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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 4章《残虐の女王が求めるもの》
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139話【同じ世界から】

ルビの間違いを修正しました。

報告ありがとうございました。



◇同じ世界から◇


「……ロザリーム・シャル・ブラストリア。【勇者】に成り(そこ)ねた、(うつ)ろなる王女よ」


 フィルヴィーネの言葉にはエドガーや他の異世界人も(おどろ)いていたが、それ以上に(おどろ)いていたのが、【リフベイン聖王国】の王女ローマリア・ファズ・リフベインだった。


「……ローザと同じ世界の……“魔王”!?」


「そうだ。(われ)は、其方(そなた)消失(しょうしつ)した時、それはもう()やんだ……三日三晩、寝ずに暴れまわるほどな……そのせいで、何人の“魔族”が死んだ事か」


 「いやダメでしょ!」とサクラがツッコミを入れるが。

 “魔王”フィルヴィーネを怒らせたら、もしかして。と、ここにいる誰もが考えただろう。

 しかも、その同族虐殺(ぎゃくさつ)の現場に残っていた物が、【悪魔の心臓(デモンズハート)】だとは思うまい。


「私と……同じ世界。つまり過去の……世界から」


 ローザの言葉に、フィルヴィーネは軽快(けいかい)に笑いながら。


「クックック……そうか、其方(そなた)も気付いているのだな」


貴女(あなた)も知っているのね……」


 (うなず)くフィルヴィーネ。


「当然だ。ざっと見積(みつ)もって千年――いや、もっとな可能性もあるな」


 エドガー達は、顔を見合わせて(おどろ)いている。

 異世界人であるローザとフィルヴィーネが、同じ世界。

 それも、過去からの《召喚者》だとは。


「それって、今いるここは……ローザやフィルヴィーネさんに取っては未来(・・)って事ですか?」


 サクラが言う。そうだ、言ってしまえば、異世界人では無いのでは?と誰でも考えてしまう。

 だがそれを、フィルヴィーネは否定(ひてい)する。


「それは違うな。(われ)らがいた時代……その時の国や街は(すで)に無い。生態系(せいたいけい)すらも最早(もはや)別物だ。当然、知り合いなど()る訳ない……ましてや、神々(かみがみ)関与していない(・・・・・・・)時点で……別世界――異世界だよ」


 生態系(せいたいけい)や生活方式そのものが違い、人類の発展(はってん)レベルも相当(ちが)っている。

 “神”や“魔王”の存在が(すで)御伽噺(おとぎばなし)になっているのも、ローザとフィルヴィーネからすれば驚きなのだ。

 それだけ、時間と言うものが変えてしまう。そういうことだ。


「それに……空気そのものが違うからな、気付くはずがない……普通はな」


「空気……?」


 フィルヴィーネはスゥゥゥっと、息を()って、()く。


「そうだ。(われ)のいた時代。空気には微量(びりょう)の魔力が(ふく)まれていた……だから、生きていた者の大概(たいがい)が《魔法》を使えたのだ。人間も、“魔族”も……“天族”もな」


「ちょっと待って――“天族”?」


 ローザが(いぶか)しんで、フィルヴィーネを睨む。


「なんだ?」


「“天族”?……そんな存在知らないわ……“天使”ならともかく」


 ローザは“天族”は知らないと言う。

 フィルヴィーネは「そんなものか」と言いため息を()き、馬鹿にするように言う。


其方(そなた)、“天使”に(さず)けられた力で戦っておるのだろう?」


 「それなのに、知らないのか?」という事だろう。

 フィルヴィーネのローザを馬鹿にしたジト目は、精神にダメージを与えるには十分だった。


「……くっ」


 二人のやり取りを見ていたエドガーとサクラは、(めず)しいローザの姿に困惑(こんわく)するも、少し安心した。

 こそこそとエドガーの隣まで来て、サクラは話をしてする。


「エド君。(めず)しいよね。ローザさんがこんなに余裕が無いの」

「そうだね。なんか新鮮(しんせん)っていうか、そんな感じだよ」

「ローザさんが可愛(かわい)く見える。フィルヴィーネさんが年上だからかな?」

「……あはは、そうかもね」


 こそこそと好き放題言う二人に、ローザは「ギロリ」と(にら)みをを利かせる。


「――いっ!!」

「――ひぃっ!」


 その赤い瞳(・・・)に、咄嗟(とっさ)に口を押さえるが。時すでに遅し。


<サクラ……後で覚えていなさい>

<あ……はぃ――あれ、エド君は?>

<……何か?>

<あ、いえ……すいません>


 【心通話】で(くぎ)を刺された。サクラだけ。

 涙目になるサクラを横目に、エドガーは思っていた。


 ローザとフィルヴィーネのこの関係性(かんけいせい)は、今後ローザを助けてくれるような気がする。

 年齢的にも精神的にも成熟したフィルヴィーネが、この異世界の少女達を先導(せんどう)するポジションになるのではと感じているのだ。

 簡単に言っているようだが、《契約者》としての予感(よかん)じみたものが、エドガーにはあった。





 フィルヴィーネは、“天族”について説明する。


「簡単に言えば、翼と光輪(こうりん)のない“天使”だ……見た目は人間族そのもので、並の人間に見分けることは出来ない……そういう点で言えば、其方(ローザ)も、並の人間(・・・・)だったみたいだがな……」


