表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 4章《残虐の女王が求めるもの》
133/383

120話【ロヴァルト兄妹の新たな一日】



◇ロヴァルト兄妹の新たな一日◇


 【火の月52日】。

 エミリア・ロヴァルトは、目を覚ます。

 場所は、【貴族街第一区画(リ・パール)】の見慣れた自室――ではなく、王城だった。

 エミリア・ロヴァルトは、【聖騎士】に成った事で引っ()しをしていた。


 【リフベイン聖王国】第三王女ローマリア・ファズ・リフベインが()まう。

 【リフベイン城】の敷地内(しきちない)、【白薔薇(しろばら)庭園(ていえん)】に。


「――おはようございます!エミリア様!」


「……」


 起きたてのエミリアに挨拶(あいさつ)をする少女。

 エミリアはその幼い少女を怪訝(けげん)な目で見る。


「あのね……私はまだこの前【聖騎士】に成ったばかりの新人なんだよ?……なんで指名(・・)したのかな?」


「それは勿論(もちろん)、あの恐ろしい“悪魔”を倒したエミリア様に感銘(かんめい)を受けて!!」


「……」


 怪訝(けげん)な顔は悪化(あっか)する。

 この少女は、【従騎士(じゅうきし)】レミーユ。

 レミーユ・マスケティーエットという、公爵家の娘だ。


 彼女は、あの決闘を間近で見ていたらしい。

 当然避難(ひなん)しており、直接“悪魔”バフォメットと戦っているのを見た訳ではなく、エミリアが“悪魔”を退治(たいじ)した。と言う住民を(なだ)める為の口実を信じ込んでいたからだ。

 だったら、他の騎士でもいいのでは?と問いかけたら、自分が使う得物(えもの)を見せられ。


『私は槍使いです!エミリア様の部下になるのが必然(ひつぜん)なのです!』


 と言われ、最終的には(ことわ)れなかった。

 偶然(ぐうぜん)必然(ひつぜん)か、【聖騎士団】には、現在槍専門の騎士がいなかった。

 その為、夢見るお嬢様の対象(たいしょう)になってしまったとも言う。


 【聖騎士】昇格正式発表の数日後にはもう、エミリアに【従騎士(じゅうきし)】として(つか)えることが決まっていたようで、ローマリアに抗議(こうぎ)もしたが、第一王女権限(けんげん)のため無駄(むだ)だった。


 そして一方、他の【聖騎士】にも、【従騎士(じゅうきし)】が(あて)がわれることが決まっていた。

 副団長オーデイン・ルクストバーやノエルディア・ハルオエンデにも【従騎士(じゅうきし)】が新たに()いていた。

 当然、エミリアの兄、アルベールにもだ。





 【貴族街第一区画(リ・パール)】。

 アルベール・ロヴァルトは、【聖騎士】昇格祝いに用意された屋敷(やしき)で、朝食を取っていた。エミリアとは違い、アルベールは王城住まいではない。

 この屋敷(やしき)新築(しんちく)ではないが、十分に新しい。


 妹エミリアは王女を助けたと言う快挙(かいきょ)で【聖騎士】に成ったが、いまだ学生である。

 一方、兄アルベールは、騎士学校の卒業生として、昨年度唯一(ゆいいつ)の【聖騎士】昇格者だ。扱いは別であり、正規(せいき)の昇格者がアルベールで、実は褒美(ほうび)もアルベールにしか無いのだ。

 だが、王女の護衛と言うエミリアの役職も、十分に褒美と言えるだろう。


「どうぞ……アルベール様。食後のコーヒーです」


「あ、ああ。どうも……」


 アルベールに笑顔を見せながら、コーヒーカップを運ぶ美女がいる。

 名を、ラフィーユ・マスケティーエットと言う。

 この美女が、アルベールの【従騎士(じゅうきし)】だ。

 エミリアの【従騎士(じゅうきし)】レミーユの姉であり、アルベールの同窓生で騎士学校の卒業生だ。

 仕事も、本来は王城(づか)えが決まっていたのだが、【聖騎士】に【従騎士(じゅうきし)】が()く事となったと聞いて、最速で立候補したのだとか。


「もう、アルベール様ったら……いいのですよ?前みたいに気軽(きがる)に話してくれても」


「……いや、分かってはいるんだけどな……あはは、まだ()れないんだよ。一緒に暮らす(・・・・・・)ってのも……さ。いや、それより、今日の予定(よてい)を頼むよ」


 【従騎士(じゅうきし)】は、【聖騎士】に従属(じゅうぞく)するものと、第一王女セルエリス・シュナ・リフベイン王女殿下(だんか)(さだ)めた。

 そのせいかおかげか、アルベールは複数のメイドや執事(しつじ)、そしてラフィーユと共に暮らし始めていたのだ。

 そのメイドの中には、フィルウェインが居てくれているのが、不幸中(ふこうちゅう)(さいわ)いだ。

 (ちな)みに、エミリアの専属(せんぞく)メイドだったナスタージャも、ここアルベールの屋敷(やしき)にいる。

 

