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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 4章《残虐の女王が求めるもの》
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160話【キャンプ】



◇キャンプ◇


 ローザが()れ果てた大木の丸太に座っていると、戦い終えたメルティナとフィルヴィーネが戻って来た。

 フィルヴィーネは軽快(けいかい)に笑い、メルティナは物騒(ぶっそう)な物を見る目で笑う“魔王”を警戒(けいかい)しているように見える。


「……随分(ずいぶん)とお疲れのようね、メルティナ」


「あぁ……ローザ。目を覚ましましたか……どうです、体力の回復は出来ましたか?」


「ええ。そこはありがたかったわね……貴女(あなた)は、相当(まい)っているようだけれど……」


 ローザは、元凶(げんきょう)であるはずのフィルヴィーネ見る。

 メルティナの疲労(ひろう)は、確実にこの高笑いをする“魔王”のせいだろう。


「時間的にも、一旦(いったん)仕切り直しかしらね……」


 赤い髪を指先でクルクル(いじ)りながら、ローザは右手から炎を出し、天に打ち上げる。

 (すで)に真っ暗な時間帯になり、月明かりだけが三人を()らしていたわけだが、ローザが上げた炎は臨界点(げんかいてん)まで到達(とうたつ)すると、ゆっくりと落ち初めて、やがて破裂(はれつ)する。


「これは……信号弾(シグナル)ですね。終わりの合図(あいず)ですか?」


「そうよ。エドガー達にね、時間も時間だし私も反省(はんせい)したわ。お腹もすいたし……」


「……そうですね。流石(さすが)にマスター達も待ちくたびれているかもしれません」


 ローザは、休めた事で冷静(れいせい)になれたようだ。

 二人は破裂(はれつ)していく火花を見ながら、結構な距離(きょり)を置いて待っている筈の《契約者》と仲間を思って、クスリと笑ったのだった。





 一方でエドガー達はというと。

 装甲車【ランデルング】の中に(もう)けられたシャワールームを使用可能にするべく、様々な《石》を(主に赤色)(ため)していたのだが。

 組み合わせを間違えた誰かさん(・・・・)のせいでシャワーが暴発(ぼうはつ)し、サクラとリザがびしょ()れになっていたのだが。


「はぁ~~~~、極楽極楽(ごくらくごくらく)、《魔界》の湯にも(おと)らないわ~」


「ですね~……《魔界》は知りませんけど~……――で、反省した(・・・・)?に・ん・じゃ!!」


 リザの言葉にサクラは機嫌よさげに(うなず)く。

 そして、下にいる誰かさん。サクヤに声を掛けたのだが。


「……した」


 ムッとしながら答えるサクヤ。


「――絶っ対してないわね……ったく、あんたが無理矢理《石》を取り付けたからこんなことになってんでしょ!まぁエド君がこんなに素晴らしい物(・・・・・・・・・・)を用意してくれたから。水に流してあげるけどっ」


 ちゃぱちゃぱと、自分が入る(・・・・・)湯船のお湯を(すく)い肩にかける。


「……ぐぅ~」


 涙目で、サクラが入る湯船の下にある火種に息をかける。

 そう、【ドラム缶風呂】だ。正確にはドラム缶ではなく、エドガーが【ランデルング】のあまった装甲(薄板)で作った浴槽(よくそう)だが。

 サクラはその浴槽(よくそう)に入っている。外で。

 (ちな)みにリザは、更に小さな浴槽(よくそう)(というか桶)の中に浮かんでいた。


「あれ~?あっついんですけど~」


「申し訳がございませぬっっっ!」


「――はぁ?」


「――ごめんなさぁぁいっ!!」


 月が(かがや)く空の下で疑似(ぎじ)露天風呂(ろてんぶろ)を楽しむ一方で、エドガーは今、車内にいる。

 一人で(さび)しく、夕食の調理中だった。





 綺麗(きれい)に作られた真新しいキッチンで、エドガーはフライパン片手に野菜を(いた)めていた。


(ローザとメルティナ、フィルヴィーネさんの事も気になるけど……あれだけお腹を鳴らされちゃあね……あはは)


 外でメルティナとフィルヴィーネの戦いを見ていたエドガーは、【ランデルング】の小窓から「きゃっ!」という小さな悲鳴(ひめい)を聞き(およ)んで、()ぐに()け付けた。

 そこには、びしょ()れになったサクラとリザ。

 「やってしまった」と、居た(たま)れない顔をするサクヤの姿があった。


 実はサクラには、今回かなり頑張って貰っていた。

 エドガーが今キッチンで調理を出来ているのも、サクラのおかげだ。

 (かばん)から、調理器具一式と食材、そして浴槽(よくそう)溶接(ようせつ)する機材を出してもらったのだ。

 それは勿論(もちろん)、魔力を使って。

 もしかしたら今回は地味に、ローザ達に引けを取らない魔力の消費(しょうひ)かもしれない。

 このフライパンもそうだし、(いた)めている野菜もそう。


(サクラには感謝だな……ローザ達もお腹を空かせてる頃だろうしね)


 自分達も腹ペコではあるのだが、エドガーの考える先はいつも自分以外が最優先(さいゆうせん)だ。

 もし、びしょ()れになったサクラのお腹が鳴らなかったら、エドガーは今もメルティナとフィルヴィーネの戦いを見ていた事だろう。


「よしっ!出来た……皿、皿……あっ!!皿がないっ!?」


 六人分+αの野菜炒(やさいいた)めを盛り付けようとしたエドガーだが、肝心(かんじん)は皿がない事に気付く。


(どうし……このままでも……いや、食事は大切だ!気持ち良く食べてもらわないとっ)


