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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 4章《残虐の女王が求めるもの》
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161話【転体魂再】



転体魂再(てんたいごんさい)


 フィルヴィーネは無言で食事をしていた。

 食事が不味(まず)いわけではなく、ローザから聞いた話が衝撃的すぎたらしい。


「……まさか叡智(えいち)ある【四大天使】の一人が――幼女趣味(ようじょしゅみ)変態(へんたい)だったとは……」


「それは激しく同意(どうい)するわ……実際(じっさい)、私が成長期で大きくなったら、()ぐにいなくなったし(・・・・・・・)


「――ア、アヤツ……はっ!そう言えば《天界》にいた頃も、(はべ)らせていたのは子供ばかりだった……!」


 擁護(ようご)する訳ではないが、“天使”ウリエルは女である。


「よく堕天(だてん)しなかったわね……あいつ。あんなに欲望(よくぼう)忠実(ちゅうじつ)なのに……」


「確かに……(われ)ですら、ある種で(よく)で魔に()ちたと言うのに」


貴女(あなた)の……欲望(よくぼう)?」


 ローザはパン(がゆ)を運ぶスプーンの手を止めて、フィルヴィーネを見る。

 そのフィルヴィーネは、(なつ)かしむように言う。


単純(たんじゅん)な話だ……退屈(たいくつ)だったのだよ、平穏(へいおん)が……」


 フィルヴィーネが【紫月(しづき)の神ニイフ】だった頃、(すで)に《天界》と《魔界》、そして《人間界》は(すで)に分け(へだ)てられていた。

 世界が一度終わり、新たな【主神(しゅしん)】となった【ザフィルセイオス】は、《天界》と《人間界》を行き来する道を全て閉鎖(へいさ)した。

 人間界でも、戦いは無きにも(ひと)しい時代が数百年続き、《魔界》からも侵攻が無くなり、本当に争いと言う言葉が無くなりつつあった。


 しかし、それをよしとしない“神”達もいた。

 フィルヴィーネ――ニイフがその神々の中枢(ちゅうすう)メンバーと言う訳では決してないが、(ひま)をしていたのも事実。

 【紫月(しづき)の神】の(つかさど)るものは、躍動(やくどう)興奮(こうふん)。そして騒動(そうどう)だ。

 正直言って、人々が(こぞ)って信仰(しんこう)する“神”ではない。


 それでも、ニイフが所持(しょじ)する《神器(アーティファクト)》【転竜(てんりゅう)の玉石】は、神々に必要不可欠な存在だった。

 《人間界》へ渡る為には転移(てんい)をするしか、行き()する(すべ)が無くなったからだ。

 だが、退屈(たいくつ)退屈(たいくつ)を重ねて過ごしていたニイフに限界(げんかい)が来た。


 『私は……“神”を辞める!!』と【主神】に宣言(せんげん)したと思うと、御付(おつ)きの“天使”達を連れて《魔界》に転移(てんい)し、数千数万の“魔族”を屈伏(くっぷく)させて、“魔王”を名乗り始めたのだ。

 それが、この時代から(おおよ)そ四千年前、ローザがいた時代から数えても、約千年だ。


「《魔界》に来てからは、それはもう毎日楽しかった……だが、その日々も長くは無かった。“魔族”は、繁殖性(はんしょくせい)(きわ)めて低い……それは《天界》でも同じだが、“魔族”の場合はちと違う」


「……と、言うと?」


 (だま)って聞いていたエドガーが聞き返す。


(ほろ)びの寸前(すんぜん)だったのだ。“魔族”も“天族”も……だから、もう純粋(じゅんすい)な“悪魔”も“天使”も生まれぬ。その為には生み出された(すべ)が……【転体魂再(てんたいごんさい)】だ」


転体(てんたい)……魂再(ごんさい)?」


 ローザとメルティナはなるほどと納得(なっとく)していたが、エドガー達留守番組(るすばんぐみ)には何が何だか分かっていない。

 それを思ったのか、メルティナが説明してくれた。


「マスター。フィルヴィーネは、ワタシとローザに【転体魂再(てんたいごんさい)】の説明をしてくれると言う話でした……ですが、ここに戻って来てからという事で、先延(さきの)ばしになっていたのです」


「ああ、それで……」


 この話をするしないで一悶着(ひともんちゃく)あったのだろう。

 だからローザとメルティナは疲れていたのだ、とエドガーは予想した。


「エドガーやその他(・・・)がいた方がよいだろうが……!」


「その他はひどくないっ!?」

「……その他……わたしの事か!?」


 その他(サクラとサクヤ)反論(はんろん)


