表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 4章《残虐の女王が求めるもの》
152/383

138話【ホントに魔王?】

累計5万PVありがとうございます。

これからも頑張ります!



◇ホントに魔王?◇


 小さく、冷たい身体から伝わる息づかいを感じ。

 それでも生きていることを実感させられる。


 この小さな“悪魔”の女の子?、名前はまだ分からないが。

 エドガーは、絶対に助けるつもりでいた。眠るフィルヴィーネの手を取って、サクヤから反対の手に重ねてもらう。

 もう片方の手には、“悪魔”の女の子が乗っている。


「――準備はいいわね。始めるわよ……《石》、いえ……エドガーの場合は紋章(それ)を意識して……生み出す魔力を循環(じゅんかん)させるつもりで送り出すのよ。“召喚”で魔力も少ないだろうから、(けっ)して量を間違えては駄目よ。キミが倒れたら意味が無いのだからね……」


 (うなず)くエドガーと、息を()む他の少女達。

 エドガーの背後に回ったローザが、両手を()わせるようにしてレクチャーする。

 その体勢で、自然とエドガーの背中に当たる(やわ)らかいものを、感じている余裕はない。


「うん、こう……だね」


 エドガーの右手の紋章は、紫の部分だけが光り、暖光(だんこう)を生む。


「そう。上手よ……この“魔王(おんな)”の紋章だけを発動させるイメージが出来てる。そのまま流し込んでいくの。大丈夫、(あま)った分はこの“魔王(おんな)”に入れればいいから」


 エドガーの心配を見透(みす)かすように、ローザは笑みをこぼしながら進める。


「ん……感覚が、(むずか)しいっ……流れ出る量を、一定に出来ないっ」


 エドガーは、“召喚”とは全く違うアプローチを見せる魔力の使い方に、戸惑(とまど)いながらも必死に魔力を操作(そうさ)する。

 汗は流れて(ほほ)(つた)い、目に入りそうな汗は誰かが()いてくれているが、エドガーに確認している余裕はなかった。


「大丈夫よ、ちゃんと出来ている。この“悪魔”は身体が小さいから、普段の使用する魔力の許容量(きょようりょう)を大幅に下回っているだけ。溢れ出た魔力は、この“魔王(おんな)”に向かっているから安心していいわ」


「う、うん……」


 ローザの言葉を信じて、エドガーは「ふーッ」と息を落ち着かせる。

 右手に乗る“悪魔”の(あたた)かさが感じられてきて、少し安心した。

 だが、完了(・・)をいただくまでは油断できない。

 しかし、反対の手を(にぎ)るフィルヴィーネの手に力が入り、エドガーは(おどろ)く。


「……!――フィルヴィーネさん!?」


 フィルヴィーネは目を開けると共に、口も開く。


「――どれ、(われ)も手を貸そうかな……」


 一瞬だけ感じられた、物凄い()

 だがそれは瞬時にして消えて、何もなかったかのようにフィルヴィーネは起き上がる。

 今の圧がフィルヴィーネから(はっ)せられたことだけは分かったが、いったい誰に対してのものだったのか。それは誰にも分からなかった。


「――すまぬなエドガーよ。(われ)の部下の為に……」


「い、いや……それよりも起きて大丈夫なんですか!?」


 《石》の時と似た雰囲気(ふんいき)の声と(しゃべ)り方に、この人がフィルヴィーネ・サタナキアだと確信は出来たが、まさか急に起き出してくるとは。

 いや、でもローザは言った。『馴染(なじ)んでいないだけ』だと。

 もしかしなくても、今この瞬間身体が安定して、動く事が出来たのだろう。


「構わぬ。エドガーは、リザの治療(ちりょう)を続けよ」


 この小さな“悪魔”は、リザと言うらしい。

 それにしても、起き上がりで掛けていた毛布が(はだ)けているのだが、全く気にしていないご様子。

 この人はローザと同じタイプだ。と、関係性が浅いにも(かか)わらず、秒で理解したエドガーだった。




 フィルヴィーネが加勢(かせい)してくれてからは、スムーズだった。

 魔力で(まく)を作り、エドガーの魔力をその中に押しとどめ、ゆっくりとリザの中に注入(ちゅうにゅう)していった。

 

「安定したわ……もう大丈夫」


 ローザの一言に、エドガーは魔力の譲渡(じょうと)を終了させる。

 「ふぅー」っと息を()き、汗を(ぬぐ)おうとしたが、誰かが代わりに(ぬぐ)ってくれた。


「お疲れ様、エド君」


「あっ……ありがとうサクラ。もしかして、ずっと?」


 どうやら、エドガーの汗を()き続けていたのはサクラだったようで、エドガーは礼を言う。


「――お疲れ様です!主様(あるじさま)!お(ひや)をどうぞ!」


 サクヤも、エドガーに冷たい水を差し出す。

 今朝()み立ての新鮮(しんせん)な川の水だ。

 ちゃんと冷製の“魔道具”で冷やされていた。


「う、うん」


「……」


 ワクワクと言う擬音(ぎおん)が頭上に浮かんでいる気がする。

 ()めてほしいのだろう。


「ありがとう。サクヤもお疲れ様」


 エドガーは――ポンッと頭に手を置いて、ローザを真似(まね)()でる。


「……――い、いえ……ありがたきお言葉……です」(超小声)


