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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 4章《残虐の女王が求めるもの》
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155話【王女を送る】

累計7万PV達成ありがとうございます!!



◇王女を送る◇


 エドガー達が【ランデルング】で荒野を目指している時を同じくして。

 王城東部・敷地内(しきちない)、【白薔薇(しろばら)庭園(ていえん)】の薔薇広場(ばらひろば)に降り立ったメルティナと、第三王女ローマリア・ファズ・リフベイン。

 唐突(とうとつ)に、メルティナは王女から言葉を受ける。


「――私は、もうダメだぁ……」


 高度な空中散歩(さんぽ)をしてきた王女は、死にそうな顔をしてメルティナに告げた。

 そのメルティナは、不思議(ふしぎ)そうに首を(かし)げて。


「ノー。プリンセスの状態は正常ですが……ダメとは判断出来そうにありません」


「そ、そうではなくて……」


 地道に、守衛(しゅえい)に見られないように何度も空中で迂回(うかい)して、ようやく第三王女の管轄敷地内(かんかつしきちない)に降り立ったのだ。

 しかし、空の移動など初めてだった王女は、当然のように顔を真っ青にして、茫然自失(ぼうぜんじしつ)状態だった。

 だが、メルティナにそんな事は一切関係なく。


「ではプリンセス。ワタシはマスターの所に向かいます。エミリアによろしくお願いします」


「え、もう……行くのか?」


 長椅子(ながいす)に座り込むローマリア王女は、別れが(さび)しいと思わせる様に、上目使いでメルティナを見る。

 相手が男なら、多大に効果はあっただろうに。


「――イエス。急ぎますので」


 無慈悲(むじひ)である。


「そ、そうか……」


 ローマリア王女に対して何の情も持たないメルティナだったが、背後から不意に掛けられた声、そしてその人物に(おどろ)かされる。


「――メル?」


「――っ!――エ、エミリアっ!?」


 背後に立っていたのは、前マスターの生まれ変わりであり、親友。

 エミリア・ロヴァルト。新マスターであるエドガーの幼馴染で、城に(つと)めた事は知っている、なので、居ても不思議(ふしぎ)はない。

 では何故(なぜ)メルティナは(おどろ)いているのか。

 メルティナは、背後にエミリアはいる事に気付けなかった自分に(おどろ)いた。メルティナは自分のシステムを疑う。


(おどろ)きました」

(センサーが起動(きどう)していません……どうして)


 メルティナ体内には、超感度(ちょうかんど)反応センサーが搭載(とうさい)されている。

 再構成され、限りなく人間の身体に近づいたメルティナだが、その体内にはナノマシンレベルの機器が満載(まんさい)だ。それが反応どころか、起動(きどう)すらしていなかった。


「え?何が?」


「……ノー。何でもありません。エミリアこそ突然出てくるのはやめてください」


「――え、私が悪いのっ!?……って、殿下(でんか)!?何して――え!顔真っ青!」


「……ああ、エミリア。私の代役(リエレーネ)はどう?――(おどろ)いたでしょう?」


「それは本当に(おどろ)きまし――でなくて!今の方が(おどろ)きなんですが!?」


 最早(もはや)悪癖(あくへき)とも言える、ローマリア王女の脱走癖(だっそうぐせ)

 今日も今日とて、城を抜け出した王女を探していたエミリア。

 まさか【聖騎士】に成った直近の仕事が、王女の捜索(そうさく)だとは。

 しかしそのエミリアも、ローマリアの蒼白顔(そうはくがお)に、苛立(いらだ)ちながら探していた事も忘れる程に(おどろ)く。


「やっと見つけたと思ったら……だ、大丈夫ですかっ?殿下(でんか)


 ローマリア王女の(かたわ)らに寄り()って、エミリアは自分のハンカチを庭園(ていえん)の水(城の水は“魔道具”のおかげで綺麗(きれい))で()らし、ローマリア王女の(ひたい)に乗せる。


「――悪いわねエミリア……私は、もう空に幻想(げんそう)(いだ)かないわ」


「……い、今ので何となくわかりました」


 飛べない鳥の気持ちを代弁(だいべん)するローマリアの台詞(セリフ)で、何があったかを(さと)ったエミリア。そんなエミリアを追いかけるように、庭園(ていえん)の入り口に小さな人影。

 そこをよく見れば、(ひざ)に手をついて肩を上下に揺らす、小柄(こがら)な少女がいた。

 「エ、エミリア様ぁ……」と、絶望感を(にじ)ませた表情(かお)でこちらを見ていた。


「……あらレミーユ。やっと追いついた?」


「は、はいぃ……」


 レミーユ・マスケティーエットは、公爵家生まれの次女であるが、騎士学生ではなく我流(がりゅう)で槍術を学んだ努力型の騎士だ。

 正確にはまだ騎士ではないが、公爵の父に頼み込んで、エミリアを指名(しめい)までして【従騎士(じゅうきし)】になった。


 しかし、レミーユは騎士学校にも通っておらず、訓練(くんれん)などもした事が無かった。

 基本的にもやしっ子。体力がないのだ。

 それを見かねたエミリアは、レミーユを(きた)えるつもりで、ローマリア王女を探すついでにランニングをしていたのだった。

 (いく)ら第三王女の管轄(かんかつ)する場所とは言え、朝から走りっぱなしはやりすぎな気もするが。エミリアと同じく走っていただけ、根性(こんじょう)はあるのだろう。