「いいから(だま)っていなさい……」


「「……はぃ」」


 しかし、あっけなくローザに封殺(ふうさつ)された。

 こう言う、人を(だま)られるのは本当に上手(うま)いローザ。

 「続きを」と、ローザがフィルヴィーネに(うなが)す。


「“魔族”の上位が“悪魔”“魔人”、そして“魔王”だ。逆に“天使”の下位が“天族”、上位が“神”だとする。それは人間にもあるが……――まぁ、もう存在していないだろうからそれはいいか……」


「聞いたことないわね……そもそも私は“天族”なんて知らなかったし」


「“魔族”“天族”は……翼のない“悪魔”“天使”のようなもの。気付かぬのも無理はない……それに、極端(きょくたん)に数が少なかったしな、“天族”は……人間は非常に弱く寿命(じゅみょう)も短い。しかし種族の中でも繫殖力(はんしょくりょく)が強く、戦争が無くなってからはあっと言う間に増えていった……それこそ、数だけなら《天界》も《魔界》も、(すで)に追いつけるわけがないくらいに、な」


「……ん?それって、もしかして」


 その他。ではなくサクラが何かに気付いたのか、神妙(しんみょう)面持(おもも)ちで考える。

 フィルヴィーネは、それを面白そうに。


「ほぅ。小娘……何か気付いたか。どれ、言ってみるがいい」


「いや……でも」


「言いなさい。サクラ」


「――うぅ……分かったよぉ」


 ローザとフィルヴィーネに気圧(けお)されて、まだ自分の中でもまとまっていない仮説(かせつ)()べる。

 いや、()べらせられる。


「フィルヴィーネさんの言う【転体魂再(てんたいごんさい)】……?文字にするとこうでしょ?」


 サクラはそこら辺い落ちていた木の棒を手に取り、地面に【転体魂再(てんたいごんさい)】と一文字ずつ書く。漢字で。


「――ほぅ。小娘の世界の文字か……しかし、分かるのが不思議(ふしぎ)だな」

「そうね。私の世界の文字もサクラが読めるように……異世界の不思議(ふしぎ)ってやつかしらね」


「あたしの考えだと……身体だけを転生させるんじゃないかな。文字通りだとしたら、人間の身体を再構成して、同じ(たましい)を入れる……そうして“天使”とか“悪魔”にする……みたいな?」


「そんなことが可能なのかな……?いや……でも」


 エドガーはその複雑怪奇(ふくざつかいき)な仕組みを理解しているのか、う~んと考え始める。

 それを余所(よそ)に、サクラは続ける。


(たと)えばだけど……同じ人間の(たましい)だけを同じくして再構成、転生させるとして……“神”様とか“魔王”様みたいな、尋常(じんじょう)ならざる者なら……可能なんじゃないかなって」


 その考えにフィルヴィーネは軽快(けいかい)に笑い、サクラを()めた。


「クックック!流石(さすが)は異世界の知恵(ちえ)という事か……ほぼ正解だ」


「ほぼ……?」


「うむ。正確には、(われ)ら“魔王”や“神”でも、それを行うことは出来ぬ。(たましい)の転生だけならば――流転(るてん)するのだ、自動で勝手にやってくれるがな……だが選択することは違う。(たましい)を同じくして、身体をも同じに作り直す……しかしその構成は別物だ。脆弱(ぜいじゃく)な人間を姿を同じままに別の存在にするなど、そんな力は、余程(よほど)の事ではない」


「……?」


 エドガーは首を(ひね)る。

 フィルヴィーネが、エドガーを見ていたからだ。


「エドガー……其方(そなた)(にぶ)いと言われるだろう?」


「え……ええ!?」


 なぜ急にと、エドガーは椅子(いす)から尻を上げて(おどろ)く。

 そしてサクラも考えがまとまったのか、サクラはエドガー以上に(おどろ)く。


「もしかして……!!」


「「“召喚(・・)”……」」


 サクラの声に合わせて、ローザも()べる。

 どうやら、ローザも少し勘付(かんづ)いていたらしい。


「心当たりがあるのだろう?ローザよ……」


 フィルヴィーネは、(すで)に当たりをつけていたようで。

 ローザに対して邪悪(じゃあく)な笑みを浮かべた。


「ええ……気に食わないけれど……貴女(あなた)の言う通り、きっと私は……私達は――エドガーによって、再構成されている……」


「「!?」」


(おどろ)いている(ひま)は無いわよ……サクラやサクヤ、メルティナも。きっとフィルヴィーネも……ここにいる異世界人は、皆そう……エドガーは分からない世界。あの場所(・・・・)が、それを行う場所だわ」


 異世界人全員が思い当たるあの場所(・・・・)

 エドガーは、混乱しそうになる頭を落ち着かせて、ゆっくりと席に座り直して。


「……聞かせてくれないかな……その話」


 【異世界召喚】と【転体魂再(てんたいごんさい)】、二つの共通点。

 まだ仮説(かせつ)にせよ、(かぎ)りなく正解に近いであろう答えを、ここにいる異世界人達は、(みちび)いていく。


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