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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 4章《残虐の女王が求めるもの》
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121話【ノエルディアの加担】



◇ノエルディアの加担(かたん)


 驚愕(きょうがく)というよりは、困惑(こんわく)に近かった。

 ここには居るはずのない、エドガーの妹。騎士学校の後輩(こうはい)だ。


 ――リエレーネ・レオマリス。

 あの日、騎士学校で行われた決闘が終わったあと、注目を()びない様に、エドガーがローザやサクヤ達、異世界人を連れて帰った。それこそ逃げる様に。


 “悪魔”バフォメット戦後、相談(そうだん)をして、エミリアとアルベールが残って後処理(あとしょり)をしているところに、一人の【聖騎士】がやってきて事の顛末(てんまつ)を話したのが、このノエルディア・ハルオエンデだったのだ。


「――な、なんでリエちゃんが……ここに……!?」


 リエレーネは、どうやら脱走癖(だっそうへき)のあるローマリア王女の身代わりをしていたようだ。

 そうなると王女は何処(どこ)へ?と考えるはずが、あまりにも(おどろ)いてしまい、王女の事はスポッと抜け出てしまっていた。


「ふふふ、(おどろ)いたでしょう!ロヴァルト妹!」


 後ろから声を掛けるノエルディアを、エミリアはジィッと(にら)む。

 「お前の仕業(しわざ)か!」と(さけ)ばないだけマシだったかもしれない。


「……はぁ……どういうことですか?ハルオエンデさん」


「……う、うん。その前に(にら)むの止めて、ホントにびっくりしたから……」


 “悪魔”を退治(たいじ)したと思っているのは、何も住民だけではない。

 エミリアの槍を知っているノエルディアも、その力で(たお)したのでは?と思っていた。

 (まこと)(たお)せる人物たちを知っていても、エミリアもその(たお)した人物の一人の内なのは変わらないのだろう。


「ほら……あの後、あんた達ロヴァルト兄妹は()ぐに帰ったでしょう?」


「――?……あ、ああっ!あの後ですか……あの後にリエちゃんをそそのかした(・・・・・・)んですねっ!!」


 ピンときた。あの後とは、リエレーネがエドガーを心配して騎士学校に戻ってきた後の事だろう。

 エミリアがリエレーネの質問(しつもん)に「エドは逃げた」と不本意(ふほんい)ながら誤魔化(ごまか)して、アルベールと共に帰ったのだが、そういえばノエルディアが残っていた。


「そ、そそのかしてないって!人聞き悪いこと言うなっ!」


 ノエルディアは、相変わらずメイド服を着ている。

 最近は王城内でも見慣(みな)れて来たらしく、第一王女ですら何も言わないらしい。


「何が違うんですか!?リエちゃんがここに居るの、ハルオエンデさんが関係してるんでしょ!?」


 怒り気味に、エミリアはノエルディアを()める。

 ここに居る事を()めているのではなく、ノエルディアが巻き込んだのではないかと()めているのだ。


「だ、だから私じゃないってば!いや、スカウトしたのは私だけど……あっ!」


「スカウトぉ!?……ま、まさか……リエちゃん、ハルオエンデさんの【従騎士(じゅうきし)】に……?」


 ()ずかしそうに(うなず)くリエレーネに、一人ムッとしているのが、エミリアの後ろで待機(たいき)していた【従騎士】レミーユだった。

 ノエルディアは自分の失言を理解してか、そ~っと部屋から出て行こうとする。

 が、急に扉が開いて、思いっきり顔をぶつける。


「――うんぐっ!!」


 キィっと開いた扉からは、【聖騎士団・副団長】オーデイン・ルクストバーが。

 エミリアは一瞬(いっしゅん)でカーテンをスライドさせて、リエレーネを隠した。

 ノエルディアが、絶対に副団長には言っていないだろうと()んで。


「何をやっているんだい、君たちは……この(いそが)しい時に」


 オーデインは書類(しょるい)(かか)えていた。

 結構(けっこう)な量で、大変お疲れのようだった。

 ローマリアの机にそれを置き、カーテンの向こうに声を掛けるオーデイン。


殿下(でんか)……今日のお仕事はこれで最後です、どうかお早めにお願いします。ルゴラス(きょう)のご子息(しそく)の誕生会、お出になるとおっしゃっていましたでしょう?」


