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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 4章《残虐の女王が求めるもの》
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164話【魂が巡る場所2】

累計8万PV達成ありがとうございます!!



(たましい)(めぐ)る場所2◇


 ――異世界人達の話は続く。


「あの不思議(ふしぎ)な存在は……私に《能力(ちから)》を与えた。皆もそうでしょう?」


 一様(いちよう)(うなず)く女性陣。


「……あたしは、この【忍者】に負けない力が欲しいって(ねが)ったよ……力って言っても、何がどれだかわかんないけど――【スマホ(これ)】かな?あ、(かばん)かな……?」


「わたしもだ。何故(なぜ)だろうな……お(ぬし)には負けられぬと、その時は対抗心(たいこうしん)一杯(いっぱい)になった記憶があるぞ」


 サクラとサクヤの場合。

 どうやらイレギュラー的な何かが発生したのか、その光の(かたまり)(サクラ達の時は声だけ)は姿を現さなかった。

 ローザの時は人の形を()した光の(かたまり)

 メルティナの時もそうだ、()っすらと形を(たも)った、希薄(きはく)な存在だった。

 その存在の明確(めいかく)な姿形を見ているのは“魔王”フィルヴィーネただ一人。


貴女(あなた)は姿を見たのでしょう?――どうだったの……?」


 ローザは冷めきったコーヒーを口につけて、視線(しせん)をフィルヴィーネに送る。

 そのフィルヴィーネは、腕を組んで何かを考えるような仕草(しぐさ)をし、部下の“悪魔”リザを見る。


「……?」


(……リザは、あの状況(じょうきょう)が無ければここにはいないだろうな。あののっぺらぼうが、どういう理由でリザをこちらに送ったのか……理由は分からぬが、何も出来なくなったリザを送るメリットなどない。()えて言うのならば、(われ)に対する()……のっぺらぼうもそう言っていたしな)


 リザは、フィルヴィーネ“召喚”の魔法陣に無理矢理ついてきた。

 あの場所、【魂再場(こんさいじょう)】でリザを見つけた時、(すで)にリザは小さな身体になり、魔力は残りカス(・・・・)のようになっていた。

 フィルヴィーネは、自分の話よりもリザの話しを重要(じゅうよう)だと感じ、ローザの問いを(せい)して。


(われ)の話はまず置いておいて……リザよ、お前は……(われ)に無理くりついて来たであろう?あの時、何が起きた……?」


 果物(くだもの)丸齧(まるかじ)りしていたリザは、その口を果汁(かじゅう)で汚しながら答える。


「……あの時私は、フィルヴィーネ様の足元に出現した魔法陣に、共にいました」


「ああ」


「……魔力がゴリゴリと(けず)られていく感覚、心と身体を分離(ぶんり)される痛み……私は、急激に減っていく魔力が無くならない様に、自分の身体を魔力に変換(へんかん)して対抗(たいこう)しました。そして気付けば……こちらの世界にいました」


「なるほどな。それで小さくなっていたのかお前は。(けず)られたのは、本来持つリザの最大魔力だろう……今のリザは、そこらの子供よりも弱いからな」


「それって、リザちゃんは元々すっごい魔力があったってことだよね……?それってもしかして……」


「リ、リザちゃん……?」


 サクラのフレンドリーな呼び方に、リザは果実(かじつ)を落とす。

 だが、サクラが言う事はその通りで。

 (けず)られて(けず)られて、自身の魔力と身体をも対価(たいか)にしてまで()えきったリザだが、もし他の人が同じことをしたら?


「――小娘の思っている通りだ。リザでなければ、消滅(しょうめつ)(まぬが)れないだろう。リザが“召喚”の対象(たいしょう)ではなかったからだろうが……そうでなければ、小娘二人も、機人(マキナ)の民も、【滅殺紅姫アナイアレイション・プリンセス】も、()ち果てているさ」


 続けて、フィルヴィーネはローザを見て言う。


其方(そなた)も言っていたが……やはりあの場は……(たましい)をそのままに、身体を元の姿と同じくする再構成を行う場所なのだろう」


「再構成……ねぇ」


 先程も少し話をしていた。身体を作り直す再構成(・・・)