「――声ちっさ!!」


「う、五月蠅(うるさ)い!仕方がないであろうがっ!慣れていないのだ!!」


 サクラのツッコミに、サクヤは照れながら反抗する。

 二人があーだこーだ言っていると。

 部屋の(すみ)で見守っていたローマリア王女が、エドガーに。


「お疲れさまだ。エドガー……本当に凄いわね」


「あ、いえ……殿下(でんか)、すみません何もできずに……ほったらかしの様になってしまって」


 一国の王女をぞんざいに(あつか)ってしまったことを()びるエドガーだが。

 ローマリアは一切気にしていない様に笑い。


「気にしなくていいわ。とても貴重なものを見れたし、勉強にもなった……本当に“悪魔”、なのね」


 視線(しせん)は眠るリザへ向けられる。


「そう、ですよね……」


 ローマリアからしても、先日恐怖を(いだ)いた“悪魔”なのだ。

 もしかしたら、ここに居るのも嫌なのかもしれない。が、エドガーは一旦(いったん)立ち上がって身体を伸ばすと、フィルヴィーネに向き直って座り直し、ローマリアに声を掛けた。


「……ローマリア殿下(でんか)。こちらが、僕が新しく契約した……異世界の客人(きゃくじん)、フィルヴィーネさんです。眠っているこちらはリザさん」


「え……あ、はあ……え?」


 突然の紹介に、ローマリアはたじろいだ返事をする。

 サクラとサクヤも、いきなりそれは無いのではと、ちょっと引き気味に見ていたが。


「……エドガー。急にそれは無いでしょう、まったく。ローマリア……エドガーは貴女(あなた)に分かってほしいのよ……この人……いえ、私達【異世界人】は……無害(むがい)だって、危険じゃないんだっていう事を」


 補足するように言うローザの言葉に、力強く(うなず)くエドガーは、真剣な眼差(まなざ)しでローマリアを見る。

 ローザの言葉通りなのだろうが、もう少しうまく言葉を出せるように努力させたいところだ。

 その紹介を受けたフィルヴィーネも、なんとなく状況(じょうきょう)が理解できたのか。


(われ)はフィルヴィーネ。フィルヴィーネ・サタナキアだ……元の世界では“魔王”をしていたが……そうだな、ここでは一人の異世界人……で良いと思っている。もしかしたら、そこの部下が何か言うかもしれぬが……その時はぺちんと叩けばよい」


「ええぇ!?――それでいいの?“魔王”の威厳(いげん)がー、とか言ってたのに」

「確かに、《石》の時とは随分(ずいぶん)と違うな……」


 サクラは(あや)しみ、サクヤもそれに同意する。

 本当は“魔王”などでは無いのではないかと。


「ほぅ……小娘ども……うぬ等は、(われ)が“魔王”ではないと?」


 腕組みをしながら、フィルヴィーネは大きな胸を腕に乗せる。

 いつだかローザもやっていた気がする。


「……い、いや……だって“魔王”のイメージって言ったらさ……『ガハハハッ、この世界は(われ)のものだ!』とか『全員皆殺しだぁぁ』とか『人間は家畜(かちく)同義(どうぎ)だ!』とか言いそうだし」


「そ、そうなのか?……もしかして、織田(おだ)の“魔王”もそうだったのだろうか……」


 サクラはサクヤの言葉に反応し、「え、信長(のぶなが)知ってるの?」とサクヤに食いついていた。

 二人が元の世界【地球】の“魔王”の話をしている間、フィルヴィーネは「うーむ」と考えていたが。


「……確かに思うところもあるがな、(われ)は最後の“魔王”として……責務(せきむ)放棄(ほうき)した事にもなる」


 元の世界では、《魔界》に【勇者】が攻め込むと言う(うわさ)もあった。

 フィルヴィーネはそれを相手せず、部下も残してこの世界にいる。

 無理矢理ついてきた無謀(むぼう)な部下もいるが。


「最後の“魔王”……ですか?」


 聞いたのは意外にもローマリアだ。

 きちんと、“魔王”であるフィルヴィーネの話を、怖がらずに聞いてくれていた。


「うむ。(われ)は、三人の“魔王”の最後の一人……(われ)が居なければ、《魔界》は(ほろ)ぶであろうな」


「そ、そんなハッキリと……」


「――ちょっと待って!」


 全員がビクッとする。ローザが大きな声を出して、会話を止めたのだ。


「ロ、ローザ?」


「どうしたのですか?ローザ」


 エドガーとローマリア、二人の言葉を聞いていないローザは、フィルヴィーネを見据(みす)えて。


貴女(あなた)……やっぱり私と同じ……」


 ローザの世界には、《天界》と《魔界》、そして《人間界》が存在していた。

 そして《魔界》を統治(とうち)するのは、三人の“魔王”だ。


「――ああ。そうだ……(われ)も、其方(そなた)を知っておるぞ……【滅殺紅姫アナイアレイションプリンセス】……ロザリーム・シャル・ブラストリアよ」


 ニヤリと笑ったフィルヴィーネの稲光(いなびかり)のような黄色い(ひとみ)には、驚愕(きょうがく)しつつも、何か納得(なっとく)するようローザが映っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