 ――エミリアがいなければクビになるだろう、あのメイドは。

 しかしエミリアが王城には連れて行けない為、アルベールが(あず)かる形になっていたのだ。エミリアに頼まれて。


「かしこまりました。今日のご予定は、正午に城へ。第一王女セルエリス様とロヴァルトの分家(ぶんけ)になると言うお話の予定(よてい)が入っています。夕刻(ゆうこく)前には城を出て、本家(・・)となられるロヴァルト公爵(・・)家に。アーノルド様とお食事の予定(よてい)になっています」


「――ああ。分かった……ありがとう」


 ラフィーユは、非常に優秀(ゆうしゅう)だった。

 学生時代、剣の実力はそうでもなかった彼女だが。

 雑務(ざつむ)筆記(ひっき)秘書業(ひしょぎょう)(ぐん)を抜いて出来ていた。

 メイドや執事(しつじ)よりも才能があるらしく、(すで)にアルベールには無くてはならない存在になりつつあった。

 しかしその事を、アルベールは恋人であるメイリンに言えていない。

 あの日、ケンカをするようにぶたれて、それ以降会えてもいないからだ。


(どーすっかな……マジで……)


 来たる未来の修羅場(しゅらば)など、この時のアルベールは知る(よし)もないのだった。





 場所は戻って、王城。

 すたすたと歩くエミリアの背後を、チョコンと付いてくる小さな女の子。レミーユだ。

 身長は完全にエミリアよりも小さく、二人でいる所をもしサクラに見られたら「中学生じゃん」というだろう、その中にサクヤが入ればなおの事だ。


「エミリア様!お次はローマリア王女殿下(でんか)のお部屋です!!」


「――了解(りょうかい)、急ぐよ~!」


「は、はいぃ」


 エミリアの行動力に、若干(じゃっかん)ついていけていないレミーユ。

 後ろをせっせと、「ぜぇぜぇ」言いながらついていく。


「――失礼します、【聖騎士】エミリア・ロヴァルトです……」


 コンコンとノックをして、まだ言いなれない【聖騎士】としての訪問。

 一際(ひときわ)豪勢(ごうせい)な扉からくる返事を待つが。


「……ど、どうぞ……」


 (ひか)えめな返事に、エミリアは一瞬(いっしゅん)違和感を覚えるも、急いでいることもあってか、そのまま扉を開けた。

 ――まさか、知り合いがここに居るとは思わずに。


「ようやく来たわね、ロヴァルト妹。待ってたわよ!」


 王女の部屋で、【聖騎士】ノエルディア・ハルオエンデが待っていた。

 エミリアは()ぐに(ひざまず)いて、ローマリアに向いている。


「すみません、まだ慣れていなくて……」


 エミリアの謝罪(しゃざい)に、ローマリアは何も言わなかった。

 (うす)めのカーテンの向こうには、ローマリアらしき人物が椅子(いす)に座っているようだったが、何か落ち着きがないような気がした。


「……殿下(でんか)……?」


 ローマリアは、まだ何も言わない。

 流石(さすが)におかしいと、エミリアはノエルディアを見る。

 と、彼女の肩がピクリと動いたのを確認する。


「――ハルオエンデさん……まさか……殿下(でんか)は、また(・・)?」


 エミリアは(ひざまず)くのを止めて、立ち上がってカーテンを()がす。

 そもそも、普段はカーテンなどつけていなかった。

 ローマリアはいない。どうせまた、抜け出しているのだろう。

 しかし、ローマリアの代わりにいた人物に、エミリアは言葉を失くした。


「……。……。……。……は?」


「……ど、どうも……エミリア先輩(・・)……」


 そこには、エドガーの妹――リエレーネ・レオマリスがいた。

 随分(ずいぶん)()(たま)れなさそうな顔をして、エミリアを見ていたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