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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 3章《近未来の翼》
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エピローグ【成長】



成長(せいちょう)


 全員が寝静(ねしず)まった深夜の【福音のマリス】地下、【召喚の間】。

 【召喚師】と“召喚”された異世界人しか入れないはずのこの場所に、人影が二つ(・・)あった。

 勿論(もちろん)、自室で眠っているエドガーではない。

 そして異世界人の少女達の誰か、でもなかった。


 とても白い、(けが)れの知らない深雪(みゆき)の様な白銀の髪をもった、大人の女性と。

 そして、灰色の髪に大きな獣の耳(・・・)をぴょこぴょこ動かす、幼女だ。


 二人は、(たな)に置かれた様々な“魔道具”を見やると、女性はそこにまた(・・)“魔道具”を混ぜる。

 ことりと置かれたそれは、紫色の《石》だ。

 前に置いた(・・・・・)《石》は、見事“召喚”に使われたみたいだと、白銀の髪の女性は笑う。

 その胸元には、光り(かがや)く《石》、【水晶(クォーツ)】があった。


「――ウフフ……本当に成長(せいちょう)しましたね……それに、前に置いた《石》も、正常に機能したようですし、《魔法》も気付かれてはいませんね――これで4人目……フフっ。もう並びましたよ?」


「んもー!当ったり前じゃん!何言ってんのスノー。彼は、アタシらの(あるじ)だよ?そんなの当然だよっ、これからもっともーっと強くなってもらわないとさっ」


 灰色の髪の幼女は、主人の成長(せいちょう)を喜ぶように、にっこにこしながらスノーと呼んだ女性に食って掛かる。

 この幼女にも《石》があった。おへそに、チョコンと乗る様に着けられた【インカローズ】が光っていた。


「ふんふんふ~ん♪」


 幼女は、所かまわず置かれた“魔道具”を物色していたが、それを見ていた女性は、首根っこを(つか)んで持ち上げた。


「フフっ。ダメよノイン……(あま)りおいたが過ぎると、バレてしまうでしょう?帰ったら――またあの人(・・・)(しか)ってもらいますからね?」


「――う、うげぇぇ……うざぁ……まぁでもそれは嫌だから黙っとく~」


 非常に嫌な顔をして、ノインと呼ばれた幼女は頭上の獣耳(けものみみ)をしな()れる。

 二人は凸凹(デコボコ)の身長ながら、長年にわたって行動を共にするバディのようだった。


「……おや?……ノイン、誰か来ますね……早いうちに帰りますよ?」


「……」


 こくこく(うなず)く、ノインと呼ばれる幼女。


「では……今度は、会えるといいですね……我が(あるじ)……」


 そう言って、スノーと呼ばれた女性は《魔法》を(とな)える。

 瞬間(しゅんかん)、二人の姿は、気配(けはい)すらも無く完全に消え()った。

 まるで、初めから何もなかったかのように。

 “魔道具”を置かれたことも、全ては初めから、そこにあったかのように――





「……――あれ?」


「ん?どうした、サクラ?」


「あ、う~ん……気のせい、かなぁ?」


「なんだそれは……お(ぬし)が練習をしたいと言うから、こんな深夜に付き合っているのだろうが……」


 深夜の【召喚の間】に(おとず)れた、もう一組のコンビ。

 異世界人サクラとサクヤは、サクラの能力【ハート・オブ・ジョブ】を使うための訓練(くんれん)に来たようだが、サクラが何かを不審(ふしん)がる。


「いや、そうだけどさぁ、なんか……変じゃない?違和感(いわかん)って言うか……何と言うかさ。なんか……間違い探し(てき)な?」


「……はぁ?分からぬが」


 サクヤは地下室内を一通り見渡すが、それに気づかない。


「――あっそ……じゃあいいや……始めましょ。ここなら、魔力を気にしないでいいんでしょ?」


「うむ。ローザ殿がそれらしいことを言っていたな。だが、ローザ殿がいないと結界(けっかい)が張れない。あまり過激なものは駄目だぞ?」


「オッケー」


 鈍感(どんかん)なのか(するど)いのか分からないサクヤの事を、サクラは(あきら)め。

 心を(しず)めて、なりたい自分を想像した。





 鳥が舞う庭園(ていえん)で、一人の男性が本を読んでいた。


「――ん?……帰って来たか……」


 本を閉じると同時に、床に魔法陣(まほうじん)展開(てんかい)されて、二人の影を現す。

 白銀の髪の女性と、灰色の髪の幼女だった。


「あら?……これはシュルツ様……わざわざお待ちいただいたのですか?」

「――シュルツ様ただいまー!」


「やあ、おかえり二人共……どうだったかな、聖王国は……」


 シュルツと呼ばれた男は、()っすらと生えた顎髭(あごひげ)をなでると、マッチに火を点け本を燃やした。


「ウフフ――まあ、楽しかったですわ。相変わらず、魔力の枯渇(こかつ)深刻(しんこく)でしたが、転移《魔法》が使えただけマシですわね」

「アタシは(ひま)だったなー」


 燃える本を見ながら、シュルツは二人の言葉を聞くが、まるで興味(きょうみ)を待たないかのように言う。


「で、何人だった?」


 スノーと呼ばれた女性は、嘆息(たんそく)気味に笑いながら答える。


「――4人……ですわね。一人はおそらく、私やあの魔女(・・)と同じ世界からの客人でしょう……それ以外は、分かりませんわ」


 そう言って、スノーと呼ばれた女性は胸元の《石》に魔力を()める。

 【水晶(すいしょう)】が発光(はっこう)し、背からばさりと真っ白な翼が広がり、魔力は頭上にリングを作った。


「ふぅ……やはり、落ち着きますわね……この姿は」


「ああ。美しいね……流石(さすが)、異世界の“天使”だ……スノードロップ」


「ウフフ……心にもない事を」


 シュルツの感情の()らない言葉に、スノードロップは少しの怒気(どき)(はら)んだ顔を見せるが、それでもノインは、スノードロップを()めるシュルツに、文句があるようで。


「シュルツ様ー、アタシはー?」


 棒読(ぼうよ)みながらも、シュルツの(ひざ)に乗り、見上げる。


「ははは、勿論(もちろん)可愛(かわい)いよ……ノインも」


「うわー、超棒読(ぼうよ)みー……」


「ノイン。今そんな事をしていたら……後で自分に嫌気がさしますよ?」


「……そ、それもそうかもー」


 そう言われて、ノインはシュルツの(ひざ)から()ぐに下りた。

 一頻(ひとしき)りの冗談を終えて、満足そうに二人の異世界人は(うなず)き合う。


「シュルツ様?今度はどうしますか……?」

「あ!――アタシは戦いたいなぁ、あの赤髪(・・)とは、いい勝負できると思うんだよねぇー」


 二人の言葉に、シュルツは(あご)に手を当てて考える。

 これは昔ながらの、考えていなかった場合の(くせ)らしい。


「そうだね……もう()彼女達(・・・)も帰ってくるし……それから決めようか」


「――はい、シュルツ様」

「――はーい!」


 そう言って、二人は自室に戻っていった。

 残されたシュルツは、(ひと)り言を言い、空を見上げる。


「――さぁ、まだまだ(おど)ってくれよ……――エドガー・レオマリス」




~近未来の翼~ 終。


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