 第三王女ローマリアは、エミリアとアルベールの【聖騎士】昇格正式発表の式典(しきてん)の場に顔を出した。

 それは王都民に大いに喜ばれ、これからは王家の仕事もこなしていくと宣言(せんげん)もした。そしてその仕事の山が、この現状(げんじょう)だ。


「わ、分かっているわ。お、置いておいて」


 カーテンの奥のローマリアに、オーデインは一瞬(いっしゅん)だけ顔を(しか)めるも「承知(しょうち)しました」と言って部屋を出る。

 そして、ノエルディアとすれ違う瞬間(しゅんかん)


「――やりすぎるんじゃないよ……?」


 と、(くぎ)を刺して。


「――ひぃっ!」


 流石(さすが)に、オーデインには完全にバレていたようだ。

 それでも、問い(ただ)してこないだけマシだとノエルディアが思おうとしたのだが。


「あ!そうそう……ノエル――後で私の部屋に来なさい。話がある……いいね?」


「……は、はぃ」


 やはり、温情(おんじょう)すらなかったようだ。


 オーデインが出て行ったあと、顔面蒼白(がんめんそうはく)のノエルディアを無視(むし)して、エミリアはカーテンを開ける。


「……あ」


「あは……あはは……エミリア先輩~……」


 そこでは、王女になりすましてしまったと言う罪悪感(ざいあくかん)で、ノエルディアよりも顔を青くし、涙するリエレーネ・レオマリスがいたのだった。





 【リフベイン城・東廊(とうろう)】に設けられた【白薔薇(しろばら)庭園(ていえん)】。

 休憩所も()ねられた、ローマリアが管理する東廊(とうろう)だ。

 (しず)かに冷水が流れる造園(ぞうえん)であり、そこでエミリアは、リエレーネと二人きりになる。連れ出したのだ、話をするために。

 造園(ぞうえん)の入り口では、レミーユが見張(みは)りをしているが、こちらをチラチラと気にしている為、見張(みは)れているのかはかなり(あや)しいものだが。


「――どうぞ、リエちゃん……」


「あ、どうも……先輩(せんぱい)。いいんですか?」


 エミリアはリエレーネにサンドイッチを渡した。

 「いいのいいの」と言いながら笑うエミリア。

 昼食がまだだった様なので、これは後で食べようと思っていた軽食分(けいしょくぶん)だった。

 あの後()ぐに、ノエルディアはとぼとぼとオーデインの自室に向かった。今頃(しか)られているだろう。


「で、どうしてハルオエンデさんの【従騎士(じゅうきし)】に……?」


 リエレーネは背筋(せすじ)を伸ばして答える。


「はい……実はあの後、ノエルディア様にいろいろと聞き(およ)んで……」


 色々(・・)と言うワードに、エミリアは嫌な予感(よかん)をピンピンさせる。


「お兄ちゃんが……その、色んな女の人と一緒に()らしているとか。その女の人たちは、もれなくお兄ちゃんの事が好きだとか……」


「――ぶっ!!……ごほっ、ごほっ!」


 (あま)りにも(ひど)すぎて、(むせ)るエミリア。

 心の中で「ノエルディアぁぁ!」と(さけ)んだ。


「だ、大丈夫ですかっ!?先輩(せんぱい)……?」


 リエレーネは立ち上がってエミリアの背を(さす)る。

 しかし、急に待ったの声がかかる。


「――エミリア様に近づかないで!!は、離れて~!」


「え?――きゃっ……」


 見張(みは)りに立っていたはずのレミーユが、エミリアを心配して()けつける。

 エミリアとリエレーネの間に入り込み、小さな身体をねじ込んできた。


「ゲホ、ゲホっ……レ、レミーユ、見張(みは)りは!?」


 休憩所とはいえ、第三王女の住むエリアに変わりはない。

 職務放棄(しょくむほうき)と見なされたら、クビなど()ぐに飛ぶだろう。


「だってエミリア様がこの女に!――えっ?」


 ムッとしながら、レミーユはリエレーネの胸元をトンっ!と押した。

 リエレーネは「きゃっ」と一歩下がるが、流石(さすが)に騎士学校の優等生だった。

 見事にレミーユの腕を取ってねじり、地に()せた。

 ――ドスン!!と、レミーユはいつの間にか抑え込まれていた。


「――い、いだだだぁっ!ごめん、ごめんなさいぃぃ!」