「……エミリア。こちらは?」


「ん?ああ、この子は……」


 エミリアはメルティナにレミーユを紹介する。




「【従騎士(じゅうきし)】……ですか」


 長椅子(ながいす)に腰かけながら、レミーユの事を説明されたメルティナ。

 ローマリア王女は、そのレミーユを甲斐甲斐(かいがい)しく()でていた。

 本当に王女なのかと(うたが)わしくなる。


「そ。決まりなんだってさ……だから、今度連れて行くよ。エドの所にも……それよりもさ、さっき(おどろ)いてたのって……もしかしてエドが近くにいなくて、力が出ない(・・・・・)からじゃない?」


「――!?」


 メルティナは目を(みは)る。


「やっぱり。そうでしょ?」


「え、ええ。ですが意外です、エミリアがそこまで気付けるとは」


 エドガーの幼馴染なのだ。異世界人の契約の事を知っていてもおかしくは無いが、メルティナの現状までを精細(せいさい)に理解しているとは、正直言って本当に意外だった。


「ま、ローザがね……似たようなことを言ってたからさ。エドガーと離れれば離れる程……力は弱まる……ってさ」


「……そうですか、ローザが。ということは、現状ワタシはドンドン性能が下がっていくことになります――急がなくては」


 そう言い、メルティナは椅子(いす)から立ち上がると。


「プリンセス、ワタシはこれで。それとレミーユ。ワタシの友達をこれから(よろ)しくお願いします」


「あ、ああ……メルティナ殿」

「……え!?というか、私は紹介されてませんけどっ!」


 メルティナは下がり続ける《石》の性能を感じながらも、【禁呪の緑石(カース・エメラルド)】を発動させて光翼(こうよく)を発生させる。


「――な、な、なんですかっ!?」

「――痛っ!」


 レミーユは(おどろ)き、休んでいた長椅子(ながいす)から立ち上がるが、その(いきお)いで王女は(ひじ)をぶつける。

 「あぁ!すみません!!」とレミーユは(あやま)っているが、メルティナは(かま)うことなく。


「ではエミリア。また今度」


「うん、またね。エドにもよろしく、落ち着いたら遊びに行くからっ」


「イエス。では……テイクオフ!」


 舞い上がる緑色の噴出光(ふんしゅつこう)を見て、レミーユは「キレー」と、ローマリア王女は「うぅ、思い出したらまた……」と正反対の感想を()べた。

 そしてエミリアは。


「――あぁ……エド、エドに会いたいなぁ……」


 立った数日会っていないだけで、エミリアは遠くにいる恋人を思わせるような口ぶりで(つぶや)いた――まったくもって、恋人ではないのだが。





 数分飛行していくと、徐々(じょじょ)に回復していく《石》の力。

 それを感じ、メルティナは一人(つぶや)く。


「やはりマスターの(そば)にいなければ、ワタシ達は無力になりますね……これでは、この世界の人間達と何ら変わりありません……」


 もう(すで)に王都から出ていたメルティナは、復活した超感度(ちょうかんど)反応センサーを使って、エドガー達の居場所に向かっていた。

 そして途中(とちゅう)で、巨大な雲を真っ二つに()き割った、炎の柱を目撃した。


「――あれは!ローザの炎ですか……それにしても温度が……――2200℃!?」


 街中で使えば、木造(もくぞう)の多い下町の建造物は焼け野原になるだろうそれを、メルティナは空中で視認(しにん)

 センサーに(うつ)った温度に、近くにいるはずのエドガー達が心配になる。


「……ローザ。弱まっていながら、まだこれ程の力が……ですが、あれではマスター達まで巻き込んでしまいます……――まさか、そんなことまで配慮(はいりょ)出来ないくらいに……追い込まれているのですか?」


 急停止し、ローザが置かれた状況を推測(すいそく)する。

 もし【解析(アナライズ)】の結果以上に、近況が切迫(せっぱく)しているのなら。


「フィルヴィーネが“召喚”された事で……ローザは、また(・・)?」


 弱くなった。身体の弱まりは、精神をも弱くする。

 逆も(しか)りな言葉だが、今のローザにピッタリの言葉だった。


「急ぎましょう……」


 背部ユニットの噴出口(ふんしゅつぐち)から緑色の魔力光(まりょくこう)を全開で()き出させ。

 メルティナは、エドガー達のもとに急いだ。


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