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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 4章《残虐の女王が求めるもの》
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134話【謎の空間で、魔王は邂逅する】



◇謎の空間で、魔王は邂逅(かいこう)する◇


 身体が分解(ぶんかい)される感覚と、(たましい)再構築(さいこうちく)される感覚。

 その二つを終え、フィルヴィーネは(ひとみ)を開く。


「――ここは……」


「ヤア、ヨクキタネ。イセカイノ“マオウ”」


 光の(かたまり)のような、“精神生命体(スピリット)”のような存在に声をかけられて、フィルヴィーネは答える。


「ここは――《召喚者》の情報を収集(しゅうしゅう)する、精神世界か……」


 辺りを見渡し、何もない空間をフワフワ浮くフィルヴィーネ(全裸)。

 どうやらリザはいないようだ。城から消え去る瞬間までは、確かに一緒にいたと思ったが、流石(さすが)に無理だったか。


(われ)は何をすればいい……?大方、(ヌシ)が説明してくれるのだろう?」


 ニヤリと笑いながら、空中で胡坐(あぐら)をかく。全裸で。


「アア、ソウダネ……デモ、ボクハコンナモノ(・・・・・)、ヨンダツモリナインダ」


 光の(かたまり)は、一瞬――カッ!と光ると、姿を変えた。

 鉄球のようなまん丸い顔、肌や皮膚(ひふ)は感じられない無機質(むきしつ)な身体。

 棒の様に細い手足。どう見ても人間ではない。


「お(ぬし)……その魔力……」


 しかしフィルヴィーネは、(かす)かに感じる魔力を敏感に(さっ)し、自分の中でこの光の(かたまり)の正体を形作ろうとする。だが。


「――オット……マッテクレナイカナ?フィルヴィーネ・サタナキア」


 それを嫌がる様に、のっぺらぼうの顔を横に振るう。


「イマハマダ、アノコタチニキヅカレタクナインダ。ワカッテクレルダロウ?――フィルヴィーネ」


「……そうか。ならば仕方ないな……しかし、これは貸しだぞ?」


 この不思議な存在から、少しでも有利に事を進める為、フィルヴィーネは思ってもいない事を言う。

 ()ぐにいなくなるのに、何の貸しになるのか。


「……カシ。カ……ナラバ、コレヲキミニカエソウ……」


 しかし、顔のないこの光の(かたまり)。のっぺらぼうはフムと(うなず)く。

 そしてのっぺらぼうは、手に持った何か(・・)を投げ渡した。

 咄嗟(とっさ)に反応し、フィルヴィーネは両手でそれをキャッチする。


「――っと……って……リザ!?」


 のっぺらぼうが言ったコンナモノ(・・・・・)とは、どうやらリザの事だったらしい。

 しかし、リザはまるで人形のような手のひらサイズに(ちぢ)み、今にも()ち果てそうだった。


「どうしてこんな……待っていなさい、リザ!」


 フィルヴィーネは、急ぎ魔力を分ける。

 ――パァァァッと光り、薄紫色(うすむらさきいろ)の魔力光は、リザに浸透(しんとう)していく。

 だがそれでも、リザは回復しなかった。


「――ダメダヨ。ヨバレテモイナイノニ、ムカンケイナモノヲツレテキテハ……」


「お(ぬし)……リザは関係ないと分かっていて、ここまで連れて来たのだろう!」


「……フッ、サスガニスルドイネ。ソウダトモ、コレハ、ツヨスギルキミヘノハンデ(・・・)ダ」


「ハンデ……だと?」


 (いぶか)しむフィルヴィーネは、魔力を途切(とぎ)れさせない様に降り立ち、のっぺらぼうの正面に立つ。

 先程止めた、魔力の具現化(ぐげんか)を進める。


「……お(ぬし)……」


 色は白いままだが、確実に人間の形へと近付き。

 その完成した姿を見て、フィルヴィーネは(ひとみ)を大きく見開く。


「――エドガー(・・・・)……なのか?」


 つい先程見知ったばかりの、遥か未来に生きる少年。

 その姿形をした、謎の空間の支配者(しはいしゃ)


「……ダカラ、マッテクレナイカッテイッタノニ……」


「――いや、エドガーであって、エドガーではないな……よく似ている魔力の波動だが、質が違う」


 エドガーの魔力が何層(なんそう)にも重ねられた色とりどりの魔力だとしたら、この者の魔力は、波状だ。

 波の様に、一定の形を持たない、けれども強く突き刺さるような魔力。


「シツ、カ。イイエテミョウダネ」


 エドガーの形をしたこの空間の支配者(しはいしゃ)は、そっくりな顔で笑う。


「カレハ、モウナンニモノイセカイジントケイヤクシテイル。モウ、イゼンノヨウニハイカナイサ」


「――以前だと?お(ぬし)、一体何を知って――」


「……ニ、ニイフ様……」


「――!?――リザっ!」


 話の途中(とちゅう)だが、フィルヴィーネはリザに魔力を渡す、全力で。

 その(すき)をついて、エドガーの姿をした支配者(しはいしゃ)謎の光玉(・・・・)をフィルヴィーネの胸に投げ入れた。


「――ぐっ……お(ぬし)……何を!?」


「ミンナトオッタミチダヨ、フィルヴィーネ。デモ、キミハスコシチガウ。ツヨスギルキミニハ、チカラハイラナイ……ヒツヨウナノハ、《カセ》ダ」


 光玉は、フィルヴィーネの体内に入ったかと思うと、再度出てきて両手足に(まと)わりつき形を成す。


「これはっ……!?うぐっ……魔力、(ちから)が……」


「イッタダロウ、ハンデダト。デモ、ソノカワリ……ソノコムシ(・・・)ハ、ツレテイッテモイイヨ」


 そう言って、エドガーの姿をした空間の支配者(しはいしゃ)はのっぺらぼうに戻り、更に光の(かたまり)に戻った。


「……やはり、お(ぬし)はエドガーではないな……エドガーは、リザを小虫などと暴言を()くような男でない!!」


「サア、ドウカナ?アッタバカリノキミニ、ナニガワカル……?」


 光の(かたまり)はゆらゆらと揺れながら、フィルヴィーネを浮かせ、紫色の魔法陣の上に乗せる。


「……ジャ……ロー……タノ……フィ……ヴィ……」


「何だと……何と言った!!おいっ!おぃ――」


 パシュン――と、フィルヴィーネとリザは消えた。

 残った光の(かたまり)は、ただ(むな)しく、その場に浮かび続けていた。


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