「……ちょっと!二人共っ!!」


 意外にも、あっと言う間に降参(こうさん)したレミーユ。

 リエレーネも、咄嗟(とっさ)だったので悪かったと思ったのだろうか。

 エミリアの声に、バッ!と離れる。


「あ、ごめんなさい!つい……」


 実はリエレーネ。格闘技、特に関節技(かんせつわざ)が大の得意技だった。

 得物(えもの)も、籠手型(こてがた)のナックルだ。

 (ちな)みにエドガーは、リエレーネが剣を使っていると思っている。

 騎士学校に通い始めて二年。リエレーネが開花(かいか)したのは、この護身術(ごしんじゅつ)がきっかけだったのだ。


「痛いですぅぅ……エミリア様ぁ」


 肩を押さえて痛がる少女に、エミリアは優しく手を伸ばす。


「ほら、レミーユ……大丈夫だからもう泣かないの。【従騎士(じゅうきし)】なんでしょ?」


 「リエちゃんも、ごめんね」とエミリアがもう片方の手を顔の前に持っていって謝る。

 今後増えることになる、【従騎士(じゅうきし)】同士のトラブル。

 なんと第一号は、エミリアの【従騎士(じゅうきし)】と、エドガーの妹だった。




「すみませんでした……」


「うん。もういいから、持ち場に戻りなさい」


 謝罪(しゃざい)するレミーユを見張(みは)りに戻し、エミリアは話を続ける。


「で、どこまで……ああ、エドが色んな女の……」


 自分で言ってて馬鹿(ばか)らしくなり、死んだ目になるエミリア。

 リエレーネも(あわ)てている。


「――あ、ごめん」


「い、いえ……それでですね、ノエルディア様が、私が【召喚師】の妹だって知ったら、声をかけてくれて……それで」


「ハルオエンデさんは何を考えているのだろうか……」


 思わず口から出た。

 新設(しんせつ)されたばかりの【従騎士(じゅうきし)】の制約(せいやく)は、今のところないに(ひと)しい。

 騎士学生であろうと、卒業したての騎士であろうと、貴族の子息令嬢(しそくれいじょう)であろうとも入れるのだ。今のところは。


「ダ、ダメでした、よね……私なんかが……」


「――違う違う……そうじゃなくてね、エドは?エドは知ってるの……?」


 その事が、(もっと)も気がかりでもあった。

 エドガーが【召喚師】として“不遇”職業(あつか)いされていることは、妹のリエレーネだって当然知っている。それでも、この王城で(はたら)こうとするのか、と。


「お兄ちゃんには言ってません!お兄ちゃんがあのおっぱいさん(・・・・・・)と知り合いだったなんて知らなかったし、言われてないもん!」


 「もん!」と可愛(かわい)らしく()ねる。そこはまだ、16歳の少女だった。


仕返(しかえ)し……ってとこなのかな……?」

(……それにしても、相変わらず(・・・・・)変な呼び方するなぁ。(くせ)なのかな?)


「あはは、そうかもしれませんね」


 おっぱいさん。は完全にローザの事だろう。

 エミリアも、昔はエミィちゃんと呼ばれていたが、何故(なぜ)か「絶対やめて……」と拒否反応(きょひはんのう)が出た。子供っぽさが加速しそうなのだ。

 リエレーネがそんな変な呼び名で呼ぶことを、(くせ)と割り切るエミリア。


 それにしても、リエレーネはローザ達が異世界人だと言うことはまだ知ってはいないらしい。

 ノエルディアも、そこだけ(・・)はきちんとしていたのかと安堵(あんど)する。

 リエレーネはただ、一人暮らしをしていたはずの兄のもとに、押しかけて来た女が複数いると、それも好意(こうい)を抱いて。

 妹として、兄の不純(ふじゅん)に怒っているのか、それともただ単にブラコンなのか分からないが。どうやらそれに反発しているらしい。


 エミリアは後者(こうしゃ)だと思っている。

 自分がエドガーの妹に好かれているという大きなアドバンテージを、再認識(さいにんしき)した。

 そして、時間はあっという間に過ぎて、エミリアとレミーユは自室へ、リエレーネはノエルディアを迎えに行ったのだった。


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