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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 4章《残虐の女王が求めるもの》
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129話【王女と王女】



◇王女と王女◇


 不機嫌な気分に眉根(まゆね)を寄せて、私はストローを使って飲み物を飲む。

 ずずずっ――と、底まで一気に吸い上げてやって、あっと言う間に完飲(かんいん)する。


「……はぁ……最低だわ……」


 自分の最低な行動に、私は心底(しんそこ)情けなくなりながら、何度も何度もため息を()いていた。

 自覚はある。私は、確実に弱くなった。

 さっきも、《石》の飛び出しに反応もできずに、頭突きなんかを(もら)ってしまった。


「……自分の決めた道……か」


 自分自身を言いくるめた言い訳に、見苦(みぐる)しさまで感じてしまって。

 本当に嫌になった。


 しかも、私は逃げ出した。新人(メルティナ)挑発(ちょうはつ)に、私は(くっ)した。

 怖かった?違う、絶対に違う。


 負ける可能性は、もう分かっている。

 今の私では、確かにメルティナには勝てないわ。

 もし、【孤高(ここう)なる力】なんて(さび)しい能力がなければ、負ける事はないと思うけれど。


 でもそれは、言っても仕方のない事。あの時、私が言い出した事だ。





 ~謎の空間~


『こ、ここは……――!!』


 少年の願いに答え、私は自身の炎で焼き()くされた。

 そう思っていたけれど、どうやらその前準備って所かしら。

 何もない虚無(きょむ)と言ってもいい程の悲しい場所。

 そう感じて、私は前に()み出そうとした。


『――!』


 気配を感じ、炎の魔力で後方を()ぎ払う。

 魔力に任せた、軽い一撃。だが、人間を焼き()くす程度(・・)は出来るはず。

 けれど、対象(たいしょう)の人物?は、無傷でそこに立っていた。


『ヒドイコトヲスルモノダ』


 ポンポンと、肩に付いた(すす)(はら)仕草(しぐさ)に、私はイラっとする。


『貴様……何者?人間(ひと)には見えないわね……』


 “天使”?“悪魔”?それとも“神”?“魔王”?

 全身を光に包まれた真っ白い(かたまり)、ただ人間の形をしているだけに見えるそれは、私に言う。


『キミハエラバレタンダ、ロザリーム・シャル・ブラストリア。キミニハ、コレカライセカイニイッテモラウ』


『選ばれた?異世界?』


 異世界――この世とは違う、他の世界。

 この光の(かたまり)は、私を選び、あの塔から連れ出した?

 いや、私はあの少年の言葉に(うなず)いた。決してコイツの願いではないはず。


『ソウダ、ソレニトモナイ、キミニ【イノウ】ヲサズケヨウ……サァ、ドレガイイ』


 並べられる、【異能】とやらの光の玉。

 赤、青、黄、緑、様々な色の玉は、どれもが爛々(らんらん)(かがや)いているが。


 どれもパッとしないわね。正直言って琴線(きんせん)に触れるものがないわ。

 そうして、私は何を思ったか。


()らないわ。私には【消えない種火(ピジョン・ブラッド)】があるから』


 右手に(かがや)く《石》を見せ、【異能】を断る。


『ソウカ……ソレモセンタクノヒトツナノダロウ。シカシ、ソウモイカナイノダトイワネバナラヌ。ワタシモ、コレガシゴトデネ……カッテダガ、コチラデエラバセテモラオウ』


 勝手に選ぶとか、それはもう押し付けではなくて?