「そうだ――この世界に対応できるように……元居た世界の身体を捨て、この世界に(てき)した身体に作り直されたと考えるのが妥当(だとう)だ。元の世界での最後の瞬間、身体を消失(しょうしつ)する感覚があったからな」


「……そういう事ね」

「……あっ」

「う~ん……」


 ローザとサクラは思い当り(ふし)があるのか、思い出す。

 サクラは“召喚”される瞬間、光に(つつ)まれた。

 ローザは自身の炎に焼かれ、元の世界を()った。

 きっとサクヤとメルティナにも、似たような現象(げんしょう)があるはずだ。


 “召喚”対象者(たいしょうしゃ)は、特殊な条件(じょうけん)を持っていた可能性がある。その条件が何かは分からないが、何らかしらの工程(こうてい)は確実にあったと考えられる。

 フィルヴィーネ“召喚”の(あいだ)に割って入って来たリザが、やはりイレギュラーなのだろう。

 その工程(こうてい)無視(むし)して【魂再場(こんさいじょう)】に侵入(しんにゅう)したことが、魔力を(けず)れられた原因(げんいん)の可能性もある。

 

「……」


 メルティナは無言のまま、以前の【解析(アナライズ)】の結果を再表示する。

 魔力(MP)だけを表示して、調べた事のある分だけを見比べる。


 ・エドガー:247(+200)

 ・ローザ:1208

 ・サクラ:398

 ・サクヤ:449

 ・メルティナ:578


 やはりローザの数値だけは別格だ。

 それにしても、フィルヴィーネの言葉だけで考えて見て。

 フィルヴィーネとリザは、確実にローザ以上の魔力があるのだろう。

 リザの場合は、あった。だろうが。


「その“悪魔”が貴女(あなた)おまけ(・・・)だとしても、エドガーの魔力を分け与えられた存在には変わりない……関係の無いその“悪魔”があの場所を渡ってこれただけで、凄い執着心(しゅうちゃくしん)の持ち(ぬし)なのは分かるわ」


