め、サクラは“魔道具”を理解し始めたのが、ここ数日前。

 温泉の“魔道具”はまだ直せないが、小型や単一の物は作れ始めて来ていたのだ。


「――おっ!!起動(きどう)した~!後は……二人に持たせた【小型カメラ】に接続(せつぞく)して……っと」


 サクラは【スマホ】を操作(そうさ)して、カメラのアプリを起動(きどう)

 自分が(さわ)っている時にしか電波が入らない【スマホ】だが、現代技術が使えるサクラの異世界での力の一つだ、有効に使わなければ。


「――おぉ!……ローザ殿が(うつ)っているな!」


 身を乗り出して、サクヤがスフィアを(のぞ)く。


「ちょっと!まだ試験中(しけんちゅう)だっての!」


「――ぐぬぬぅぅぅ!何をするかぁぁ!」


 顔を押し合う似た者同士。

 そんな事をしながらも、サクラは【スマホ】を操作(そうさ)して、カメラアングルを切り()える。

 次はフィルヴィーネが(うつ)り、二人に持たせた【小型カメラ】は、キチンと【スマホ】とリンクしているようだ。


「にしても……カメラの設置位置(はいちいち)、何とかならなかったのかなぁ……?」


 ローザもフィルヴィーネも、自分の固定(こてい)アングルの下方(かほう)に地肌が見える。

 きっと、いや確実に胸に(はさ)んでいる。


「すっごい()れるし……」


「た、確かに……――うぅ……また()いそうだ」


「うげ!――なら離れて見なさいよっ……テレビは離れてみるのが、いい子のルールよっ!」


 口元を押さえるサクヤに、サクラはリバースされない様にスフィアを上に()げる。


「……心得(こころえ)た」


「マジで頼むわよ……あたし、釣られやすいから」


 半眼(はんがん)でサクヤを(にら)みながら、サクラは戦況を見やすいように、キャンプテーブルの上に【簡易(かんい)フォトンスフィア】を置いたのだった。


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