 「くっくっく……」と笑い、ローザを見る。

 そのローザは、好き勝手に言われて、どう見てもイラついていた。


「“天使”に認められて《(ソレ)》を(さず)けられておきながら、その真実を知らぬとはな……まったく、(あき)れかえってしまうわ」


 今のローザの頭の中は、自分の《魔法》の師匠(ししょう)である“天使”ウリエルに対する(いきどお)りで一杯(いっぱい)だった。


(……あの、【バカ天使】ぃぃぃぃ、ズボラで適当(てきとう)で能天気でロリコンなだけかと思っていたら、まさかここまで阿呆(あほう)だったなんて……)


 ローザもまさか、こんな未来の異世界でここまでコケにされるとは、まったくもって思っていなかった。

 ましてや、(いと)しささえ芽生(めば)え始めた、少年の目の前で。


 もし、ローザが【消えない種火】の所有者(しょゆうしゃ)じゃなければ、今頃きっと顔から炎が()き出ているくらい()ずかしい頃だろう。

 もしかしたら、炎は本当に出せるかもしれないが。


「――それにしても、(われ)其方(そなた)を高く評価していた……それなのに、まさか(みずか)権利(けんり)を捨て去るとはな……」


「勝手に評価されても困るわね……それに権利(けんり)ですって?――いったい何の事よっ?」


「先も言ったがな……其方(そなた)は【勇者】になり(そこ)ねた。その権利(けんり)だ」


「――私はそんなもの知らない。【勇者】なんて興味(きょうみ)もなかったし……権利(けんり)なんて、貰っても送り返したわよ!」


 手を()るって否定(ひてい)する。

 【勇者】になど興味(きょうみ)もないと。

 しかし“魔王”は違う。求めていたのだから。ローザが【勇者】になる事を。


「……つまらぬな――救国(きゅうこく)をし、民に(うやま)われ、他国に恐れられ。そして親族に裏切られた王女……(あわ)れな女だ」


「……――何ですって?」


「――なんだ?文句があるのか?」


「「……」」


「――す、少し待ってくださいっ!!」


 ピリリ――と、空気が発火しそうな険悪(けんあく)な状態を(さえぎ)ってくれたのは、ローマリア王女だった。

 エドガーも動き出そうとはしていたが、ローマリアの動きは非常にスピーディーだった。


「……話に水を差して申し訳ありませんが。私は、この【リフベイン聖王国】の第三王女、ローマリア・ファズ・リフベインです……異世界の“魔王”様、どうか私の話をお聞きください」


 ローザの隣に立ち、軽くウインクして合図(あいず)する。

 特に意味は無いが、ローザはそれを見て気が抜ける。


「はぁ……なによ。ローマリア王女」


「ふむ……聞こうか、王女よ」


 フィルヴィーネも、どうやらむやみやたらに喧嘩(けんか)()っ掛けた訳ではないらしい。

 ベッドの上では、とても(えら)そうにしているが。


「――は、はいっ!私は、いえ、この【リフベイン聖王国】は……過去、【ブラストリア王国】であったとされています」


 話を軌道修正(きどうしゅうせい)させたのか「私は」の後が若干(じゃっかん)気になるものの。エドガー達はローマリアの言葉に(おどろ)く。


「こ、ここが……【ブラストリア王国】?――ローザがいた……国?」


「マジで……?」


 サクラは目を見開いて、ローザとローマリアを交互(こうご)に見やる。

 先程のローマリアの「私は」に、気付いたのだろう、ローザとローマリアの二人に、物凄く遠い遠い血縁関係(けつえんかんけい)がある事に。


「おそらくね」


 ローザは、やれやれと両手を上げて言う。

 しかしローマリアは。


「いや、絶対にそうです!」


 もう、完全に信者(しんじゃ)の目だった。

 ローマリアは、かなりローザを気に入っている、というか最早(もはや)信仰(しんこう)しているようだ。

 「ふんす!」と鼻息(あら)く、ローマリアは興奮気味(こうふんぎみ)に続ける。


「この【リフベイン聖王国】の《禁書(きんしょ)》に、そう(しる)されているのです!ローザの事も(しる)されていて、それを先ほども話していました」


「そうなんだ……」


 エドガーの言葉に、コクリと(うなず)くローザ。

 少し疲れている感じだ。


 ローザとローマリアの関係性は分かったが、フィルヴィーネは。


「しかし、それと(われ)は関係ないではないか……」


 と、確かにそうだ。としか言えない事を言う。

 そしてローマリアは、エドガー達にも向かって宣言(せんげん)する。


「“魔王”様……エドガー達も、よく聞いてほしい。私はローザに、いえ……ロザリーム・シャル・ブラストリア様に――依頼(いらい)をします!」


 ローマリアから出た言葉は、ローザも聞いていない、予想の斜めをいく一言だった。


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