 そうして、エドガーは【心通話】でサクラを呼び出す。

 非常に申し訳ないが、もうひと頑張りして貰う為に。





 外に設置(せっち)された組み立て式のキャンプテーブルには、人数分の野菜炒(やさいいた)めとパン(がゆ)、そして果実(かじつ)のジュースが置かれている。

 あの後サクラが、(あわ)てたエドガーの【心通話】に()け付けたのだが、そのサクラの姿はバスタオルを一枚(まと)い、(かばん)を持つだけの煽情的(せんじょうてき)?な姿だった。


 何かあったのかと勘違(かんちが)いをしたサクラと、皿がないと変に(あわ)てたエドガーがお互い間違いに気付く。

 一瞬時間が停止した車内で、サクヤとリザが追いかけてくるまで、二人は見つめ合っていた。固まっていたとも言うが。

 そして無言のまま車内を降りたエドガー達は、こうしてテーブルに着き、ローザ達を待っているのだが。


「……その、ごめん」


「う、ううんっ。あたしもその……つまらないものを見せちゃって」


「――つまらなくなんてっ……な、ないよ」


 顔を赤くして、エドガーはジュースを手に取る。


「ホ、ホント?」


 サクラも疑問視(ぎもんし)する所はそこじゃない気がする。

 エドガーも思いっきり()れてはいるが、別に(はだか)を見た訳ではない。


「……う、うん。綺麗だった」


 どうやらバスタオル姿は上から下までガッツリ見ていたらしい。


「……え、えへへ……」


 ()れる所ではない。絶対に。


「……二人の空気の所悪いけど。エドガー、そろそろ()が“魔王”……フィルヴィーネ様が来るわよ、気配(けはい)が動いた」


 テーブルの上で胡坐(あぐら)()いていたリザが、立ち上がってエドガーの肩に昇っていく。リザは人形用の服を着ており、サクラがリザちゃん人形と呼んでいた。


「そそ、そうですか……」

「二人の世界って……別にそんなつもりじゃ」


「そういう所よっ、あと“世界”などとは言っていなわよ……小娘」


「「うっ……」」


 二人は、精々からかわれるしかないと観念(かんねん)した。





 少しして、疲れた様子で三人が帰ってきた。

 いや、疲れた様子は二人だけだったが。


「……お腹すいた」

「イエス。同意(どうい)です」

「クックック……待たせたな!」


「ローザ、メルティナ……フィルヴィーネさんも、お疲れ様です」


「やっと来たか……わたしはもう待ち草臥(くたび)れていたぞ?」


「あ、ごめん……あたしはパンだけいただいてるよ」


「フィルヴィーネ様!お風呂がありますよ!入りましょう、一緒に!」


 エドガーは立ち上がって、三人を席に。

 サクヤはやれやれと言った感じに、サクラは(すで)に食べていた事を謝る。

 リザはフィルヴィーネを風呂に(さそ)った。

 また入るつもりらしい。しかしフィルヴィーネ以上に、ローザが反応を(しめ)した。


「お風呂……」


「大丈夫だよ。サイズは小さいけど、ちゃんとしたお風呂だから」


「そ、そう……ありがとう、エドガー」


「うん……さ、とにかく……まずは食事にしよう。席について?」


「ええ」

「イエス」


 キャンプテーブルの(はし)にエドガーが、その両隣にはローザとメルティナ。

 反対側にはサクラサクヤ、そしてフィルヴィーネが座っている。

 全員で、ようやく食事を始めた。


「そう言えばローザさん……凄い炎でしたね、あれ」


「……ん?ああ、《魔法》ね……凄くないわ。あれは中級(・・)よ。普段使う炎は、《石》から出る炎を魔力で操作(そうさ)しているだけだから……《魔法》とは呼べないし、《魔法》はやっぱり疲れるわね……久しぶりに使ったけれど」


「あ、あれで中級(ちゅうきゅう)、ですか……?」


 サクラの質問に答えたのはローザではなく、フィルヴィーネ。


「――そうだ。この娘が使ったのは……《神理解(しんりかい)魔法》、その一つだ」


「……」


「神、理解?」


「ああ。『“神”の(ことわり)を理解する事で、神々の《魔法》を使う事が出来る』と言うものだ……普通は使えぬよ。きっと、この娘に力を(さず)けた“天使”が教えたのだろう……違うか?」


「……――そうよ。元“神”なら、知っているかしら……ウリエルって言うのだけれど」


「……【四大天使】ではないか……――何をやっているのだアヤツは……」


 フィルヴィーネは、どうやらローザの師匠(ししょう)、“天使”ウリエルを知っているようだ。


「しかし合点もいくな……ウリエルは炎を(つかさど)る……そして、知恵(ちえ)を与える“智天使”でもあるからな……其方(そなた)に教えたのだろう、《神理解(しんりかい)魔法》を……しかし、アヤツは芸術(げいじゅつ)がどうとか言って《天界》から旅に出ていったと聞いたが……」


「……はぁ~。あの【バカ天使】の言う“芸術”って言うのは……幼い子供よ……私もそうだった。昔は私も小さかったから……興味(きょうみ)を持たれたのでしょうね……」


「……」


 ローザの言葉に、フィルヴィーネは固まっていた。

 元“神”としては、“智天使”と呼ばれる知り合いが、幼子(おさなご)目的で旅に出たことが衝撃だったのだろう。

 フィルヴィーネがこの世界に来て初めて、絶句(ぜっく)する顔を見たエドガー達であった。


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