 ローザの言葉に、少し(おどろ)いた表情(ひょうじょう)を浮かべるフィルヴィーネ。

 フィルヴィーネをかなり敵視(てきし)しているローザが、リザを少しでも認めているという事に、(おどろ)きと嬉しさを覚えたのだ。


「……ふっ……」


 フィルヴィーネがクスリと笑う様に息を()く。

 すると――パキンっと、焚火(たきび)の木が鳴り響き、それに気付いたエドガーが(あわ)てて。


「――あっ、木を()べないと……ちょっと行ってくるね」


 と、焚火(たきび)の方に行ってしまった。

 それ(・・)に気が付かなかったのはサクヤのみ。

 ローザ、サクラ、メルティナは、どうやらフィルヴィーネの意図に気付いたようだ。


貴女(あなた)……」


「フフフ……流石(さすが)に、(われ)の話は聞かれない方がいいと思ってな……」


「……エド君に?」


「ああ。そういう事だ」


 エドガーに聞かれたくない話。

 それは、光の(かたまり)――のっぺらぼうの事だ。

 エドガーがいる事で、フィルヴィーネが言いにくくなっていた事。


(われ)が見たお主等(ぬしら)が言う光の(かたまり)……(われ)は魔力の可視化(かしか)で見たと、そこまでは言ったな」


「うん、あたし達の話はしたから、後はフィルヴィーネさんだけです」


「そう……だからエドガーを……」


 勘付いたのか、ローザは焚火(たきび)()べるエドガーを見ながら、右手の指をパチンと鳴らす。


「――ええっ!?」


 火を操って、焚火(たきび)を消したのだ。

 絶賛(ぜっさん)燃え始めていた焚火(たきび)が一瞬で消えたことに、エドガーは声を出して(おどろ)いている。

 サクラはクスリと笑い、サクヤは「何故(なぜ)そんなことを?」と不思議(ふしぎ)そうにしている。

 メルティナは立ち上がり、まるで都合(つごう)を合わせるように動く。


「マスター。()れ木が足りませんね……(ひろ)いに行きましょう」

<誰でもいいので、【心通話】で教えてください。ワタシはマスターを引き付けておきます>


「え?……うん。分かった」


 エドガーは一人でも大丈夫だったが、メルティナがズイズイと進んで行ってしまう。


「そ、そこまでするの……?」


 その様子を見て、サクラは「流石(さすが)にやり過ぎじゃ……」と苦笑い。

 しかし、事はそれだけ重要(じゅうよう)だと言う事だった。


「……行ったわね。それじゃあ“魔王”……貴女(あなた)可視化(かしか)で見たあの光の(かたまり)の正体……聞かせてくれるかしら」


 新たに(まき)代わりになる木を探しにいくエドガーとメルティナを見届けて、ローザが進行を再スタートさせる。


「そうだな……まず、あまり(おどろ)かぬようにな……特にそこの小娘」


「……だそうだぞ、サクラ」

「――いや、あんたの事だって……」


 テーブルに(あご)をついてだらけるサクヤと、ツッコむサクラ。


「どちらもだぞ……」


「「ええっ!?」」


「――いいから進めて頂戴(ちょうだい)……早くしないとエドガーとメルティナが戻ってくるわよ?」


 黒髪の少女二人は申し訳なさそうに平謝(ひらあやま)りしつつ、フィルヴィーネは笑う。

 しかし話をする瞬間、その笑顔は真剣なものに変わる。


「……(われ)が見た、あののっぺらぼう……お主等(ぬしら)の言う光の(かたまり)か……その魔力を可視化(かしか)した姿は――人間そのものだった」


 ローザ、サクヤ、サクラの三人は、ピタリと止まる。

 少しの()で、ローザはコーヒーを飲みだすが、サクラは(けわ)しい顔をしている。

 だらけていたサクヤも、フィルヴィーネを真剣な眼差(まなざ)しで見ていた。


「……まあ聞け。あくまでも(われ)が見た見た目(・・・)の話だ……姿形(すがたかたち)は、(まぎ)れもなく人間に見えたと言う話しだ――だがな……」


「だが?」


「……魔力の質や、その異質(いしつ)雰囲気(ふんいき)は……到底(とうてい)人とは思えぬものであった……」


 「貴女(あなた)も人ではないでしょう」と言いたそうに、ローザは(あき)れつつフィルヴィーネを見る。


「――アッハッハッハ!それもそうだなぁ!」


 意図(いと)(つた)わったのか、フィルヴィーネは笑い出す。

 一頻(ひとしき)り笑うと、フィルヴィーネはコーヒーを口にし。


「……お主等(ぬしら)が見聞きしたものと、大して変わらぬ(・・・・・・・)よ……残念ながらな」


 一つ(うそ)をついて、この場を()めにかかる。

 エドガーにバレなければ、それでいいのだ。


(()し……と言ってしまったからな。(われ)が破る訳にもいくまい……)


 あののっぺらぼうは、エドガーの姿形(・・・・・・・)をしていた。

 魔力の質や内に(あふ)れるオーラが、ほぼ本人と同じ。

 だが、言動や態度(たいど)から見て、(けっ)してエドガーと同一人物とは思えない。


(もしあの場が……(たましい)(めぐ)りゆく場所だとすれば……“召喚”をするエドガーの魔力が形になった存在の可能性もある。しかし、“召喚”が《魔法》の一つだとしても、人を()した……意志を持った《魔法》などという事が可能か?……いや、“神”にすら……そういった《魔法》は作れていない)


 フィルヴィーネは背凭(せもた)れにのしかかって、(いぶか)しむローザに言う。


「――なんだ?元“神”であり“魔王”の(われ)だって、分からないことくらいあるぞ。アーッハッハッハ!!」


 不自然なフィルヴィーネの態度に。

 ――はぁ。とため息を()くローザ。


(……それ以上は聞くなって。って事ね)


 “神”や“魔王”など、日本人からすれば中二と言われそうなワードを惜しみもなく言うフィルヴィーネに、若干(じゃっかん)引き気味のサクラ。

 「格好いい!!」と、目を(かがや)かせるサクヤ。

 それぞれの感性で、(たましい)(めぐ)る場所――【魂再場(こんさいじょう)】の話は終わっていった。


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