 そんな事を考えながらも、光の(かたまり)はどーれーにーとか言いながら、適当(てきとう)に選び始めた。


『ウム……コレニシヨウ。【ココウナルチカラ】……キミニピッタリノハズダ……』


『じゃあ、それで』


 私は効果など聞かずに、その赤い光玉を受け入れる。

 光玉は、私の胸に吸い込まれるように入り込み、すぅっと馴染(なじ)んで溶けた。


『イイノカナ?タメサナクテモ……』


『いいわ。使わないから』


 私は、出口?と見られる赤い魔法陣に向かう。


『ホウ、ヨクワカッタネ……』


『あの少年が描いていたものと、同じだったから……』


 この空間に入ってすぐに、気付いてはいたのよ。

 貴様が出てこなければ、そのまま向かっていたわ。


『ヨイイセカイライフヲ……――ンド……ドガ――イッ……ザ……』


 そうして私は、エドガーのもとに旅立っていった。

 背後で光の(かたまり)が何か言った気もしたけれど、私は振り向かなかった。

 そしてまさか、使わないと言った能力が、常時(じょうじ)発動するものだとは思いもせずに。




 

「……ちっ」


 思い出して、舌打ちをする。

 すると、その舌打ちに反応する人物がいた。


「――ん?」


 気付かなかった?私が?

 ああ、そうか、感覚も(にぶ)くなっているのね。


「何をしているの?……王女様(・・・)?」


 私は今、宿の一階、食堂に隣接する休憩所にいる。

 先程、紫水晶(アメジスト)を追い詰めた場所ね。

 そこに、こっそりと私の反応を(うかが)う、桃色の髪の少女がいた。


「や、やぁ……ロザリーム殿、お久しぶりになるわね……」


 この国の第三王女ローマリア・ファズ・リフベイン、どうしてこの子が?


「何をしているのかしら……護衛(ごえい)の一人もいないようだけれど?」


 この子がいるという事は、エミリアもいると思ったけれど、どうやら本当に一人のようね。

 不用心(ぶようじん)ったらないわ。


 第三王女付き【聖騎士】、王女護衛(ごえい)騎士。

 それがエミリアの肩書らしいけれど、今いないんじゃ意味なくないかしら?


「実は、散歩をしていたの……それで、ここが目に入ったから、エドガーの様子でもと思って……見に来たの。でも、いない……のよね?」


 絶対(うそ)ね。

 第一、ひとりで散歩(さんぽ)が許される王女なんているわけ――ああ、私か。


「エドガーは地下ね、他の子たちも一緒よ……(ちな)みに、【召喚師】の関係者しか入れないから」


 なんだか行きたそうな顔をしているので、先に(つぶ)す。


「そ、そうなの……残念だわ」


 何をしに来たのかしら、この子。

 そもそも【聖騎士】は何をしているの?

 前回訪問してきた【聖騎士】は、確かこの子の専属(せんぞく)だったはず。

 確かメイド服を着た、ノエルディアだったかしら。


「だから早く城に戻りなさい。騎士達が心配しているわよ?」


 多分ね。この王女がこの王都の民に姿を見せたのは先日が初めてらしいし、まだそんなに認知度(にんちど)は高くないのかもしれないけれど、これ以上私が(かま)ってやる義理はないのだから。

 そんな事を考えていたのがいけなかったのか、ローマリアは左右の指をツンツン合わせながら。上目遣(うわめづか)いで言ってくる。ああもう、嫌な予感(よかん)しかしない。


「それなのだけど……私、ロザリーム殿ともお話をしたくて……」


「……」


 (みょう)にしおらしいと言うか、城でもその態度だったら、大層(たいそう)おモテになりそうだわ。

 その筋(・・・)の人間には、だけれど。


 私は、ため息を更に()くことになる。

 けれども、こちらからも聞きたいことはあった。

 あの日(・・・)聞いたことの復習と、再確認をしなければと思っていたのだ。


「……私の部屋でいいかしら。ついてきて」


 そう言って、私は二階に行く。

 二階の客室の一つ、202号室。そこが私の部屋。


 ――仕方がないから、相手をしてあげる。

 この王女の話は興味(きょうみ)もあるし、エドガー達に聞かれたくない事も、聞けるかもしれないし、ね。


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